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酔っ払いな戦闘姫続き

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 あたしの実は悩んでもいない人間関係の話を、鈴木さんは真摯に聞いてくれてる。
そんな鈴木さんを見てると、ますます、引き込まれていく。

「マスターはどう思いますか?」

「私はいっそのこと、もっと本音をぶつけてみるべきだと思いますね」

 ああ、鈴木さんの声だけでいいのに、ママの無駄に渋い声が邪魔をする……。
もう! 何なのよ!
もちろん、あたしの苛立ちなんて、顔に出せるはずもなく、二人のアドバイスに、ええ、そうですねと頷いていた。

「悩み事は誰にでもあります。でも溜めちゃいけないと思うんです。だから、愚痴でも相談でも何でもいいです。吐き出してください」

 鈴木さんの優しさに触れていたい。
このままずっと……。

「私もそう思いますね。誰かに話すことは、とても大事です」

 鈴木さんの後に、お約束のように入るこの声。
本当に邪魔!
覚えてなさいよ。この報いはきっと!

 話もそろそろ終わりかと思われた頃、ドアベルが鳴り、お客さん達が三人で入ってきた。

「いらっしゃいませ。どうぞこちらに」

ママが対応で離れた隙に、あたしは鈴木さんに話しかけた。

「鈴木さん、話を聞いてくれて、本当にありがとうございました。凄く楽になった気がします」

「それなら良かった。僕の話しなんて、マスターに比べれば幼稚極まりないですが、そう言ってもらえると嬉しいです」

「ううん、そんなことはありません。歳も近いせいか、同じ悩みを共有してるみたいで、とても親近感わきました」

「僕もこちらに来て、まだ知り合いもそんなにいないので、高橋さんみたいな方と話せて良かったです」

「あの、お願いがあるんですけど」

 タイミング的には今なはず。

「鈴木さんの連載先を教えていただけませんか?」

「僕のですか?    ええ、構いませんよ」

 はい、いただきました。あたしの領空に入ったからには、ただでは終わらせない。頂くものは頂きます。
そう。領空侵犯は全て撃ち落とす。それがあたしの流儀。まあ、逃げられることも多いけど。
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