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第10話 致命的な致命傷
しおりを挟むいつものやり方で砂漠に着いた俺達は一言も交わさずに砂漠に足を踏み入れる。
砂の中から現れる大量のエイが歓迎してくれた。
『モンスター、こっちよ』
ヴァイパーは呟くやいなや、引き抜いた刀を手に1体ずつ半殺しにしていく。それを追いかけるように動きながら俺がトドメを刺した。
慣れたものだ。適応って怖いと思う。
「もっと効率を上げていいか?」
「あんたにそんなスキルあるの?」
「ある」
刀を鞘に収め、右手を左から右へ払う。
『ダッシュ・ノスオトロス』
唱えると俺達の周りに青い粒子が付き纏うようになる。色にもよるが、なんらかの補助スキルが発動している証らしい。
「これは早くなりそうね」
実際にヴァイパーの攻撃速度は僅かに上がっていた。恐ろしい速さでエイが断末魔を上げていく。
何回かレベルが上がりつつ、数分が経った。補助スキルの効果でいつもより早くエイが全滅する。
いつものように、羽が風を起こす音と砂嵐が巻き起こった。
「アイツよ」
黒い影が見え、嵐が収まるとそこにはハゲタカが。
「またか」
俺は刀の先を敵に向けた後、円を描くように斜め後ろまで振り、鞘に収める。
『パワースラッシュ』
技に呼応して鞘に青いオーラが漂った。
「あなたって唱えないと技も使えないの?」
「え? 唱えなくていいのか?」
「当然でしょ」
早く言ってくれよな。
ハゲタカの走り込みながら全力でコケる体当たりを避けて更にオーラを貯める。
『飛翔龍・ウロボロス』
刀を適当に振り回し、鞘に収めると鞘だけ朱色に染まった。
「なにそれ?」
「ただのパワースラッシュ」
そう、知っていたら適当な言葉を呟いてかっこよく決めれた!
「突かないの?」
「パワースラッシュは補助スキルだぞ」
起き上がるハゲタカを横目に右手を振る。俺とヴァイパーに赤い粒子が付属される、攻撃力アップのノストオロスだ。
「えぇ……?」
「今度は冷静に対処する」
ハゲタカが一歩下がり、顔を空に掲げた。俺はそんな動きにお構いなく距離を詰める。
「待って!」
「大丈夫」
刀を抜き、クロスバスターを狙う。
「それはブレスの予備動作よ!」
「なんだと」
足元に潜り込めそうな辺りでハゲタカの顔が俺を見据えてしまった。そのくちばしからは、黒い煙が溢れている。
「ッ!」
突然吐き出される黒煙のブレス。
斬りかかろうとした寸前に足場の悪い砂を踏みしめ、横に大きく身を投げる。命辛々の緊急回避だ。
胴体で着地した俺は、転がっていく勢いを利用して素早く体制を立て直す。ブレスの停滞力は高くないのか、既に消えていた。
「危ねぇ……あれ食らったらどうなるんだ?」
「毒に犯されるわ」
さすが腐肉を漁ると言われるハゲタカだ。イヤラシイ攻撃をしてきやがる。
まだ相手が動いてこない間に刀を振り回し、鞘に収めて武器を強化する。オーラが赤色に変わった。
『ウロボロス』
俺はようやく振り向いたハゲタカを見ながら更に強化を施した。鞘を包むオーラにイナズマが宿り始め、刀身が真っ赤な結晶に変わる。
必殺技を決める為に駆け寄り、柄に手を添えるとハゲタカが羽ばたいて距離を取ってしまった。
攻撃の気を感じたのか?
バッサバサと苦しそうに滞空している敵を追撃する技はレイドしかないが、あいにく一撃で仕留めれない。
『ウロボロス』
それなら、補助を重ねてひたすら待つ手がある。
「レイド以外で空中攻撃はないのか?」
「ライフルブレード、武器から斬撃の弾丸を放つ技よ」
「覚えてるか分かんねえな……」
それでも俺は試すしかない! ハゲタカに向けて刀を向ける。
「ライフルブレード」
……。
…………。
何も起きなかった。覚えてないようだ。
かっこよく構えている間にハゲタカが翼を傾けて俺に向かってくる。
「まじか!?」
「死んだわね」
少し前の出来事がフラッシュバック。一撃も当ててない今、こいつを一撃で倒せるなんてありえない。
「死んでたまるか!」
怯ませたり叩き落としたり、なんらかの大ダメージを与えれたらなんとかなるかもしれない。レイドを受けきった前例はあるが何かあってもいいだろ。
相手に変化を与えるスキルを覚えてなかったか?
考えろ、まだ終わったわけじゃない……!
――ふと足元のアリンコが、他のアリ達を巣穴に入れないように威嚇している事に気づく。
「ぁあっ! これだあああ!」
「な、なによ? 死ぬ前だからおかしくなった?」
俺はある作戦を思いついた。これならひょっとすると回避できるかもしれない。
「ヴァイパー! ヘイトを集めてくれ!」
「集めるだけしかしないわよ」
「上等だ」
俺はその間にヴァイパーとの距離を少し開ける。大体6メートルくらい走った所で振り返った、ハゲタカは俺を狙っている。
「頼む!」
『モンスター、私を見て……』
ヴァイパーが【名乗り】を唱えた。
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