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プロローグ
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「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」
婚約者のノア・ヴィアーズにセレア・シャルロットは紅茶を飲みながら優雅に告げた。
何故、このような礼儀知らずなことを王族であるノア・ヴィアーズに告げたのか。
理由は簡単である。
伯爵令嬢セレア・シャルロットは婚約破棄を望んでいるのだ。
ノア・ヴィアーズとセレア・シャルロットが通っている貴族御用達の学園は、今ある噂で持ちきりだ。
「ノア・ヴィアーズがある男爵令嬢と恋仲である」
もちろんセレアだって、始めからそのような噂を信じていた訳ではない。
あの光景を見てしまうまでは・・・
物語は2日前に遡る。
学園からの帰り道、馬車で街を通っていたセレアは噂の男爵令嬢リア・セルナードとノア・ヴィアーズを見つけた。
いや、見つけてしまったのだ。
王族であるノア・ヴィアーズが男爵令嬢の首にペンダントをつけてあげていた瞬間の出来事だった。
そのペンダントはどうみても男爵令嬢が手に入れられる代物とは思えない程素晴らしい輝きを放っていた。
「嘘だとおっしゃって・・・」
そう消え入りそうな声で呟いたセリアに馬車に同乗していたセリアの侍女は立ち上がった。
「すぐに旦那様に報告しましょう」
「大丈夫です。セリア様は何も悪くありません」
侍女の言葉にセリアはすぐに反応出来なかった。
しかし、セリアは屋敷に着くまえに侍女に口止めを命じた。
何故ならセリアは婚約者であるノア・ヴィアーズを建前ではなく愛していたからである。
いくら王族とはいえ婚約者がいる身で他の令嬢と恋仲であるなど、醜聞どころの話ではない。
「セリア様・・・」
貴族令嬢として人前で涙を流さないよう教育されているセリアは涙一つ流さなかった。
それに加え、侍女に大丈夫と優しく微笑む姿は他の令嬢の憧れのままだった。
しかしセレアの心はかつてない程乱れていた。
ああ、今見た景色が夢であったなら良かったのに。
それこそ冗談ね。
だって、ノア様が男爵令嬢に向けた微笑みは見たこともない程穏やかだったもの。
ごめんなさい、ノア様。
今まで貴方の気持ちに気づかず甘えてしまいました。
大丈夫ですわ。
今からちゃんと貴方と婚約破棄してみせます。
大好きな貴方にこれ以上ご迷惑はかけませんわ。
婚約者のノア・ヴィアーズにセレア・シャルロットは紅茶を飲みながら優雅に告げた。
何故、このような礼儀知らずなことを王族であるノア・ヴィアーズに告げたのか。
理由は簡単である。
伯爵令嬢セレア・シャルロットは婚約破棄を望んでいるのだ。
ノア・ヴィアーズとセレア・シャルロットが通っている貴族御用達の学園は、今ある噂で持ちきりだ。
「ノア・ヴィアーズがある男爵令嬢と恋仲である」
もちろんセレアだって、始めからそのような噂を信じていた訳ではない。
あの光景を見てしまうまでは・・・
物語は2日前に遡る。
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いや、見つけてしまったのだ。
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そのペンダントはどうみても男爵令嬢が手に入れられる代物とは思えない程素晴らしい輝きを放っていた。
「嘘だとおっしゃって・・・」
そう消え入りそうな声で呟いたセリアに馬車に同乗していたセリアの侍女は立ち上がった。
「すぐに旦那様に報告しましょう」
「大丈夫です。セリア様は何も悪くありません」
侍女の言葉にセリアはすぐに反応出来なかった。
しかし、セリアは屋敷に着くまえに侍女に口止めを命じた。
何故ならセリアは婚約者であるノア・ヴィアーズを建前ではなく愛していたからである。
いくら王族とはいえ婚約者がいる身で他の令嬢と恋仲であるなど、醜聞どころの話ではない。
「セリア様・・・」
貴族令嬢として人前で涙を流さないよう教育されているセリアは涙一つ流さなかった。
それに加え、侍女に大丈夫と優しく微笑む姿は他の令嬢の憧れのままだった。
しかしセレアの心はかつてない程乱れていた。
ああ、今見た景色が夢であったなら良かったのに。
それこそ冗談ね。
だって、ノア様が男爵令嬢に向けた微笑みは見たこともない程穏やかだったもの。
ごめんなさい、ノア様。
今まで貴方の気持ちに気づかず甘えてしまいました。
大丈夫ですわ。
今からちゃんと貴方と婚約破棄してみせます。
大好きな貴方にこれ以上ご迷惑はかけませんわ。
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