103 / 2,859
岡庭クンは、イジラレたい Ⅱ
しおりを挟む
ホテルの朝食はバイキングだった。
日本の朝食バイキングとは違い、朝から大量の肉類もある。
もちろん南国のフルーツなども豊富で、岡庭は迷ってしまった。
また石神は御堂、花岡と一緒にいる。
「山中くんも来れたらよかったのにね」
「しょうがないよ、奥さんが出産間近らしいから」
「御堂のとこはどうなんだよ」
「え、うちはまだかな。奥さんが家に慣れてからだろうなぁ」
「御堂くんの家って旧家だよね」
「うーん、そういう言い方でいいのか分からないけど」
「何言ってるんだよ。花岡さん、こいつの家には蔵が三つもあるんだよ」
「へぇー」
(なんかまた楽しそうに話してるなぁ)
岡庭は大量に皿に盛った食べ物を黙々と食べた。
「よう、岡庭! お前ずいぶん食べるんだなぁ」
料理を取りに行く途中の石神が、岡庭に声をかけた。
(イッシガッミクーン!)
岡庭は急いで返事をしようと、口に入れていたカツレツを皿に吐き出す。
「お前、きったねぇなぁ」
石神は大笑いしている。
「おはよう、石神クン(ダーリン)」
「ああ、おはよう。また後でな」
ホテルのプライベート・ビーチなので、みんな水着に着替えてそのまま出てくる。
幹事たちはビーチボールや浮き輪、その他のレクリエーションの道具を準備していった。
みんなそれぞれに、好きなものを持っていって遊びだす。
(石神クンの裸……見れるかと思ったのにぃ)
男性はみんな短パンの水着を着ている中で、石神は上に七分袖の濃紺のTシャツを着込んでいた。
(でも、濡れて張り付いたTシャツから、筋肉が浮いてでてる! 逞しい!)
(なんでTシャツ着てるのかな。日焼けしたくないのかしら。それとも、恥ずかしがり屋さん?〉
岡庭は石神の薄着に、徐々に理性を喪っていった。
石神は海に入ってビーチボールでみんなと遊びだした。
岡庭は必死で石神のそばによろうとする。
岡庭は石神の隣にたどり着いた。
波によろけたフリをして、何度も石神に抱きつく。
「岡庭、お前うっとうしいなぁ!」
石神は軽い岡庭の身体を抱え上げて、海に投げ捨てた。
「お、これ面白いぞ!」
石神は岡庭の両足を持って、ジャイアントスイングで放り投げる。
岡庭の身体は水面を跳ねて、遠くまで飛ばされた。
「おい、岡庭! 戻って来い!」
石神は大笑いしている。
(ちょっと悪魔みたいな笑顔だけど、石神クンが、ボクを呼んでいる!)
岡庭は必死で石神の所へ戻る。
また投げられた。
みんなが大きな声で笑っている。
「ヘイ・ルック! ワタ・ドゥーイン・ストゥピッド・シング!」
大きな声が聞こえた。
みんなが見ると、屈強なアメリカ人たちがこちらに注目している。
すると全員が石神のところへ駆け寄った。
「アー・ユー・クレイジー?」
(石神クンが外国人に話しかけられてる!)
(なんかよく分からないけど、石神クンが話してる!)
「キャナイ・ドゥーイッ・ウィズ・ユー?」
「イグザクトリー!」
アメリカ人たちは、岡庭の身体を抱えて、海に投げた。
(ナニナニナニナニ? 僕は石神くんだけのものだよ!)
「ハァーッハッハ!」
投げた男が大笑いしている。
男はそのまま石神を抱えようとしたが、体を動かしてかわされ、逆に石神に背中から抱えられる。
そのまま海に投げられた。
「ジョージ!」
仲間のアメリカ人が石神を囲み、三人がかりで襲う。
石神のシャツが掴まれ、胸元まで捲り上げられた。
「ワタ・スカー!」
じゃれていた三人が硬直した。
「フー・アー・ユー?」
遠くに投げ飛ばされた岡庭は、アメリカ人の大声は聞こえても、静かに話す石神の言葉はよく聞こえなかった。
何か説明をしているようだったが、「マーシー」と言っていたように思う。
(芸人?)
しかし、石神の言葉にみんな納得したようで、嬉しそうに肩を叩いている。
「こいつらはマリーンなんだってさ」
戻ってきた岡庭に石神が説明した。
「みんなでホテルのビーチに遊びに来てるんだよ」
(ふーん)
その後何度も岡庭は飛ばされ、石神はマリーンたちと仲良くなった。
岡庭はビーチに戻り、大量に吐いた。
オーマイとかアウチとか後ろで聞こえた。
岡庭がパラソルの下で気が付くと、正座した石神が花岡に怒られていた。
石神はみんなでの夕食を断り、誘ってくれたマリーンたちの宿舎に行った。
岡庭も一緒だ。
広い庭でバーベキューが供され、十数人のマリーンたちと一緒に食べる。
石神は大勢のマリーンに囲まれ、話をしていた。
英語が苦手な岡庭は、その内容はほとんどわからない。
「こいつの傷はすごいんだよ。ガンが貫通したのが幾つもありやがる」
「お前、そんなんでよく生きてたなぁ」
「そうか! お前はアラモに行ったことがあるのか!」
「デイヴィー・クロケットが最高だって? お前、飲め飲め!」
「あのなぁ、ジョン・ウェインのラストシーンな、燃えるよなぁ!」
しばらくすると、石神はマリーンたちと模擬戦を始めた。
最初は一人だったが、どんな相手でも、石神は数秒で相手を地面に倒してしまう。
そのうちに三人がかりになり、それでも石神を倒せなかった。
「なんて奴だ! こっちは海兵隊だぞ!」
石神はさらに多くのマリーンたちに囲まれ、褒め称えられている。
いつのまにか、庭には数十人の男たちが集まっていた。
「え? 掴むなって? 掴んじゃダメなのか?」
石神は二メートルはあるジェイと呼ばれる一際屈強な黒人の前に左手を突き出した。
そのまま右手でジェイの肩を押すと、あっさりと後ろに倒れた。
「オォッー!」
大歓声が沸く。
その時、群集の誰かが叫んだ。
「おい、ジムの店で昨日、日本人のスゴイ奴が来たって、こいつじゃないか?」
「フォーティフォーを、片手の早撃ちで全部センターに叩き込んだって奴か!」
会場が更に沸く。
「明日ベースに来いよ! シューティングも見せてくれ!」
岡庭は潰れ、石神に抱えられて帰った。
夜にベッドで目覚めると、隣には石神が眠っていた。
ということはまったくなかった。
日本の朝食バイキングとは違い、朝から大量の肉類もある。
もちろん南国のフルーツなども豊富で、岡庭は迷ってしまった。
また石神は御堂、花岡と一緒にいる。
「山中くんも来れたらよかったのにね」
「しょうがないよ、奥さんが出産間近らしいから」
「御堂のとこはどうなんだよ」
「え、うちはまだかな。奥さんが家に慣れてからだろうなぁ」
「御堂くんの家って旧家だよね」
「うーん、そういう言い方でいいのか分からないけど」
「何言ってるんだよ。花岡さん、こいつの家には蔵が三つもあるんだよ」
「へぇー」
(なんかまた楽しそうに話してるなぁ)
岡庭は大量に皿に盛った食べ物を黙々と食べた。
「よう、岡庭! お前ずいぶん食べるんだなぁ」
料理を取りに行く途中の石神が、岡庭に声をかけた。
(イッシガッミクーン!)
岡庭は急いで返事をしようと、口に入れていたカツレツを皿に吐き出す。
「お前、きったねぇなぁ」
石神は大笑いしている。
「おはよう、石神クン(ダーリン)」
「ああ、おはよう。また後でな」
ホテルのプライベート・ビーチなので、みんな水着に着替えてそのまま出てくる。
幹事たちはビーチボールや浮き輪、その他のレクリエーションの道具を準備していった。
みんなそれぞれに、好きなものを持っていって遊びだす。
(石神クンの裸……見れるかと思ったのにぃ)
男性はみんな短パンの水着を着ている中で、石神は上に七分袖の濃紺のTシャツを着込んでいた。
(でも、濡れて張り付いたTシャツから、筋肉が浮いてでてる! 逞しい!)
(なんでTシャツ着てるのかな。日焼けしたくないのかしら。それとも、恥ずかしがり屋さん?〉
岡庭は石神の薄着に、徐々に理性を喪っていった。
石神は海に入ってビーチボールでみんなと遊びだした。
岡庭は必死で石神のそばによろうとする。
岡庭は石神の隣にたどり着いた。
波によろけたフリをして、何度も石神に抱きつく。
「岡庭、お前うっとうしいなぁ!」
石神は軽い岡庭の身体を抱え上げて、海に投げ捨てた。
「お、これ面白いぞ!」
石神は岡庭の両足を持って、ジャイアントスイングで放り投げる。
岡庭の身体は水面を跳ねて、遠くまで飛ばされた。
「おい、岡庭! 戻って来い!」
石神は大笑いしている。
(ちょっと悪魔みたいな笑顔だけど、石神クンが、ボクを呼んでいる!)
岡庭は必死で石神の所へ戻る。
また投げられた。
みんなが大きな声で笑っている。
「ヘイ・ルック! ワタ・ドゥーイン・ストゥピッド・シング!」
大きな声が聞こえた。
みんなが見ると、屈強なアメリカ人たちがこちらに注目している。
すると全員が石神のところへ駆け寄った。
「アー・ユー・クレイジー?」
(石神クンが外国人に話しかけられてる!)
(なんかよく分からないけど、石神クンが話してる!)
「キャナイ・ドゥーイッ・ウィズ・ユー?」
「イグザクトリー!」
アメリカ人たちは、岡庭の身体を抱えて、海に投げた。
(ナニナニナニナニ? 僕は石神くんだけのものだよ!)
「ハァーッハッハ!」
投げた男が大笑いしている。
男はそのまま石神を抱えようとしたが、体を動かしてかわされ、逆に石神に背中から抱えられる。
そのまま海に投げられた。
「ジョージ!」
仲間のアメリカ人が石神を囲み、三人がかりで襲う。
石神のシャツが掴まれ、胸元まで捲り上げられた。
「ワタ・スカー!」
じゃれていた三人が硬直した。
「フー・アー・ユー?」
遠くに投げ飛ばされた岡庭は、アメリカ人の大声は聞こえても、静かに話す石神の言葉はよく聞こえなかった。
何か説明をしているようだったが、「マーシー」と言っていたように思う。
(芸人?)
しかし、石神の言葉にみんな納得したようで、嬉しそうに肩を叩いている。
「こいつらはマリーンなんだってさ」
戻ってきた岡庭に石神が説明した。
「みんなでホテルのビーチに遊びに来てるんだよ」
(ふーん)
その後何度も岡庭は飛ばされ、石神はマリーンたちと仲良くなった。
岡庭はビーチに戻り、大量に吐いた。
オーマイとかアウチとか後ろで聞こえた。
岡庭がパラソルの下で気が付くと、正座した石神が花岡に怒られていた。
石神はみんなでの夕食を断り、誘ってくれたマリーンたちの宿舎に行った。
岡庭も一緒だ。
広い庭でバーベキューが供され、十数人のマリーンたちと一緒に食べる。
石神は大勢のマリーンに囲まれ、話をしていた。
英語が苦手な岡庭は、その内容はほとんどわからない。
「こいつの傷はすごいんだよ。ガンが貫通したのが幾つもありやがる」
「お前、そんなんでよく生きてたなぁ」
「そうか! お前はアラモに行ったことがあるのか!」
「デイヴィー・クロケットが最高だって? お前、飲め飲め!」
「あのなぁ、ジョン・ウェインのラストシーンな、燃えるよなぁ!」
しばらくすると、石神はマリーンたちと模擬戦を始めた。
最初は一人だったが、どんな相手でも、石神は数秒で相手を地面に倒してしまう。
そのうちに三人がかりになり、それでも石神を倒せなかった。
「なんて奴だ! こっちは海兵隊だぞ!」
石神はさらに多くのマリーンたちに囲まれ、褒め称えられている。
いつのまにか、庭には数十人の男たちが集まっていた。
「え? 掴むなって? 掴んじゃダメなのか?」
石神は二メートルはあるジェイと呼ばれる一際屈強な黒人の前に左手を突き出した。
そのまま右手でジェイの肩を押すと、あっさりと後ろに倒れた。
「オォッー!」
大歓声が沸く。
その時、群集の誰かが叫んだ。
「おい、ジムの店で昨日、日本人のスゴイ奴が来たって、こいつじゃないか?」
「フォーティフォーを、片手の早撃ちで全部センターに叩き込んだって奴か!」
会場が更に沸く。
「明日ベースに来いよ! シューティングも見せてくれ!」
岡庭は潰れ、石神に抱えられて帰った。
夜にベッドで目覚めると、隣には石神が眠っていた。
ということはまったくなかった。
1
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる