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最後の仕事
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俺は何度も
「絶対に梱包しておけよ! いいな、絶対だぞ!」
と、本当に何度も六花に言い、部屋を出た。
今思い出しても心が重くなる。
何か人として大事なものが、ちょっと削れて減った気になった。
着替えていいですか、という六花に、そうしろと言った。
ワンルームなので、俺は反対を向く。
こいつ相手に、わざわざ部屋を出るまでもねぇだろう。
すると、六花はいきなり全裸になっていた。
着替えてねぇじゃんかぁ!
「家では、基本服を着ませんので」
すぐに来客がいるんだから寛ぐなと言い、ジャージを着せた。
あいつを、どうやって真っ当な人間にするか。
俺は頭を抱えた。
六花の超感覚コミュニケーションが何に由来するのかは分かった。
あいつの日常は、エロ本の中にある。
ちょっと待て。
俺が響子にエロいことをしたと勘違いし、風呂に飛び込んで来たじゃねぇか。
真っ当な感覚もあるのか?
だが、よく考えれば、あれは響子の身体を心配したためだったんだろう。
俺が行為をすれば、響子の身体に負担が入る。
大体、人の家の脱衣所で待機してねぇもんな、まともな人間は。
「石神くん、遅かったね」
家に戻ると、栞が玄関に出て来た。
亜紀ちゃんたちは、昼食の準備をしているらしい。
休日の昼食は、子どもたちに任せることも多い。
俺が帰ってこないので、自分たちで始めたのだろう。
気遣い半分と、あとは食欲だ。
「六花と何かあったの?」
栞が俺の腕をつねりながら顔を近づける。
「アルワケナイダロウ」
先ほどの魔界を思い出して、俺の声は若干うわずっていたかもしれない。
「え、ほんとにあったの?」
「そんなこと、あるわけないでしょう」
俺はそう言って、栞の口をキスでふさぐ。
「ずるい」
栞は顔を赤くして言った。
まるで浮気を誤魔化す男のようだけど、それどこじゃなかったんだよ、ほんとに。
子どもたちが作ったのは、サンドイッチだった。
前に患者さんからいただいた「乃が美」が子どもたちに大好評で、よく購入し、ほとんど常備している。
生食パンというものだが、本当に美味しい。
具材はシンプルな辛しマヨネーズを塗ったハムとチーズ、オーロラソースを混ぜた炒り卵、玉ねぎをみじん切りしてマヨネーズと共にツナに和えたもの。
四人で分担して作ったものだ。
レシピは俺が作っているので、失敗はない。
ただ、分量が違う。
俺が作ればある程度なのだが、子どもたちに作らせると、その倍量は用意する。
またそれが全部喰われるのだから、驚くべき健啖だ。
「いつもこんななのね」
栞が呟く。
「あたしも頑張らなくちゃ!」
何をだろう?
昼食を食べ、しばらくして、俺は栞を送っていくと言った。
「栞さん、いらしてくださって、本当にありがとうございました」
亜紀ちゃんが言い、玄関で見送る子どもたちがそれぞれに礼を言う。
「また来てくださいね!」
「うん、じゃあ来週はどうかな?」
おいおい。
俺は充電もかねてフェラーリで送る。
「いつ見てもすごい車よねぇ」
今度、栞とドライブでも行くか。
都内の道は年末で混んでいたが、結構スムーズに栞のマンションまで来れた。
「じゃあ、本当にありがとうございました」
俺がそう言うと、栞は
「ちょっと上がっていかない?」
と俺を誘う。
最初は断ろうかと思ったが、六花のことを思い出し、少し上がらせてもらうことにした。
栞のマンションは高級マンションで、自走式の駐車場が地下にある。
俺は来客用のスペースに車を止め、栞の部屋へ向かう。荷物は俺が持った。
エレベーターで上がり、部屋に入ると、何度か見た栞の整理された室内で安心した。
「ちょっと着替えるね」
栞はお茶を入れた後でそう言って出て行ったが、少し時間がかかっている。
戻った栞の髪はほんのりと濡れていた。
栞はバスタオルで覆っただけの身体を俺にぶつけてくる。
なんか、この展開はさっきもあったぞ。
無言で栞は俺の唇を奪い、その後手を引いて俺をベッドに導いた。
「だって、がまんできなかったんだもん」
栞はそう言って、俺に覆いかぶさりバスタオルを外した。
俺が家に戻ったのは、夕方の5時を回っていた。
急いで夕食の仕度をしなければ。
「あ、タカさん、帰ってたんですね」
キッチンに亜紀ちゃんが来た。
「なんか、楽しかったけど疲れましたね」
「はは、そうだよなぁ」
亜紀ちゃんと笑った。
「タカさん、お疲れでしょうから、今日は出前にしませんか?」
「ああ、いいな。そうしよう」
亜紀ちゃんは俺の言葉を聞くと、インターホンの一斉ボタンを押し、「全員集合」と言った。
そのままリヴィングの隅にあるPCを立ち上げ、出前サイトを表示させる。
みんながワイワイと画面で選んでいる。
結局、定番のピザとなり、また一騒動の後で種類が決まった。
5種類だけどな。
なんか、本当に疲れた。
いろいろありすぎだろう!
「絶対に梱包しておけよ! いいな、絶対だぞ!」
と、本当に何度も六花に言い、部屋を出た。
今思い出しても心が重くなる。
何か人として大事なものが、ちょっと削れて減った気になった。
着替えていいですか、という六花に、そうしろと言った。
ワンルームなので、俺は反対を向く。
こいつ相手に、わざわざ部屋を出るまでもねぇだろう。
すると、六花はいきなり全裸になっていた。
着替えてねぇじゃんかぁ!
「家では、基本服を着ませんので」
すぐに来客がいるんだから寛ぐなと言い、ジャージを着せた。
あいつを、どうやって真っ当な人間にするか。
俺は頭を抱えた。
六花の超感覚コミュニケーションが何に由来するのかは分かった。
あいつの日常は、エロ本の中にある。
ちょっと待て。
俺が響子にエロいことをしたと勘違いし、風呂に飛び込んで来たじゃねぇか。
真っ当な感覚もあるのか?
だが、よく考えれば、あれは響子の身体を心配したためだったんだろう。
俺が行為をすれば、響子の身体に負担が入る。
大体、人の家の脱衣所で待機してねぇもんな、まともな人間は。
「石神くん、遅かったね」
家に戻ると、栞が玄関に出て来た。
亜紀ちゃんたちは、昼食の準備をしているらしい。
休日の昼食は、子どもたちに任せることも多い。
俺が帰ってこないので、自分たちで始めたのだろう。
気遣い半分と、あとは食欲だ。
「六花と何かあったの?」
栞が俺の腕をつねりながら顔を近づける。
「アルワケナイダロウ」
先ほどの魔界を思い出して、俺の声は若干うわずっていたかもしれない。
「え、ほんとにあったの?」
「そんなこと、あるわけないでしょう」
俺はそう言って、栞の口をキスでふさぐ。
「ずるい」
栞は顔を赤くして言った。
まるで浮気を誤魔化す男のようだけど、それどこじゃなかったんだよ、ほんとに。
子どもたちが作ったのは、サンドイッチだった。
前に患者さんからいただいた「乃が美」が子どもたちに大好評で、よく購入し、ほとんど常備している。
生食パンというものだが、本当に美味しい。
具材はシンプルな辛しマヨネーズを塗ったハムとチーズ、オーロラソースを混ぜた炒り卵、玉ねぎをみじん切りしてマヨネーズと共にツナに和えたもの。
四人で分担して作ったものだ。
レシピは俺が作っているので、失敗はない。
ただ、分量が違う。
俺が作ればある程度なのだが、子どもたちに作らせると、その倍量は用意する。
またそれが全部喰われるのだから、驚くべき健啖だ。
「いつもこんななのね」
栞が呟く。
「あたしも頑張らなくちゃ!」
何をだろう?
昼食を食べ、しばらくして、俺は栞を送っていくと言った。
「栞さん、いらしてくださって、本当にありがとうございました」
亜紀ちゃんが言い、玄関で見送る子どもたちがそれぞれに礼を言う。
「また来てくださいね!」
「うん、じゃあ来週はどうかな?」
おいおい。
俺は充電もかねてフェラーリで送る。
「いつ見てもすごい車よねぇ」
今度、栞とドライブでも行くか。
都内の道は年末で混んでいたが、結構スムーズに栞のマンションまで来れた。
「じゃあ、本当にありがとうございました」
俺がそう言うと、栞は
「ちょっと上がっていかない?」
と俺を誘う。
最初は断ろうかと思ったが、六花のことを思い出し、少し上がらせてもらうことにした。
栞のマンションは高級マンションで、自走式の駐車場が地下にある。
俺は来客用のスペースに車を止め、栞の部屋へ向かう。荷物は俺が持った。
エレベーターで上がり、部屋に入ると、何度か見た栞の整理された室内で安心した。
「ちょっと着替えるね」
栞はお茶を入れた後でそう言って出て行ったが、少し時間がかかっている。
戻った栞の髪はほんのりと濡れていた。
栞はバスタオルで覆っただけの身体を俺にぶつけてくる。
なんか、この展開はさっきもあったぞ。
無言で栞は俺の唇を奪い、その後手を引いて俺をベッドに導いた。
「だって、がまんできなかったんだもん」
栞はそう言って、俺に覆いかぶさりバスタオルを外した。
俺が家に戻ったのは、夕方の5時を回っていた。
急いで夕食の仕度をしなければ。
「あ、タカさん、帰ってたんですね」
キッチンに亜紀ちゃんが来た。
「なんか、楽しかったけど疲れましたね」
「はは、そうだよなぁ」
亜紀ちゃんと笑った。
「タカさん、お疲れでしょうから、今日は出前にしませんか?」
「ああ、いいな。そうしよう」
亜紀ちゃんは俺の言葉を聞くと、インターホンの一斉ボタンを押し、「全員集合」と言った。
そのままリヴィングの隅にあるPCを立ち上げ、出前サイトを表示させる。
みんながワイワイと画面で選んでいる。
結局、定番のピザとなり、また一騒動の後で種類が決まった。
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なんか、本当に疲れた。
いろいろありすぎだろう!
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