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【10話】 蘇る
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「咲~、快人君が御見舞に来てくれたわよ!」
お母さんの声が凄く遠く感じる。御見舞なんてわざわざ来なくていいのに…
「咲!!」
あ、名前…珍しいな、名前で読んでくれるなんて。…前も、呼ばれた?─
「痛っ…!!」
「おい!大丈夫か!?」
なんでそんなに心配してくれるの?私の事嫌いなんじゃないの?幼馴染だから?…でも、思い返せば昔から何気に困った事があれば助けてくれたのは快人。
それにしても…さっきから快人の事を考えれば考える程、頭痛がする。いや…思い出そうとしてるから?
「快人…」
来ないで、こんなみっともない姿見ないで欲しいという思いと、来てくれて嬉しい思いが入り混じる。
今、一人だったらなんだか壊れちゃいそうだった。頭の中で、記憶が、昔の光景が、走馬灯みたいに移り変わってぐちゃぐちゃしてるの。
怖い。痛い。苦しい。
刹那、ギュっと力強く抱きしめられる。急な出来事に私の顔は余計に赤くなる。
「う、うつっちゃうよ…!」
「そんなのどうでもいい」
「お前をそうしたのは…俺のせいだから」
「どう、いう…?」
そういえば昨日も…─
『お前のせいじゃ…』
って言ってた。私のせいじゃないって事?一体何が?どういう意味なのか、聞かずにはいられない。
快人side
咲が体調不良だと聞いて急いで駆け付けた。高熱、酷い頭痛、それに走馬灯が掛け巡る感覚…。多分、これらの症状からしてあの薬の後遺症だ。あんな強烈な薬なのだから何かしら後遺症があるとは思っていた。咲曰く、記憶が混濁しているらしいから今ここで思い出せれば吉。思い出さなければ…二度と思い出す事は出来ないだろう。
「くる、し…」
と、頭を抱える咲。というより蝕まれているかのように見える。どうにか力になれないのか?いや、俺には咲に思い出させる事しか手伝えない。全ては咲にかかっている。
「咲。相槌とかしなくていいから聞け」
─────
幼稚園入学式
「かわいい!これがせーふく?」
「そうだよ、よく似合ってる」
「ああ、可愛らしい」
咲は手を広げてくるくると母親と父親の周りを回る。すると、ポツンと正門前に立っている男の子を見つける。
「あら、あの子、お隣の家の子じゃない?」
「だぁれ?」
きょとん、と首を傾げる。
「んー…名前は分からないなぁ。一人でいるみたいね。親はどこにいるのかしら」
多分、無意識だったと思う。足が自然に男の子がいる先へ向かっていった。
「あっ、走るなってあれだけ言ったのに…」
「元気でいいじゃないか」
「ねぇねぇ、あなた名前なんて言うの?」
「…誰だよお前」
その子の表情は幼稚園児とは思えない程荒んでいて、痣のようなものも見受けられた。
「私?私は咲だよ!」
「あぁ、隣の…」
そんな彼の反応を他所に話しかける。
「お母さんとお父さんは?来ないの?」
「お母さんはいない。お父さんは仕事」
「そーなんだ…なら、一緒に行こ!」
「え?」
ギュっと手を握り、園内に入っていく。
「わぁ、私と同じせーふくの子いっぱーい!」
「てか、離せよ」
何を感じたのかすかさず手をパッと離す。心底嫌そうに拒否する男の子。
「ひ、ひどいっ…ぐすん…っ」
「は…」
ざわざわと周りが騒ぎ出す。その男の子は初めて子供らしく動揺した姿を見せる。
「わ、悪かった」
謝っても泣きやまないので、ポケットに手を突っ込み、四つ葉のクローバーを出す。
「これ」
差し出すと、一瞬泣きやみ、クローバーを見つめる。
「本当はお守り用で持ってんだけど…やる。だから泣くな」
「ありがとう!」
パアァ、とキラキラ目を輝かせて受け取る咲。
(たかが四つ葉なのに…)
と複雑な感情を隠せない男の子。
「ご入学おめでとうございます─」
─────
「ねぇ!」
全然振り向いてくれない。そういえば名前聞いてなかった。
「俺、もう帰るんだけど…あ」
「初めまして、咲の母です」
「初めまして。佐川快人です。お隣の方だったんですね」
「そうなのよ!こうして会うのは初めてで嬉しいわ~♪」
名前、快人っていうんだ…というよりもさっき私と話してた時との態度のギャップに驚きを隠せなかった。
さっきは凄く暗い表情で怒っている感じだったのに一転して、キラキラ輝いて満面の笑みを浮かべている。これは一体どういう事なのか。大人のような話し方で二人は談笑を始めていて私は立ち尽くす事しか出来なかった。
それからいつの間に仲良くなったのかお母さんが突拍子もない事を言い出す。
「海行きましょ!お気に入りの場所があるの!」
「そうなんですか?そんな所に行ってもいいんでしょうか?」
「勿論よ!」
コソッとお母さんが私に耳打ちをしてくる。
「良い子じゃないの!仲良くなりなさい♡」
「うん!」
これは、初めてのお友達なのかもしれない。
「きれーい!快人くんは?」
「綺麗…だと思う。」
「良かった!」
「お前、さっきから俺に話しかけたりして…なんなんだよ、何がしたい訳」
煩わしい、というように嫌悪感を示す。
「?仲良くなりたいから!私、快人くんと友達になりたいな!はい、コレ!」
コロン、と貝殻を手のひらに沢山乗せる。どれも綺麗なグラデーションがかかっていて見る角度によって様々な色に姿を変わる。
「友…達?」
「うん!」
─────
「…思い出した?」
私の目頭は熱くなってポロポロ涙が零れ落ちていた。
お母さんの声が凄く遠く感じる。御見舞なんてわざわざ来なくていいのに…
「咲!!」
あ、名前…珍しいな、名前で読んでくれるなんて。…前も、呼ばれた?─
「痛っ…!!」
「おい!大丈夫か!?」
なんでそんなに心配してくれるの?私の事嫌いなんじゃないの?幼馴染だから?…でも、思い返せば昔から何気に困った事があれば助けてくれたのは快人。
それにしても…さっきから快人の事を考えれば考える程、頭痛がする。いや…思い出そうとしてるから?
「快人…」
来ないで、こんなみっともない姿見ないで欲しいという思いと、来てくれて嬉しい思いが入り混じる。
今、一人だったらなんだか壊れちゃいそうだった。頭の中で、記憶が、昔の光景が、走馬灯みたいに移り変わってぐちゃぐちゃしてるの。
怖い。痛い。苦しい。
刹那、ギュっと力強く抱きしめられる。急な出来事に私の顔は余計に赤くなる。
「う、うつっちゃうよ…!」
「そんなのどうでもいい」
「お前をそうしたのは…俺のせいだから」
「どう、いう…?」
そういえば昨日も…─
『お前のせいじゃ…』
って言ってた。私のせいじゃないって事?一体何が?どういう意味なのか、聞かずにはいられない。
快人side
咲が体調不良だと聞いて急いで駆け付けた。高熱、酷い頭痛、それに走馬灯が掛け巡る感覚…。多分、これらの症状からしてあの薬の後遺症だ。あんな強烈な薬なのだから何かしら後遺症があるとは思っていた。咲曰く、記憶が混濁しているらしいから今ここで思い出せれば吉。思い出さなければ…二度と思い出す事は出来ないだろう。
「くる、し…」
と、頭を抱える咲。というより蝕まれているかのように見える。どうにか力になれないのか?いや、俺には咲に思い出させる事しか手伝えない。全ては咲にかかっている。
「咲。相槌とかしなくていいから聞け」
─────
幼稚園入学式
「かわいい!これがせーふく?」
「そうだよ、よく似合ってる」
「ああ、可愛らしい」
咲は手を広げてくるくると母親と父親の周りを回る。すると、ポツンと正門前に立っている男の子を見つける。
「あら、あの子、お隣の家の子じゃない?」
「だぁれ?」
きょとん、と首を傾げる。
「んー…名前は分からないなぁ。一人でいるみたいね。親はどこにいるのかしら」
多分、無意識だったと思う。足が自然に男の子がいる先へ向かっていった。
「あっ、走るなってあれだけ言ったのに…」
「元気でいいじゃないか」
「ねぇねぇ、あなた名前なんて言うの?」
「…誰だよお前」
その子の表情は幼稚園児とは思えない程荒んでいて、痣のようなものも見受けられた。
「私?私は咲だよ!」
「あぁ、隣の…」
そんな彼の反応を他所に話しかける。
「お母さんとお父さんは?来ないの?」
「お母さんはいない。お父さんは仕事」
「そーなんだ…なら、一緒に行こ!」
「え?」
ギュっと手を握り、園内に入っていく。
「わぁ、私と同じせーふくの子いっぱーい!」
「てか、離せよ」
何を感じたのかすかさず手をパッと離す。心底嫌そうに拒否する男の子。
「ひ、ひどいっ…ぐすん…っ」
「は…」
ざわざわと周りが騒ぎ出す。その男の子は初めて子供らしく動揺した姿を見せる。
「わ、悪かった」
謝っても泣きやまないので、ポケットに手を突っ込み、四つ葉のクローバーを出す。
「これ」
差し出すと、一瞬泣きやみ、クローバーを見つめる。
「本当はお守り用で持ってんだけど…やる。だから泣くな」
「ありがとう!」
パアァ、とキラキラ目を輝かせて受け取る咲。
(たかが四つ葉なのに…)
と複雑な感情を隠せない男の子。
「ご入学おめでとうございます─」
─────
「ねぇ!」
全然振り向いてくれない。そういえば名前聞いてなかった。
「俺、もう帰るんだけど…あ」
「初めまして、咲の母です」
「初めまして。佐川快人です。お隣の方だったんですね」
「そうなのよ!こうして会うのは初めてで嬉しいわ~♪」
名前、快人っていうんだ…というよりもさっき私と話してた時との態度のギャップに驚きを隠せなかった。
さっきは凄く暗い表情で怒っている感じだったのに一転して、キラキラ輝いて満面の笑みを浮かべている。これは一体どういう事なのか。大人のような話し方で二人は談笑を始めていて私は立ち尽くす事しか出来なかった。
それからいつの間に仲良くなったのかお母さんが突拍子もない事を言い出す。
「海行きましょ!お気に入りの場所があるの!」
「そうなんですか?そんな所に行ってもいいんでしょうか?」
「勿論よ!」
コソッとお母さんが私に耳打ちをしてくる。
「良い子じゃないの!仲良くなりなさい♡」
「うん!」
これは、初めてのお友達なのかもしれない。
「きれーい!快人くんは?」
「綺麗…だと思う。」
「良かった!」
「お前、さっきから俺に話しかけたりして…なんなんだよ、何がしたい訳」
煩わしい、というように嫌悪感を示す。
「?仲良くなりたいから!私、快人くんと友達になりたいな!はい、コレ!」
コロン、と貝殻を手のひらに沢山乗せる。どれも綺麗なグラデーションがかかっていて見る角度によって様々な色に姿を変わる。
「友…達?」
「うん!」
─────
「…思い出した?」
私の目頭は熱くなってポロポロ涙が零れ落ちていた。
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