気付いたらストーカーに外堀を埋められて溺愛包囲網が出来上がっていた話

上総啓

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◇ 公都フェルナンド ◇

「ここが公都フェルナンドか…。」

 私は目の前に広がる壮大そうだいな景色に息をのんだ。

「すごいですね!こんなに大きな街があるなんて!」

 ジュリアは、初めて目にする公都の外観に驚きを隠せない様子である。

 私たちはホセ村を出発してから10日間の旅をて、ようやく公都フェルナンドに到着したのだ。

 公都は高い石の壁に囲まれており、正門以外からは侵入できないようになっていた。

 高い壁によって街の様子を見られなかったが、遠くにそびえる城塞じょうさい圧巻あっかんだった。

 街道かいどう沿って進むと、公都の出入りを管理する正門が見えてきた。

 正門には兵士たちが警備に当たっており、入りたい者は身分証を提示ていじしなければならないようだ。

 私たちは正門の前で列に並んだ。

 しばらく待っていると、ついに私たちの番がやってきた。

「止まれ!身分証を見せろ!」

 兵士の一人が私たちに声をかけた。

「私たちはホセ村から来た。身分証は持っていない。だが、ルカ村の村長さんから兵士さんに渡す手紙を預かっている。」

「ほう…。ホセ村からか。あそこはずいぶん遠いところだな。まさか、歩いて来たのか?」

 兵士は驚いたように言った。

「ああ、そうだ。」

「凄いな…。静寂の森を抜けるのは大変だっただろう?それで、ルカ村の村長からの手紙だったな。」

 私は兵士に手紙を渡した。

 兵士は手紙を開いて読み始めた。

「なんだと!?お前たちがサンギョ盗賊団を壊滅かいめつさせたのか!?それは凄いな!サンギョは怪力かいりきで我々も手を焼いていたんだ。お前たちには感謝しなくちゃな。」

(やはりこの国の兵士はあまり強くないみたいだ。ジンディオールの故郷こきょうであるレーナス帝国は、大陸を征服せいふくする野望やぼうを持っている。もし魔剣士隊がこの国に攻め込んだら…。)

「紹介状もあるし、サンギョを倒した英雄だというのなら、通行を拒否きょひするわけにはいかないな。通れ!だが、身分証は作っておけよ。」

「ありがとう!身分証はどこで作れるんだ?」

「そうだな。商人や農民になる気がないなら、冒険者ギルドに行くといい。この道をまっすぐ行けば、すぐに見つかるはずだ。」

「そうか。それなら冒険者ギルドに行ってみよう。」

「ああ、そうだな。サンギョを倒すほどの実力があるなら、冒険者になるのがいいだろう。それに冒険者ギルドには色々な依頼いらいがあるからな。」

「ああ、そうだった。ジンにジュリアだったかな?サンギョの懸賞金けんしょうきんが入ったら、冒険者ギルドに連絡しておこう。」

「わかった。よろしくお願いする。」

 私たちは兵士に礼を言って、公都に入った。

 公都は中世ヨーロッパ風の建築けんちく統一とういつされた美しい街だった。

 ホセ村とは比べ物にならないほどの人や馬車が行きっており、活気かっきちていた。

 私たちは冒険者ギルドに向かいながら、周囲の光景に目をうばわれた。

「ジンさん、公都は凄いですね!街並みや行き交う人たち…。全てがホセ村とは全然違います!」

 私は、これぞ異世界という街並みに興奮気味だったが、ジュリアはホセ村との大きな違いに驚き、感動しているようだった。

 私はこれからの冒険に胸がおどっていたのであった…。
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