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大好きな友達

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『いよいよ気付いのね。』

目の前にやさしそうな若葉色の柔らかな長髪に茶色の瞳をした羊の角のようなものをはやした女性が現れる。

肌は濃く、怖いイメージを持たれることもあるだろう。

それでも、その女性からこぼれ出る優しさが親しみやすさを醸し出している。

『えへへ。今まで気付かなくてごめんなさい。』

『いいや、私から言わなかったのだから仕方がないわ。』

『きっと、あなたは、私の前世の時からいたんですよね?

私の胸の中に。』

『えぇ、そうね。』

『私思い出しましたよ。

前世の小さなころ、あなたは確か泣いていた。

普段私たちに見えない異空間で。

私が眠りについたとき、ある空間で、夢だと思って歩き回ったんです。

そしたら泣いているあなたに出会った。

あなたは自分の性質が悪魔に向かないことに気付いていた。

それを苦しがっていたんだ。

私はとてもつらかった。そうです。とてもつらかったんですよ。

だって、みんなと合わないのがつらいということは痛いほどわかっていたんです。

だから、私は友達になりましょうと言いました。

でも、私とはこれ以降一生会えないことをあなたは分かっていたんです。

だから、無理だと言った。

それでも、頑固な私はずっと言い続けた。

あなたが首を縦に振るまで。

するとあなたが言ったんです。

魂の契約を結ぶのならいいでしょうと。

そして、結んだのです。

友達になれるならと。

他の悪魔だったら確実にアウトでしたね。(笑)

魂の契約とは、自分の死後、悪魔であるあなたに魂を託すことだった。

あの当時は幼くて、意味を本当に理解していたのかは分かりませんが、

私はあなたに託して正解だったと感じています。

その時は遊びまくり、お別れの時間が来ると、あなたは言ったんです。

また遊ぼうね。と。

その時はよくわからずその場を去ってしまいましたが、

また遊べると信じていました。

でも、ベッドから起き上がると夢だったのかなと思い忘れてしまったのです。

本当にごめんなさい。』

『そらあ忘れるさ。起きたらベッドの上だろうしね。

私もなにしてるんだろうと一人で思ったけど。それほどに楽しかったんだよ。あなたといれて。』

『ありがとう。

ここからは私の推察なんですが、あなたはもしかしてあの時の魂の契約から胸の中にいて私を見守ってくれていたんではありませんか?

病気はおろか、風邪などもあの時以降あまりしないようになりましたし。』

『そうだよ。君の推察通り私はずっと見守っていたわ。これからも見守るつもりよ。

そして、私がこの世界へ連れてきたの。

胸の中にいる私の存在であの系譜にしかねじ込めなかったんだけどね。

君と友人として関わってみたかったの。

こちらの世界なら人型としてそちらの世界に顔を出せるし。

でも、急に怖くなった。

私の存在を忘れているのは様子から見て明白だったから。

こんな弱い私を許しておくれ。

あなたに気付いてもらえた喜びを。

私は一生の糧にできる。

私は君のことが大好きだから。

さっきのことも見ていた。

今回のこともどうにかするから。

新たにあなたに.........』

パアアァァァァァッッッッッ

その場が白く光りだす。

『えっなに!?』『もしかして...そんな...まさか。』

ブツブツと悪魔さんがつぶやいている。

そして分かったようだ。

『神様からのプレゼントみたいだよ。』

神様が私たちの関係を祝福してくれたみたいだ。

『まさか。私にこの力を与えて下さるなんて。』

『どうしたの?』

『私は今回違う力を私から分け与えようかと思ったんだけどね。

神様が私たちのことを祝福して完全回復の術が使えるようになったみたいだ。

多分君も...』

『もしかして完全回復ってその名の通り傷ややけども治るの?』

『普通は悪魔には与えられないからね。よくわからないけれど、噂によれば病気でも治るらしいよ。』

『なんかものすごいものもらっちゃったね。』

『これはすごいことなんだ。悪魔に神様が与えて下さるなんて。』

どうやら神様の方が力が強いらしい。

『ねぇねぇ。』

『なに?』

『一生の糧にできるとか言っていたけどちゃんと外の世界に出てきなさいよ?』

『え、う、う...ん。』

泣いている。なんで今生のお別れみたいなことをするのか。

『あっそうだ!ついでに今出てきて一緒に共闘してよ。』

『あ、そ、そうだね。』

目元をぬぐって前を向いてくれる。

『では、向こうで待ってるよ。』

『うん。わかった。声に出して呼んで。私の名前を。私の名前は』

『わかってるよ。『キャロル』でしょ。』

『そうだよ。覚えてくれてたんだね。』

『夢として覚えてただけなんだよね。現実として覚えていられたらよかったんだけど...

じゃあ、向こうで。』

『またね!』
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