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40、ごっこじゃない

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 俺の部屋に入ってきた春姫は、大きく深呼吸をした。

「うん、やっぱり変わってないね」

 春姫は自分のカバンを部屋の隅の置くと、靴下を脱いで、ポーンとベッドにダイブした。

「はぁー、落ち着く……」

「そうなのか……?」

「だってずっと来たかったんだもん」

 脚をバタバタさせながら春姫は言った。

「でも次来るときは、ちゃんと全部言った時だって。そう決めていたから」

「俺は……」

 春姫の横に座り、俺は自分の家の天井を見つめた。

「嫌われたのかと思っていた」

「うん。マリーちゃんから聞いた。ごめんね……そんな辛い思いをさせてたなんて」

「全く、本当だ」

 俺は手を伸ばして、春姫の手の甲に触れた。

「結構辛かった」

「私に会えなかったから?」

「うん、どれだけ好きだったか分かった」

「えへへ」

 照れ臭そうに笑った春姫は、俺の枕に顔を押し付けた。

「じゃあ、結果オーライだね。今、こうやって会えたんだから」

 ぴょんと起き上がった彼女は、座りなおすと、ジッと俺を見つめた。うるんだ瞳がこちらを見る。

 衝動のまま、春姫の唇にキスをする。

「ん……」

 彼女を腕に抱きしめる。その身体から力が抜けていくのが分かる。糸がほどけて、ゆるんでいく。

 思わず手近にあった毛布を取ろうとした俺の手を、春姫が止めた。

「今日はいらない」

「良いのか」

「うん」

 春姫は照れ臭そうにうなずいた。

「ごっこは、もう終わり」 

 俺は彼女の言葉にうなずいた。
 春姫のシャツのボタンに手をかける。彼女は緊張したように、小刻みに呼吸をしていた。下着のホックを外すのに手間取っていると、春姫は恥ずかしそうにうつむいて、言った。

「テッちゃん」

「ん?」

「浮かせれば、取れるよ」

「……外れた」

「……うん」

 しばらく裸で抱き合った。何度かキスを繰り返した。初めて抱く春姫の素肌は、温かくて、白くて、優しい香りがした。

 準備を整えると、俺は改めて、春姫と向き合った。

 俺が上で、春姫が下にいる。

「………痛いか?」

「ううん、まだ大丈夫………」

「………本当?」

「うん、テッちゃん、汗、すごいね」

「春姫も」

「緊張してるから。初めてだし………」

「俺も」

「知ってる」

 春姫はふふと笑って、俺の背中に手を回した。

「背中、おっきいね」

「姫ちゃんは………柔らかい」

「……良いよ。もっと強く」

「良い、のか?」

「早く……繋がりたいから」

 無言でうなずき、力を込める。覆っていた膜が破れて、彼女の温度が流れ込んでくる。 

「………あっ……」

「姫ちゃん……」

「きてる……」

 この日、俺は春姫と一線を超えた。
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