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岡庭クンは、イジラレたい Ⅳ  思ったより、気持ち悪い話にはならなかった。

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 グアム最終日。


 みんなで朝食を食べていると、軍服を着た男たちが入ってきた。

 「タイガー!」

 一人の男が叫ぶ。

 「なんだ、タイガーって?」
 「虎だろ?」
 「分かってるよ、そんなことは!」

 食堂が騒がしくなる中で、石神が男たちに近づいていく。

 「あいつ、また何かやったのかよ!」
 「兵隊と喧嘩したのか?」
 「あいつならやるよな」
 




 「タイガー! 今日で帰るんだってな」
 「ああ」

 「ところで、お前たちって何の集団だ?」
 「ああ、言ってなかったよな。大学の医学部の同期なんだ」

 「はぁ? お前医者だったのか?」
 「そうだが」

 「死神だろうよ!」

 男たちは大笑いした。


 
 「今日は大佐と俺たちからプレゼントだ」
 「なんだ、スティンガーか?」

 また男たちは笑う。

 「これだよ」

 一抱えほどの箱の蓋が開けられる。
 中にはぎっしりと数々の勲章が入っていた。

 「なんだ、これは?」
 「みんな、自分が持ってたものを入れたんだ。お前に渡してくれってな」

 「よせよ、こんな大事なものは受け取れないよ」
 「いいからもらってくれ。お前には本当に驚かされた」
 「大佐が、訓練を二倍にしてくれるってよ。お前のお蔭だ」

 食堂の全員が何事かと見ている。

 「また来いよ。俺たちは世界中に行くが、きっと何人かは残ってて、お前を歓迎する」
 「ああ、写真を送るよ。アドレスを教えてくれ」

 男たちは一人一人石神とハグをして帰って行った。




 帰りの飛行機の中。

 岡庭は一番後ろの座席に座っていた。
 今更ながら、座席は最初から幹事たちによって決められていたのだ。

 石神は、また花岡と御堂にはさまれて座っている。



 (千載一遇のチャンスをものにできなかった)
 岡庭は独り、ウイスキーを舐めていた。


 「岡庭、こんなとこにいたのか」
 石神が声をかけ、隣に座った。

 「なんか、連れ回してしまって悪かったな」
 「いや、そんな。ボクも楽しかったよ」
 「そうかよ。俺も久しぶりにお前といて楽しかったよな」

 (もうダメ、ボクはもうダメ)

 「あいつらがさ、お前のことを俺の恋人かって聞くから。面白いから「そうだ」って言っておいたからな。もう二度と行けねぇなぁ!」
 石神が笑って言った。

 「おい、岡庭、どうした、大丈夫か!」
 岡庭は失神していた。

 勢ぞろいの医者たちが、岡庭を介抱する。
 
 


 石神は彼らの任せて、花岡たちと楽しく話し始めた。











 岡庭が山形の病院へ戻り、一週間後。
 石神から写真が送られてきた。



 石神を見ている自分。
 バーで独りで飲んでいる自分。
 どれも小さな写りのカットだった。

 しかし、一枚だけ。

 石神に抱かかえられている写真があった。 












 岡庭は純金製の額縁を作り、ベッドの頭にそれを掛けた。
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