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大斧使いと槍使い

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 加護を受けた俺達は武器庫に向かい、それぞれの好きな武器を手に取る。

 斧を背負う者、槍を背負う者。

 左手に盾を、右手に剣を持つ者。


 俺とブラッドは空いている腰に鞘付きの剣を押し付けた。


「お前、両手に剣を持ったことあるのか?」

「ないよ」

「素直に盾にしとけ」

「努力する」

「そんな馬鹿な、知らないぞ」

 鎧もそれぞれ着替える。

 今までのくすんだ鎧から、輝きを放つ軽量な鎧へ。

 身を守る能力は据え置きの最高品質。

「まるで違う」

「頼まれる事も、桁違いということだな」

 それから七人で王から用意された馬車に乗ることになった。

 馬車を借りるほどの遠い場所であり、オーラから近い場所。


『さすがに七人はワガママじゃないだろうか』

 誰かが口を開いた。


『自分は期待に応えたい』

 斧を背負っていた騎士は斧を股の間に挟んでいた。


『村に到着したら、家を崩して迎え撃つ素材にしよう』

『人が居たら嫌だ』

『居たとしても、物分かりの悪かった骨が謝ってるだけさ』

 ガタゴト、ガタゴト。

 俺は馬車の音が嫌になってきている。 

『………………』

 一言も声を出してない俺は、沈黙を破って馬車の音を誤魔化す気はなかった。

 フッと吐いた息が馬車の隙間に吸われて消え。



『おい、起きろ』



 目を覚ますと馬車の扉が開かれ、五人の騎士は降りていた。

 どうやら意識まで吸われていたらしい。

「助かった、ブラッド」


 馬車から降りて空を眺める、青い。

 前を向く、その先には黒が渦巻く絶望の空間。

 魔王のオーラは禍々しかった。


「四人でこの村を要塞にする、二つの建物は休憩所と寝泊まりができる程度にしよう」

 大きな剣を背負う騎士が腕を組んで行動をパッパと決めていく。

「三人で数日凌げる食べ物を探してきてくれ、飯なければ勝利もない」

 それぞれが動き始める。

 残ったのは俺と大斧使いと槍使い。

「ふむ、肉を取ろう」


 斧使いの言葉に兜で顔を隠した槍使いは静かに頷く。


「俺も肉が食いたいかな」

 肉を探しにオーラとは逆方向の森を進む。

 茂みに身を潜めた。

 こんな場所に生き物は出るんだろうか。

 しばらくしてカサカサと太った肉が歩いてきた。

「晩飯は決まった、槍で頼めるか?」

「……」


 斧使いの言葉に頷きながら槍を抜くと。

 そのまま手の力だけで投げ、息の根を貫いた。


『ブヒィ!』

 フガフガと動かなくなった肉の足を槍で括りつけ、男は軽々しく背負う。

「槍って便利」

「……!」

 振り返った槍使いは誇らしげに親指を立ててきた。
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