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第33話 キラキラ戦いたくて

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 ガロードが一直線で相手を狙う。

『来るな!』

 女の子は火球を撃ち出して距離を取らせようとするが、ガロードは飛ぶように避けていく。

『来るな来るな!』

 魔法に対してタッタッと軽快に繰り出される回避行動。

 三回目で一気に距離を詰めながら二本の剣をクリエイトする。

 すれ違いざまに腕をクロスさせて相手を切り裂いた。


 しかし、切れたのは人ではなく土の棒。


「ちっ」

 タワーのように女の子の足元で急成長した細みの建造物が真っ二つに崩れかける。

 女の子が飛び降りると完全に崩れてしまう。

 飛び込んだ空中で風を纏うと火の魔法を一発放つ。

 魔法の反動でくるりと回転しながら緩やかに距離を取る。

 ガロードはそれを無効しながら足元を狙いに行く。

 宙を舞いながら放たれる、火と火。

 シビレを切らしたガロードが剣を投げてまとめて無効化する。

「うぜえな!!」

「負けたくないのです!」

 ガロードが右手の土剣で火を防ぐと、何もない地面を切り上げて武器を加熱させる。

「おかしくなったのですか?」

 ボッと炎を纏った剣をそのままに左手の土を変身させる。


『クリエイト』


 土が創り出したのは片手で扱えそうな銃。

 魔法を避けながら銃口から燃える剣を差し込み、入りきらない部分をパッキリ折って捨てる。


「じゅ、銃器は魔力に意味を成しませぬ! 愚か者よ!」

「お前は狙ってねえんだよ、雑魚が」

 火を吹く銃を向け、引き金を引く。


 無音で放たれた烈火の矢が女の子を掠める。


 遅れて真っ赤な蛇が矢を追って駆け抜ける。


「ふふふ! 馬鹿め!」

「それはお前だ」

「な、なな!!」

 掠めた火が風を無効化し、纏っていた浮遊力が消えていく。

「発動しろ! 魔法よ!」



『もう、遅い』



 落下していく女の子をすれ違いざまに斬りつける。

 斬撃を受けた女の子が消えていく。

『勝者が決まりました』

 ガロードはアナウンスを聞いて息を吐く。

 ダルそうに台から降りていった。


 くそ、主人公みたいにかっこよく戦いやがって!

 羨ましく思っていると次のメンバーが発表されて、戦い始めた。

 負けたら消えていく、そんなシステムなんだろう。

 スカーはカロンと世間話に夢中なので俺は戦闘を見てお勉強。

『寂しそうね』

 声に振り替えるとサラだった。

「なんだ」

「お話しましょう」

 殺そうとしてきた女が隣に座る。なんか怖い。

 俺はちょっと距離を取った。

「もう殺さないから、ね?」

「怪しい」

「頼まれたから殺しに来ただけで、嫌いじゃない」

 そう言われても困るんだが。

「……誰が頼んだ?」

『アラストールのアラスって知らない?』

 知らないと答えると「ま、それでもいいけど」バッサリ捨てられた。

「なら言うなよ」

「いずれ、会うことになるから」

 会いたくないので謙虚に生きます。


『勝者が決まりました』

 話していると勝者が決まり、次の名前が挙げられる。

『メーナスさん』

 スレンダーな女性が舞台に上がる。強そうだ。

『リュウキさん』

 俺の名前だと! 出るしかないな。


 立ち上がるとサラが「流れを見せてね」と言ってきた。

 何言ってんだこいつ。

 状況に気づいたスカーが引き剥がすように俺を抱き寄せる。

『泥棒猫!』

「そんなつもりはないので……」

 そんなに嫌わなくてもいいとは思うけどな。

「ほらリュウキ、頑張ってね」

 サラには見えないようにスカーがウインクを数回する。

 魔法で支援するよ。とでも言いたげだ。

「ダルいから風の力でなんとかするよ~」

「がんばがんば」

 背中を押されて舞台に上がると待っていた女性が俺を睨む。

「女々しい男」

「風邪でだりいもん」

 戦いの合図が鳴り響く。俺は棒立ちでスカーの風を受け入れる。

 チラリと外を見てみるとスカーが瞬きもしないで俺を見ている。

 サラはなぜか俺とスカーを交互に見ていた。

「へえ、小賢しいね……」

 メーナスが一気に距離を詰めて拳を振るう。

 武闘家かよ!

 キレッキレの右ストレートをきりもみ回転で吹き飛んで避ける。

 強風が鳴らせる音に身を任せ、スタッと着地する。

「な……」

 殴られそうになる度に吹き飛ぶ俺。

 傍から見れば不気味に映るだろうな、俺もスカーと戦った時はキモく思った。



『どうした? 手加減してやるからさっさとしろよ』



 魔法使いになれて嬉しい俺は煽ってしまう!

「く、クソ野郎!」

 メーナスはバク転しながら距離を取ると手をかざして魔法を放つ。

 火の魔法は危険だ!

 そう思ったらどこからか現れた土の塊が火を消した。

 ナイス! スカー!

「むむむ……クリエイト」

 メーナスは人では扱えないような巨大な剣を生成し、軽々と突っ込んでくる。

 そのまま叩きつける瞬間を風に任せて避ける。

『ふ、かかったな!』

 地面に当たって砕け散る土の欠片。大きな剣の中身は空洞だったようで、破片が飛んでくる。

 危ない! そう思ってたら風が勝手に止めてくれた。

「な……」

 勢いを失った欠片が不自然なほどその場でカタカタ落ちていく。

「じゃあ俺のターンだな」

 手を空に向け、火球を大量に生み出してメーナスの元に注ぐ。

 魔法やクリエイトしたもので無効化されるが、次第に相手から疲れが見え始める。

「もう終わりか? 俺は五時間くらいできるぞ」

 しばらく耐えていたが、さすがに限界が来たようで。

「もう無理」

 そう言って尻もちをついたあたりで、俺は必殺技として大きなマグマを空に生成する。

「ここまでがあたしの限界か」

 段々と落下していくマグマにメーナスは目を閉じる。

 当たる直前、マグマが縮みながら消えていく。

 生きている事に気づいたメーナスが辺りを見回す。



 俺はわざとらしく膝をつき、わざとらしく肩で呼吸する。



『はあ……! はあはあ! くっ……もうダメか、もう魔力切れなのか!!』








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