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新たな約束を
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翌日の放課後、空き教室。
アルト様は時間通りに空き教室に訪れた。
「アルト様、貴方の元養父は【レータ・カルデ】ですね。そして、元々は孤児だった」
アルト様は少しだけ俯いたあと、顔を上げた。
「ああ。レータ・カルデにはとてもお世話になった。彼は優秀な人物が好きだったからね」
「俺のことを気にかけてくれて、よく色んな知識を教えてくれた。そして、リーネ・フローリアについても教えてくれた。とても優秀な人物だと」
「ネックレスの止め方を注意したことも、リーネ・フローリアという優秀な人物を「殺せ」とヴィスタ国の王に命じられていることも」
「でもレータ・カルデは君を殺すつもりはなかった。そんな時レータ・カルデに連れられた俺は、偶然レータ・カルデの別荘の近くでリーネに出会ったんだ」
アルト様が私と目を合わせる。
「始めて会ったリーネは、レータ・カルデに聞いていた人物よりもずっと魅力的だった。当時17歳だったリーネは、名前も知らない8歳の俺に対等に話してくれた。そして、君はただただ明るく眩しかった」
「「学んだことは消えない。絶対に。きっと貴方を助ける糧になるわ」、そう俺に告げた。何故、レータ・カルデが君を殺さないのかが分かった気がした。例え、王命に背いてでも」
「でもリーネと別れた8歳の俺は、その帰り道、王家に【さらわれた】」
「俺を人質に王家はレータ・カルデを脅した。そして・・・レータ・カルデはリーネ・フローリアに毒をもったんだ」
「愚かな俺のせいで、君も!レータ・カルデも死んだんだ!」
「レータ・カルデが処刑された後、俺はずっと学び続けて、レクシア公爵家の養子になった。でも、その時にはレータ・カルデに毒殺を命じた王は失脚していた」
「復讐も出来ず、ただただ自責の念にかられていた時に、君が現れた。あの時のままの言葉を言いながら」
あの日、私がアルト様に初めて出会った日。
私はレーヴィン殿下にこう告げた時だった。
「学んだことは消えませんわ。私たちの糧になります。絶対に」
アルト様の目から涙が溢れる。
「首筋のネックレスを確認した時、嬉しくて震えそうだった。リーネを幸せにしたかった。いや、君の笑顔をもう一度そばで見たかった」
「あの8歳の日、一度だけしか会っていないリーネにきっと俺は惹きつけられた。10年経った後もリーネを知るたびに愛しくなっていった。ただただ君の幸せだけを願ってしまうほどに」
アルト様の涙は止まらない。
たった8歳にして、養父を失い、一人ぼっちになったのだ。そして、その養父を死なせたのも自分だと追い詰め続けたのであろう。
私も気付けば、涙が溢れていた。
私はアルト様に近づき、そっと抱きしめた。
「アルト様、はっきりと言いますわ。レータ・カルデを殺したのも、私を殺したのも、貴方ではない。絶対に」
「アルト様。私が前の家族に言われて一番嬉しかった言葉は何だと思いますか?」
涙が溢れ続けているアルト様は何も答えない。
「今が幸せだ、と言ってくれましたの。涙が出るほどに嬉しかったですわ」
「ねぇ、アルト様。リーネ・フローリアであった時も、リーネット・アステリアである今も、私、とっても「幸せ」ですわ」
私はアルト様を抱きしめている手に力を込める。
「本当に幸せですのよ」
その瞬間、ゆっくりとアルト様が顔を上げた。
私はアルト様と目を合わせた。
「アルト様。貴方の謎は解けましたわ。賭けは私の勝ちです」
「私と結婚して下さいますか?」
「リーネ、君は私を愛しているのか・・・?」
「私、もう貴方の優しさも不器用さも知っていますのよ。・・・だから、はっきりと言いますわ」
私は一度だけ深く深呼吸をする。
「アルト様、貴方を愛しています」
私はアルト様の頬に手を当て、優しく口づけをした。
アルト様の目からそっとさらに一粒涙が溢れた。
「リーネ、俺も君を愛している。愛しくてたまらない程に」
アルト様がもう一度私に口づけをする。
「リーネ、俺と結婚してほしい。必ず、幸せにすると誓おう」
アルト様の言葉に私は頷いた。
「アルト様。不器用でも謎が多くても、優しくて愛情深くていつも私のことを想って下さる貴方が大好きですわ!」
私はアルト様にもう一度勢いよく抱きついた。
アルト様が私を優しく抱きしめ返す。
空き教室に夕焼けが差し込む。
オレンジ色に照らされた教室が、あまりにも輝いて見えた。
「君を殺したのは、俺なんだ」
衝撃的な貴方からの言葉で始まったこの物語。
いつしか貴方の優しさに気付くうちに、愛を感じた。
もう、貴方に謎はない。
賭けも要らない。
だから、約束だけしましょう?
これからずっと二人で幸せな人生を歩み続けるという、約束を。
fin.
アルト様は時間通りに空き教室に訪れた。
「アルト様、貴方の元養父は【レータ・カルデ】ですね。そして、元々は孤児だった」
アルト様は少しだけ俯いたあと、顔を上げた。
「ああ。レータ・カルデにはとてもお世話になった。彼は優秀な人物が好きだったからね」
「俺のことを気にかけてくれて、よく色んな知識を教えてくれた。そして、リーネ・フローリアについても教えてくれた。とても優秀な人物だと」
「ネックレスの止め方を注意したことも、リーネ・フローリアという優秀な人物を「殺せ」とヴィスタ国の王に命じられていることも」
「でもレータ・カルデは君を殺すつもりはなかった。そんな時レータ・カルデに連れられた俺は、偶然レータ・カルデの別荘の近くでリーネに出会ったんだ」
アルト様が私と目を合わせる。
「始めて会ったリーネは、レータ・カルデに聞いていた人物よりもずっと魅力的だった。当時17歳だったリーネは、名前も知らない8歳の俺に対等に話してくれた。そして、君はただただ明るく眩しかった」
「「学んだことは消えない。絶対に。きっと貴方を助ける糧になるわ」、そう俺に告げた。何故、レータ・カルデが君を殺さないのかが分かった気がした。例え、王命に背いてでも」
「でもリーネと別れた8歳の俺は、その帰り道、王家に【さらわれた】」
「俺を人質に王家はレータ・カルデを脅した。そして・・・レータ・カルデはリーネ・フローリアに毒をもったんだ」
「愚かな俺のせいで、君も!レータ・カルデも死んだんだ!」
「レータ・カルデが処刑された後、俺はずっと学び続けて、レクシア公爵家の養子になった。でも、その時にはレータ・カルデに毒殺を命じた王は失脚していた」
「復讐も出来ず、ただただ自責の念にかられていた時に、君が現れた。あの時のままの言葉を言いながら」
あの日、私がアルト様に初めて出会った日。
私はレーヴィン殿下にこう告げた時だった。
「学んだことは消えませんわ。私たちの糧になります。絶対に」
アルト様の目から涙が溢れる。
「首筋のネックレスを確認した時、嬉しくて震えそうだった。リーネを幸せにしたかった。いや、君の笑顔をもう一度そばで見たかった」
「あの8歳の日、一度だけしか会っていないリーネにきっと俺は惹きつけられた。10年経った後もリーネを知るたびに愛しくなっていった。ただただ君の幸せだけを願ってしまうほどに」
アルト様の涙は止まらない。
たった8歳にして、養父を失い、一人ぼっちになったのだ。そして、その養父を死なせたのも自分だと追い詰め続けたのであろう。
私も気付けば、涙が溢れていた。
私はアルト様に近づき、そっと抱きしめた。
「アルト様、はっきりと言いますわ。レータ・カルデを殺したのも、私を殺したのも、貴方ではない。絶対に」
「アルト様。私が前の家族に言われて一番嬉しかった言葉は何だと思いますか?」
涙が溢れ続けているアルト様は何も答えない。
「今が幸せだ、と言ってくれましたの。涙が出るほどに嬉しかったですわ」
「ねぇ、アルト様。リーネ・フローリアであった時も、リーネット・アステリアである今も、私、とっても「幸せ」ですわ」
私はアルト様を抱きしめている手に力を込める。
「本当に幸せですのよ」
その瞬間、ゆっくりとアルト様が顔を上げた。
私はアルト様と目を合わせた。
「アルト様。貴方の謎は解けましたわ。賭けは私の勝ちです」
「私と結婚して下さいますか?」
「リーネ、君は私を愛しているのか・・・?」
「私、もう貴方の優しさも不器用さも知っていますのよ。・・・だから、はっきりと言いますわ」
私は一度だけ深く深呼吸をする。
「アルト様、貴方を愛しています」
私はアルト様の頬に手を当て、優しく口づけをした。
アルト様の目からそっとさらに一粒涙が溢れた。
「リーネ、俺も君を愛している。愛しくてたまらない程に」
アルト様がもう一度私に口づけをする。
「リーネ、俺と結婚してほしい。必ず、幸せにすると誓おう」
アルト様の言葉に私は頷いた。
「アルト様。不器用でも謎が多くても、優しくて愛情深くていつも私のことを想って下さる貴方が大好きですわ!」
私はアルト様にもう一度勢いよく抱きついた。
アルト様が私を優しく抱きしめ返す。
空き教室に夕焼けが差し込む。
オレンジ色に照らされた教室が、あまりにも輝いて見えた。
「君を殺したのは、俺なんだ」
衝撃的な貴方からの言葉で始まったこの物語。
いつしか貴方の優しさに気付くうちに、愛を感じた。
もう、貴方に謎はない。
賭けも要らない。
だから、約束だけしましょう?
これからずっと二人で幸せな人生を歩み続けるという、約束を。
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