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第23話 金髪ちゃん
しおりを挟む肉を頬張りつつ部屋に戻る。
モッサモッサ。美味しい。
ドアに近づくといつもの男に声を掛けられた。
『今回も例の教室で行われる』
「へえ」
「テストもある。内容は集団戦、半分に別れて生き残ったチームが勝ちだ」
他力本願できそうなルールで嬉しいな。
納得しながら部屋に戻って肉を食べ続ける。
この間に集団戦のパターンを考える。
魔力がない俺はこの時点で戦いなのだ。
戦わずに済むなら俺は影に隠れるのも辞さない。
格闘技みたいに全員がそれぞれ戦って、点数を競う。
このパターンが最悪。
『何か考えてるんですか?』
「集団戦ってなんだろうって」
「乱闘みたいなもんじゃないですか」
思ったよりカロンは物騒だった。
どういうチーム分けするのかも気になる。
ランダムだったら……。
『この肉食ってー』
急にスカーがテカテカした白い肉を俺に向ける。
「なんでだよ」
「得意じゃないんだ」
「まあいいが……」
噛みついて肉を串から引き抜く。
「わりといけるけどなあ」
脂身って感じで噛んでも噛んでも切れない。
ホルモンに近いか?
「絶対まずい」
「いーや、うまいね」
「ワタクシも美味しいと思います」
まあ、ホルモンは好き嫌いが激しい食べ物だから仕方ない気もする。
「みんな変、間違いない」
「どうだかな」
食べ終えて部屋を出る。
男はずっとそこに居たらしく、壁に背を預けていた。
『ついてこい』
男はそう言って歩き始める。
後を追いながら疑問をぶつけてみる。
「そっちはいつもなにしてんの?」
俺達と一緒にいない間、ここに居る意味はあるんだろうか。
「ローザという女性が歓迎してくれただろう」
コキュートス王国に来た時、めちゃくちゃ美人な集団が迎えてくれたな。
「あの方は英雄だ」
「へえ」
「それだけだ」
なるほど。
「いや、分かんねえよ」
「まだ言えない、という事だ」
「いつか聞きたいな」
「そのうち教えてやろう」
喋っている内に教室に着き、適当な椅子に座る。
今回はカロンが真ん中で廊下側にスカー。
俺は窓側。正式に俺が日向ぼっこできる番だな。
俺の隣の席だけまだ空いていた。
暫く待っているとアステル先生が入ってくる。
少し遅れて大慌てで少女が駆け込む。
金髪ちゃんだ!
素早く空いた席に座り、良い匂いが周囲に舞った気がした。
座ってから息を何度も吸っては吐く。
『仲間を爆破した人……』
『リア充……』
俺と一緒にガロードを吹き飛ばしたのが知れ渡っているのか、陰口に気づいた金髪ちゃんが俯く。
俺の時に優しくしてくれたんだから、お返ししないとな!
とりあえず金髪ちゃんの髪に触れてみる。
『きゃっ』
驚いた金髪ちゃんが俺の方を睨む。
「わ、悪いことしたな」
「なに……?」
「俺の時にも、こうやって撫でてくれたから」
恐る恐る金髪に触れ、優しく撫でる。
「…………」
何か言ってくることはなかった。
『はい、クリエ・アステルです。今回は物に対しての魔力について話していきます』
「まず始めに魔力を込めたら、そのアイテムに魔力が宿ります。その魔力から魔法を誘発させる事ができます、例えば」
アステル先生が何処からか短剣を取り出す。
いつも思うんだが、先生はどこから物を出してるんだろう。
撫で続けていると金髪ちゃんが俺の手を払った。
「うざい」
「ごめん……」
「いいよ」
許された。
「では、早速魔力を吹き込みます」
先生は短剣の刃を中指で撫でる。
指が通った部分の刃だけ、煌めきを放ち始める。
「これ、魔力が宿ってる証です。アイテムが美しく見えてきます」
「魔法を誘発させてみます」
先生が目を閉じる。刃が火で包まれ、激しく燃え上がる。
三秒ほど暴れた火は自然に消えていく。
「……はい、こんな感じで属性を武器に与えることができます。刃物じゃなくても面白いことが出来るので覚えておいてください」
黒ずみもしなかった短剣を前の子の机に置く。
その子は迷惑そうに置くなとジェスチャーする。
先生は見向きもしなかった。
「何故こんな話をしたのかと言うと、今回学ぶ事は実際の武器を持つ事だからです」
パチンと指を鳴らし、扉を生み出す。
「後はこの先の専門家に任せてます。アステルはここでおサボりしますので、頑張ってください」
周りの生徒が納得して席を立ち始める。
金髪ちゃんも最後尾に並んで消えていく。
俺も行くか!
遅れて扉に近づくと、また手を掴まれる。
スカーだ。
「今度はなんだ?」
「一緒に行こ」
そう言って腕を絡めてきた。
アステル先生が『青春してますねー』と言う。
傍から見ればそうかもな。
ドアの中に入るとそこは涼しい草原だった。
「なんか草原ばっかだな」
「そだな」
文句はあるが、快適な空間なのも事実。
『あー、武器武具に関する話を行う。ワシの事は気軽に『ゴリ』とでも読んでくれて構わない』
声の方向を見てみると長い白髭を蓄えたおっさんが居た。
「分かりやすいように鉄剣をこの辺に置いている。持ってみてくれ」
それぞれの生徒が落ちている剣の所に向かい、手に取る。
重いのか、それぞれ剣先まで上を向けて持ち上げる奴は居ない。
俺は片手で持ち上げて話聞けるけどな!
『ぐぬぬ……』
スカーは剣を握ってちょっと立つだけでプルプルしている。
こんな奴に持ち上げるなんて不可能だ。
「では、剣を構えて魔力を吹き込め」
ゴリ先生はそのまま進行した。
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