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第13話 不機嫌

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 男に教室を案内された。

 中はガラスで透けていて、三十人くらいの人が椅子に座って誰かを待っている。


 空いた席が三つ確認できる。


『素早く席につけ』

 男に言われて教室に入り、適当な席に座る。

 カロンは廊下側、スカーは窓側で日向ぼっこを始めた。

 俺は真ん中だからサボるにもサボれない位置だ。


 最悪か?

『よろしくね』

 不意に声が聞こえて振り向く。

 隣の席の可愛い金髪っ子が居て、俺と目が合った。

「よろしく」

 最高か?


「君はどんな魔法が得意なの?」

 得意も何も使えないんですが。

 でも使えないって言うのはどうだ?

 それは女の子と仲良くなる機会を潰す事になりかねない!

 苦肉の策で「火だよ」と言った。

「ふーん、同じだね」

 同じか!

「奇跡に握手しよ?」

 かわいい子だなあ。


 そんな事を思いながら手を握ると。


 ガラガラと教室のドアが開いた。


『魔法の基礎を教えましょう』


 そう言って入ってきたのは見覚えのある人物。


 見覚えのある紋章。


『実技で知っている方も居ると思いますが、クリエ・アステルと言います』

 アステル先生だった。

「早速、魔法についておさらいします。その前に魔力について」

「魔力とは体内に保存される未知の力を指します。私達はこの力を使用しながら生活しています」

 みんなは聞いたことのある話なのか、雰囲気が退屈そうだ。

 金髪の子も頬杖をついている。

 柔らかそうな顔だなー。

「魔力の保存量は人によります、これは仕方の無いことでしょう。これは物にも適用される部分がありますね」

 でも俺は魔力がないからな、関係のない話だ。

「次に魔法です。基本的に何かに強いが何かに弱い、といった特徴があるので各自で必ず覚えてください」

「何回か復習します」

 ぼーっとしてると金髪の子が俺の二の腕をツンツンしてきた。

「ねえねえ」

「なんだ?」

「なんでもなーい」そう言ってぷいっとそっぽを向いた。

 かわいい。

「……眠そうな皆さんの為に恒例の面白い話をしてあげましょう」

「今回の実技で非常に珍しい方が居ました」

 アステル先生の話に身構える。

 俺はあまりこの人を良く思っていない。


「爆発魔法を詠唱せずに発動まで行える方です」


『爆発魔法を!?』

『やべーなおい』

 爆発魔法と聞いた瞬間、周囲が一気にざわつく。

「今回の魔力測定において一番高い数値は一万でした」

 それまで眠そうにしていた金髪の子が目を開く。

「話はこれくらいにして魔法の実践練習をしましょう」

 アステル先生が手を叩くと、先生の隣に白い渦が現れた。

「影響がない魔法空間で行います」

 そう言って先生は渦の中に消えていった。

 続々と他の生徒も入っていく。

「お互い頑張ろうね」

 金髪の子もニコりと笑って席を立った。

 ……みんな行ったし俺も行くか!


 渦に入ろうと一歩進む。


 不意に誰かに腕を掴まれる。


『なんの話をしてたんだ?』


「えっ?」

 振り返るとそこにはスカーが。

「金髪のケバい女と話してたろ」

 ケバい? ガングロでもなければマンバでもない純粋少女だったじゃないか。

「頑張ろうって言葉を交わしただけだよ」

「でもオレのアイコンタクトを無視した」

「斜め後ろだから分かるわけ――」

『だったら振り返れ、そして見ろ』


 そう言って顔を近づけてくる。

『オレの気持ちが分からないのか? オレは分かってるのに』


「分かってるよ」

「言ってみろ」

 こいつが考えてる事?

 もし俺なら……今後の影響を考える。

「心配、なんだろ?」

「ちげえよ」

「えっ?」

 見えていたはずの思考にノイズが走る。

「……分かんねえのか」

 そう言い残すと白い空間に入っていった。

 機嫌良いと思ってたら悪いのかよ、そこまで読めなかった。

 俺も少し遅れて渦に入る。



 最初に来たような草原でアステル先生が何かを話していた。

「では、実際に魔法を簡単に無効化してみましょう」

 そう言って、数歩進んで振り返る。

「誰か前に出なさい」

 先生が言うと生徒が一人前に出る。

「火の魔法を撃ちます。あなたは水の魔法を発動させなさい」

 アステル先生が指を生徒に向け、赤い火の玉を飛ばす。

 生徒は薙ぎ払うように手を振り、水を周囲に散らす。

 水に触れただけの火球は容易く消え去った。

「こういうことです、それぞれの魔法を撃つので他人の結果も参考に覚えましょう」


 先生はそう言って「他にしたい人いますか」挑戦者を扇動せんどうする。


『はーい』


 手を挙げたのはスカーだった。








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