121 / 2,859
そして、サバト
しおりを挟む
会議当日。
大森は懇意にしている魚屋から、スッポンを三匹手に入れた。
「いやあ、大分苦労したよ。なにせ、専門料理屋に卸すのが基本だからねぇ。特別だよ?」
「うん、おじさん、ありがとう」
「今まで使ったことないルートで仕入れたもんで、本当に大変だったよ」
「だからありがとうって。また買い物にくるからさ」
「ああ、宜しく頼むね! じゃあ!」
発泡スチロールの大きな箱に入れてもらったが、抱えている間中、中でゴソゴソしている。
「生きてんのかぁ」
大森はちょっと不安になった。
魚などなら幾らでも捌けるが、生きたカメとなると、どうしても気後れする。
「まあ、最初のうちだけだから!」
自分で気合を入れ、マンションへ向かった。
「やっぱりダメ! 生きてるのはダメだよー!」
大森は半泣きになって大きな身体を屈めている。
一応、人体を切り刻むのに抵抗はない。
「栞、頼む」
一江が栞に声を掛ける。
「しょうがないなー」
可愛らしいフリルのついたエプロン姿の栞は、大森から柳葉包丁を受け取った。
何の躊躇もなく、栞はスッポンの首を切り落とした。
「「「!」」」
全員が驚愕して栞を見る。
「え、なによ?」
栞の手には、大量のスッポンの血が飛び散っていた。
「あ、血は残さなきゃ!」
一江が慌ててグラスを持って、スッポンの切り口を向けた。
栞は次々と首を切り落とし、他の三人がその血を受けた。
そこからは大森が中心となり、スッポンを解体していく。
甲羅に難儀するかと思ったが、栞が包丁を一閃させると、呆気なく開いた。
他の食材も切り終え、いよいよ鍋が始まった。
一江の宣言の後、食材が投入されていく。
「ああ、なんかクリスマスの鍋を思い出すわ」
「楽しかったですね」
栞と六花が言う。
「なんか面白くねぇ」
一江が言う。
食事会は、それでも楽しく進み、四人はスッポンの醍醐味を味わった。
「なんかさ、最初はちょっとグロイとか思ってたけど、案外美味しいもんだね」
「そうだよね。誰かが頭なんか入れてどうしようかと思ったけど。案外美味しいよね」
「なんか、身体が熱くなってきた気がします」
「そうよね、なんかポカポカしてきた」
初めてのスッポン鍋に、最初は全員戸惑っていた。
何しろ、肉の煮え具合すら分からない。
誰かが「あ、美味しい」と言うので、大丈夫なのがわかった。
「お酒がちょっと欲しいけど、こういう食事会もいいもんだよね」
そうだ、そうだ、とみんながうなづく。
替わりに、生血をすすって、キャーキャー言う。
酒は無かったが、いつもよりお喋りが盛り上がり、ゆっくりと鍋をつついていく。
温かく、楽しい時間が経過した。
最後のシメにウドンを入れようという時。
「あ、ちょっとゴメン、トイレ」
「ああ、大森、私も行きたいから早くね!」
「すみません、自分もちょっと」
「みんな、これからシメだっていうのに、まったくぅ」
そう言った栞の腹がゴロゴロと鳴った。
「あ、イタイ!」
それを契機に、全員が一斉に腹痛に襲われる。
全員がトイレに殺到するが、大森が出ない。
「ちょっと大森、早く出なさいよ!」
一江はトイレのドアを叩きまくる。
「待て、まだ出てねぇんだ!」
「半分で交代しよ? ね? お願い!」
「自分のことは構わないで結構です。洗面器をお貸しください」
「あんた、何言ってんのよ!」
「あ、私も洗面器が必要かも!」
「お前ら待て! 落ち着け! ここはあたしのマンションだぞ!」
「そんなこと言ったって、あ、もう取りあえず服は脱がせてね、大変なことになるかもだから!」
「六花、お前もうスッポンポンか!」
「一江、上手いこと言うな」
「お前は早く出ろ!」
結局、大森以外の全員が全裸になる。
「おい、大森、お前本当にいい加減に、グゥ!」
栞が限界に来た。
右手を閃かせると、トイレのドアの上半分が両断される。
次いで、残った下半分は右脚の一閃で粉砕された。
「え、なに、なに、なに?」
大森は突然開いた景色に驚くが、次の瞬間栞に投げ飛ばされる。
「おい、まだ途中だって!」
壁と廊下に液体が飛び散る。
「おい、こっちも限界なんだ、栞、お願いだからぁー」
「あの、もしかすると、これは食中毒というものではないでしょうか」
「「「言われるまでもねぇー!」」」
六花は自分を律することをやめ、肉体の欲求にまかせた。
太ももが生暖かい。
六花は、そのままスマホを取りにリヴィングへ戻る。
「おい、六花、その状態で歩き回るな! たのむからぁー!」
他の三人も決壊した。
そのまま、更なる腹痛でうずくまる。
「はい、六花です。すみません、スッポンで食中毒発生です。場所は……」
大森は懇意にしている魚屋から、スッポンを三匹手に入れた。
「いやあ、大分苦労したよ。なにせ、専門料理屋に卸すのが基本だからねぇ。特別だよ?」
「うん、おじさん、ありがとう」
「今まで使ったことないルートで仕入れたもんで、本当に大変だったよ」
「だからありがとうって。また買い物にくるからさ」
「ああ、宜しく頼むね! じゃあ!」
発泡スチロールの大きな箱に入れてもらったが、抱えている間中、中でゴソゴソしている。
「生きてんのかぁ」
大森はちょっと不安になった。
魚などなら幾らでも捌けるが、生きたカメとなると、どうしても気後れする。
「まあ、最初のうちだけだから!」
自分で気合を入れ、マンションへ向かった。
「やっぱりダメ! 生きてるのはダメだよー!」
大森は半泣きになって大きな身体を屈めている。
一応、人体を切り刻むのに抵抗はない。
「栞、頼む」
一江が栞に声を掛ける。
「しょうがないなー」
可愛らしいフリルのついたエプロン姿の栞は、大森から柳葉包丁を受け取った。
何の躊躇もなく、栞はスッポンの首を切り落とした。
「「「!」」」
全員が驚愕して栞を見る。
「え、なによ?」
栞の手には、大量のスッポンの血が飛び散っていた。
「あ、血は残さなきゃ!」
一江が慌ててグラスを持って、スッポンの切り口を向けた。
栞は次々と首を切り落とし、他の三人がその血を受けた。
そこからは大森が中心となり、スッポンを解体していく。
甲羅に難儀するかと思ったが、栞が包丁を一閃させると、呆気なく開いた。
他の食材も切り終え、いよいよ鍋が始まった。
一江の宣言の後、食材が投入されていく。
「ああ、なんかクリスマスの鍋を思い出すわ」
「楽しかったですね」
栞と六花が言う。
「なんか面白くねぇ」
一江が言う。
食事会は、それでも楽しく進み、四人はスッポンの醍醐味を味わった。
「なんかさ、最初はちょっとグロイとか思ってたけど、案外美味しいもんだね」
「そうだよね。誰かが頭なんか入れてどうしようかと思ったけど。案外美味しいよね」
「なんか、身体が熱くなってきた気がします」
「そうよね、なんかポカポカしてきた」
初めてのスッポン鍋に、最初は全員戸惑っていた。
何しろ、肉の煮え具合すら分からない。
誰かが「あ、美味しい」と言うので、大丈夫なのがわかった。
「お酒がちょっと欲しいけど、こういう食事会もいいもんだよね」
そうだ、そうだ、とみんながうなづく。
替わりに、生血をすすって、キャーキャー言う。
酒は無かったが、いつもよりお喋りが盛り上がり、ゆっくりと鍋をつついていく。
温かく、楽しい時間が経過した。
最後のシメにウドンを入れようという時。
「あ、ちょっとゴメン、トイレ」
「ああ、大森、私も行きたいから早くね!」
「すみません、自分もちょっと」
「みんな、これからシメだっていうのに、まったくぅ」
そう言った栞の腹がゴロゴロと鳴った。
「あ、イタイ!」
それを契機に、全員が一斉に腹痛に襲われる。
全員がトイレに殺到するが、大森が出ない。
「ちょっと大森、早く出なさいよ!」
一江はトイレのドアを叩きまくる。
「待て、まだ出てねぇんだ!」
「半分で交代しよ? ね? お願い!」
「自分のことは構わないで結構です。洗面器をお貸しください」
「あんた、何言ってんのよ!」
「あ、私も洗面器が必要かも!」
「お前ら待て! 落ち着け! ここはあたしのマンションだぞ!」
「そんなこと言ったって、あ、もう取りあえず服は脱がせてね、大変なことになるかもだから!」
「六花、お前もうスッポンポンか!」
「一江、上手いこと言うな」
「お前は早く出ろ!」
結局、大森以外の全員が全裸になる。
「おい、大森、お前本当にいい加減に、グゥ!」
栞が限界に来た。
右手を閃かせると、トイレのドアの上半分が両断される。
次いで、残った下半分は右脚の一閃で粉砕された。
「え、なに、なに、なに?」
大森は突然開いた景色に驚くが、次の瞬間栞に投げ飛ばされる。
「おい、まだ途中だって!」
壁と廊下に液体が飛び散る。
「おい、こっちも限界なんだ、栞、お願いだからぁー」
「あの、もしかすると、これは食中毒というものではないでしょうか」
「「「言われるまでもねぇー!」」」
六花は自分を律することをやめ、肉体の欲求にまかせた。
太ももが生暖かい。
六花は、そのままスマホを取りにリヴィングへ戻る。
「おい、六花、その状態で歩き回るな! たのむからぁー!」
他の三人も決壊した。
そのまま、更なる腹痛でうずくまる。
「はい、六花です。すみません、スッポンで食中毒発生です。場所は……」
1
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる