上 下
67 / 2,859

クリスマスは家族で

しおりを挟む
 12月中旬の日曜日。



 俺は午前中の掃除が一段落した亜紀ちゃんに声をかけた。

 「なあ、亜紀ちゃん」
 「あ、タカさん、すいませんでした。すぐ、お茶を入れますね!」

 いや。



 俺の前にコーヒーのカップが置かれた。
 亜紀ちゃんは来客のときは俺に聞くが、普段の俺がコーヒーを好むことを知っている。

 自分はホットミルクか。





 「相談なんだけど」
 「はい?」

 亜紀ちゃんは厚手の白のタートルネックに、ジーンズを履いている。
 スタイルのいい亜紀ちゃんに本当によく似合っている。



 「部の連中から打診されてるんだけど、もうすぐクリスマスじゃない」
 「あ、ええ」

 「それで、うちでパーティはどうかと言ってるんだよ」
 「えっ、ああ、いいんじゃないでしょうか」

 亜紀ちゃんは一瞬返答を詰まらせた。

 よくねぇんだな。





 「そういえば、去年まではクリスマスはどうしてたんだ?」
 「家で家族で祝ってました。安いケーキと鳥モモ肉とかだけですけど」

 俺はちょっと考えていった。



 「ああ、だったらやっぱり、俺たちだけでやろう」
 「そうですか! あ、花岡さんなんかどうでしょうか?」

 「え?」



 そうだった、亜紀ちゃんは栞が大好きだったよなぁ。



 「それじゃぁ、予定を確認しておくよ」
 「あ、彼氏とかと過ごすんなら、こっちは遠慮してください」

 「ブフォッ!」

 「タカさん、大丈夫ですか?!」











 俺は翌日、栞にクリスマスパーティをやることを伝えた。



 「絶対に、親が死に目でも行きます!」
 眼光鋭く、肉食獣が獲物を狙うかのように即答した。

 俺は思わず、一歩退がる。



 「じゃあ、そういうことでお願いします。うちの子どもたちとですが、響子も連れて行きますので」
 「え、うぅ…………モ、モチロン、ソノホウコウデ」

 トラは、一層眼光を鋭くして言った。



 俺は早々に薬剤部を出た。











 俺は響子にも伝えた。
 喜んで俺に抱きついてくる。



 「じゃあ、お祖父ちゃんにも連絡しなきゃ!」
 「おい、アビーは連れていけないぞ?」

 「違うの、新しい服をおねだりするの!」
 俺が買ってやってもいいのだが、興奮した響子が熱でもだしても可愛そうだ。

 アビゲイルも孫と過ごせて嬉しいだろう。



 「ああ、花岡さんも来るからな」
 「あ、そう」

 あれ、もうちょっと反抗するかと思ったのに。
 俺と栞との関係は、なんとなく感じているようだったから。



 「花岡さんがいても大丈夫か?」
 「うん、羽虫程度、なんとも思ってないから」

 お前はすげぇ女だ。









 俺は六花にも伝え、アビゲイルと響子の買い物に同行できないかを聞いた。



 「はい、まったく構いません!」
 二つ返事で了承してくれる。



 ちなみに、六花の父親の葬儀以降、六花は俺に抱いて欲しいということは、あまり言わなくなった。
 非常にありがたいことだが、その代わりに忠犬のような態度になった。

 俺に会うとキラキラした目で見てくる。見えない尻尾が思い切り振られているような気がする。

 それと、あちこちで俺のことを褒め称えているようだ。
 そっちはありがたくもないが、その話題で他の人間と仲良くなっているようで、俺も止める気はない。



 まあ、他人からどう思われても構わないしな。





 部下たちには計画は却下だと告げると、みんなしょんぼりしていた。



 「じゃあ、年末年始ですかねぇ」
 一江が言う。



















 やらねぇよ!
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

甘灯の思いつき短編集

甘灯
キャラ文芸
 作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)                              ※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...