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第15話 学園ヒエラルキー

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 アステル先生が教室に入ってくる。

「続きは後でな」

「あ、ああ……」

 スカーの握る力が抜け、掴んでいた腕からするりと落ちる。

 自分の席に戻るとちょうど話を始めた。

「今回は応用です」

「魔法には相性があるという話をしました、今回はクリエイト魔法について」

 クリエイト魔法? なんだそれ。

「一部の魔法はクリエイト、創造に使えます」

「このように」


 そう言って先生は手のひらを上に向ける。

 すると茶色いアステル先生の人形が手に現れる。


「これは大きくすることもできます、中には自由に動かせる方もいますね」

 泥人形を一番前の子にあげると話を続けた。

「土の壁もクリエイト魔法の部類です」

 なんとなくスカーの方を振り返る。

 俺に気づくとニコニコしてきた。

 遠目から見るとめちゃくちゃかわいい。


『クリエイト魔法において大切なのは、したい事を強く考えることです。思わぬ発動が現状を打開してくれるかもしれません』


『クリエイトできるのはモノだけではなく、あなたの未来もソウゾウできるということです』


 かっこいい事を言う先生。

「ほとんどの方はもう頭の中にあると思います、あとは使えるのかどうかでしょう」

 そう言ってパチンと指を鳴らす。

 途端に赤い扉が姿を現す。



『唐突ですが、抜き打ちテストを開きます』



 それを聞いた生徒達が驚きの声を上げる。

「今回はバトルロワイヤル形式を採用したチーム戦になります」

「それぞれ魔力を提示して交渉し、三人のチームを作ってください、今からスタートです」

 一斉に周りの奴がガタガタと立ち上がり、周囲に話しかけ始める。

 順序を飛ばして女に片っ端から話しかける奴も居た。

 金髪の子は既に誰かと組んでいるみたいだ。

 まあ、俺も決まってるようなもんだけどな。

「君美しいね……僕のチームに来ないか?」

「いやいやこちらの方が魔力も高い!」

 って思ったらスカーは勧誘されていた。

「遠慮しとく」

「来てくれ!頼む!」

「そう言われても……」

 傍から見れば、かわいいから仕方ないか。

 とは言ってもこいつが敵になったら俺に勝ち目はない。


『行くぞ、スカー』

 そいつらが苦労している間に、スカーの手を引く。


「……おい!」

「お前っ!」

 向こうには商品を盗んだように映るよな。

「お前なんかより僕の方が彼女にとっていい!」

「魔法が出ないような無能は引っ込んでろ!」

 事実だから心にグッサリ刺さる~。

 なんとか言ってくれよスカー!

 目で訴えると。



『オレは……この人がいい』



 そう言って俺の肩に頬を寄せた。

「なっ!」

「ちっ」

 二人は分が悪そうに消えていく。

「勝ったな」

「そうだな」

 カロンと合流して戦いが始まる前に軽く作戦を考えた。

「言っておく、俺はいない奴として扱ってくれ」

「やっぱり無能か?」

「剣とか振り回せるくらいだな」

 悲しい事だが、背負ってる剣は譲り受けた物なのにまだ一度も活躍してないのだ。

「俺を魔法から守ってくれるなら肉弾戦できる」

「それワタクシがします!」

 カロンが守ってくれるなら大丈夫かな?

「オレは?」

「剣で敵に切り込むだけだから、後ろから魔法出してていいよ」

 俺自体は斬ったことがない素人って所を除けばこの作戦は完璧。

 やって見なきゃわからないからな。


 話を纏めていると乾いた音が響いた。

『纏まりましたか?』

 アステル先生が手を叩いたらしい。

「チームが組めた人は扉の先へ、全てはその先でアナウンスされます」

 俺達は周りが話している間に一足先にドアを開けた。




 周辺は草木に囲まれている。

 匍匐すれば意図も容易く敵を欺ける位置だが、少し進めば開けた場所になってしまう。

 隠れるのは限定的すぎて、そんなに使えないな。

 しかも、敵には利用されやすい。

『変な所ですね』



 不意に一枚の紙が空を舞い、俺達の目の前に落ちる。



「なんだこれ」

「何か書かれてますね」

 カロンはそれを拾い上げた。

「最後まで生き残れば勝ち……だそうです」

「それだけ?」

「ええ」

 生存重視ならこの辺に留まった方が良さげだよな。

『じゃ、全員ぶっ倒そうぜ』

 って思った瞬間からスカーはやる気を出している。

「はあ?」

「勝ってお前の株価上げたいんだよ」

 誰かさんのせいで魔法二発食らった信頼は取り戻さないとな。

 学園ヒエラルキーは最底辺だ。

「カロンちゃんもぶっ飛ばしたいよな!」

「はい?」

「な!」

「はい……」

 強引すぎだ、答えれなかっただけだろ。


『メンバーが揃いました』

 探索を始めているとアステル先生の声が空に響く。




『テストを始めます』




 その瞬間、周囲から魔法の音が炸裂する。



『ご武運を』









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