132 / 2,840
花岡流暗殺拳 Ⅳ
しおりを挟む
俺たちは着替えて、最初の和室に通された。
「タカさん、あのおじいちゃんって、なんだったんでしょうか」
「俺にも分からないよ。て言うか理解したくもねぇよなぁ」
亜紀ちゃんは、少し笑顔になった。
双子も多少は落ち着いたようで、出されたジュースが美味しくないとか文句を言っている。
皇紀はずっと俺を見ている。
目がキラキラしていた。
栞が部屋に入ってきた。
「あの、石神くん、これでいいかな?」
手に、布に包まれた細長いものを持っている。
テーブルに広げ、俺に見せた。
黒の漆が塗られ、螺鈿の細工がほどこされた、見事な小刀。
俺が鞘を抜くと、美しい波紋があった。
業物だ。
立って軽く振ってみると、バランスも素晴らしい。
「タカさん、カッコイイ!」
皇紀が呟く。
俺は皇紀を見て、にこっと笑ってやる。
「じゃあ、これを預かります」
「本当にごめんなさい。みんなも、ごめんね」
その時、戸が開かれ、栞の両親とじじぃが入ってきた。
じじぃは手錠をされている。
もう一度、全員から謝られ、俺も謝罪を受け入れた。
「手錠が似合うな、じじぃ!」
「ふん、これはワシが自分で嵌めたんじゃ! お前を見てると身体が疼くからな!」
「てめぇ、全然反省してねぇじゃねぇか!」
栞を見ると、両親と共に困った顔をしている。
止められねぇってか。
「心配するな。もう何もせん。これはけじめじゃ」
「ちょっと背骨とか折っといた方がいいんじゃねぇか?」
俺は栞を向いて言った。
亜紀ちゃんが笑い、つられて子どもたちも笑った。
「ああ、ほんとにこれで、ちょっと刺しといていいか? 首とか?」
俺は鞘を抜いて聞く。
「石神くん、ほんとにこれで勘弁して下さい」
俺は鞘に収め、座った。
じじぃが反省の欠片もなく、一人で喋っている。
「お前、すごいな! うちの流派の技を幾つか出したが、全部防がれたわい」
「まあ、まだまだお前が目をひん剥くようなものもあるけどなぁ」
「お前、「絶花」を使えるな?」
「なんだよ、その「絶花」って」
「まあ、後でゆっくりと話そう」
その後も、花岡家の歴史や先祖の活躍などを聞かされた。
俺は子どもたちが飽きてきたのを見て、栞に家の案内を頼んだ。
俺も興味深い。
子どもたちには分からないだろうが、柱を見ても、欄間の透かし彫をみても、尋常ではない価値のものだ。
窓が一部サッシになっていたり、トイレもシャワートイレだったり、多少の近代化はあるが、日本家屋の豪奢な作りだった。
「石神くんは美術とか好きだよね?」
そう言って、栞は部屋を案内する中で、美術品の紹介もしてくれる。
「あの襖は長谷川等伯なの」
「!」
「亜紀ちゃん、双子をあの3メートル以内に近づけるな」
「分かりました」
「億じゃきかねぇからな!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは双子の手を握り締めた。
幾つか、仕掛けも見せてくれた。
壁を押すと、奥に隠し通路があったり、柱を回すと天井から階段が降りてきたり。
子どもたちは興奮して見ている。
特に皇紀は興味津々で、自分でも動かしたがった。
多分、見せてはくれなかったが、物騒な仕掛けもあるんだろう。
「ここがおじいちゃんの部屋」
12畳の和室だ。
じじぃはいない。
俺は真ん中にあったちゃぶ台を蹴ってひっくり返した。
「……」
広い屋敷を二時間ほども案内され、俺たちは一旦部屋へ戻った。
俺は一緒に離れに行く。
「あのね、さっきね、おじいちゃんが真っ赤だったの!」
ルーが言った。
「でもね、タカさんもすごかったの!」
「うん、大きな柱みたいだった!」
「ものすごくまぶしかった!」
「へぇー、そうだったのかぁ」
俺は軽く受け流した。
「おい、二人とも。ここの障子は好きに破ってもいいぞ!」
「「ほんとに!」」
「だ、ダメですよ! 絶対!」
亜紀ちゃんが慌てて止める。
あのじじぃ、とんでもねぇもんを双子に見せやがって。
「タカさん、あのおじいちゃんって、なんだったんでしょうか」
「俺にも分からないよ。て言うか理解したくもねぇよなぁ」
亜紀ちゃんは、少し笑顔になった。
双子も多少は落ち着いたようで、出されたジュースが美味しくないとか文句を言っている。
皇紀はずっと俺を見ている。
目がキラキラしていた。
栞が部屋に入ってきた。
「あの、石神くん、これでいいかな?」
手に、布に包まれた細長いものを持っている。
テーブルに広げ、俺に見せた。
黒の漆が塗られ、螺鈿の細工がほどこされた、見事な小刀。
俺が鞘を抜くと、美しい波紋があった。
業物だ。
立って軽く振ってみると、バランスも素晴らしい。
「タカさん、カッコイイ!」
皇紀が呟く。
俺は皇紀を見て、にこっと笑ってやる。
「じゃあ、これを預かります」
「本当にごめんなさい。みんなも、ごめんね」
その時、戸が開かれ、栞の両親とじじぃが入ってきた。
じじぃは手錠をされている。
もう一度、全員から謝られ、俺も謝罪を受け入れた。
「手錠が似合うな、じじぃ!」
「ふん、これはワシが自分で嵌めたんじゃ! お前を見てると身体が疼くからな!」
「てめぇ、全然反省してねぇじゃねぇか!」
栞を見ると、両親と共に困った顔をしている。
止められねぇってか。
「心配するな。もう何もせん。これはけじめじゃ」
「ちょっと背骨とか折っといた方がいいんじゃねぇか?」
俺は栞を向いて言った。
亜紀ちゃんが笑い、つられて子どもたちも笑った。
「ああ、ほんとにこれで、ちょっと刺しといていいか? 首とか?」
俺は鞘を抜いて聞く。
「石神くん、ほんとにこれで勘弁して下さい」
俺は鞘に収め、座った。
じじぃが反省の欠片もなく、一人で喋っている。
「お前、すごいな! うちの流派の技を幾つか出したが、全部防がれたわい」
「まあ、まだまだお前が目をひん剥くようなものもあるけどなぁ」
「お前、「絶花」を使えるな?」
「なんだよ、その「絶花」って」
「まあ、後でゆっくりと話そう」
その後も、花岡家の歴史や先祖の活躍などを聞かされた。
俺は子どもたちが飽きてきたのを見て、栞に家の案内を頼んだ。
俺も興味深い。
子どもたちには分からないだろうが、柱を見ても、欄間の透かし彫をみても、尋常ではない価値のものだ。
窓が一部サッシになっていたり、トイレもシャワートイレだったり、多少の近代化はあるが、日本家屋の豪奢な作りだった。
「石神くんは美術とか好きだよね?」
そう言って、栞は部屋を案内する中で、美術品の紹介もしてくれる。
「あの襖は長谷川等伯なの」
「!」
「亜紀ちゃん、双子をあの3メートル以内に近づけるな」
「分かりました」
「億じゃきかねぇからな!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは双子の手を握り締めた。
幾つか、仕掛けも見せてくれた。
壁を押すと、奥に隠し通路があったり、柱を回すと天井から階段が降りてきたり。
子どもたちは興奮して見ている。
特に皇紀は興味津々で、自分でも動かしたがった。
多分、見せてはくれなかったが、物騒な仕掛けもあるんだろう。
「ここがおじいちゃんの部屋」
12畳の和室だ。
じじぃはいない。
俺は真ん中にあったちゃぶ台を蹴ってひっくり返した。
「……」
広い屋敷を二時間ほども案内され、俺たちは一旦部屋へ戻った。
俺は一緒に離れに行く。
「あのね、さっきね、おじいちゃんが真っ赤だったの!」
ルーが言った。
「でもね、タカさんもすごかったの!」
「うん、大きな柱みたいだった!」
「ものすごくまぶしかった!」
「へぇー、そうだったのかぁ」
俺は軽く受け流した。
「おい、二人とも。ここの障子は好きに破ってもいいぞ!」
「「ほんとに!」」
「だ、ダメですよ! 絶対!」
亜紀ちゃんが慌てて止める。
あのじじぃ、とんでもねぇもんを双子に見せやがって。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる