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20、脱ぐ過程がエッチなんです
しおりを挟む「テツ殿」
真夏の海辺に立って、福男は目に涙をいっぱいにためて言った。
「今日は……誠にありがとうございます」
「そんなに改まって感謝されても困る。ただ海に誘っただけだ。俺だけじゃ心細いから」
「いえ、姫殿とマリー殿。二人の水着を拝む日が来ようとは」
福男は涙をぬぐった。
「なんたる慶福。我が人生一片の悔いなしです」
「幸せなのは分かったが、頼むから帰る前に死んでくれるなよ」
ボロボロと涙を流す福男の横で、春姫たちが着替えを終えるのを待つ。
電車で一時間ほど行ったところにある百合ヶ崎海岸は、夏本番ともあって、恐ろしいくらいの人出だった。先に着替え終わった俺と福男はパラソルを立てて、二人が来るのを待っていた。
「お待たせー!」
日陰で体育座りをしていると、猪苗代の声が聞こえた。
振り向くと、水着姿に着替えた猪苗代と春姫がいた……とは言っても上からパーカーを羽織っているので、露出度はやや抑えめだ。
「ごめんね、待った?」
申し訳なさそうに春姫が言った。グレーのパーカーで、長い髪は丸めて結ってある。赤いリボンのついたビキニからは、生脚がすらりと伸びている。
「着替え室、すっごい混んでて」
「いや、俺たちもちょうど来たところだから」
「それにしても、すっごい人だなぁ」
改めて驚いたように猪苗代が言った。
猪苗代は髪をおさげに結っている。黒いビキニとは正反対に、彼女の素肌は真っ白だった。
「良い場所にシート引けたね。海の家から近くて、助かったわ」
「それは福男がやってくれた」
「来栖、ありがとう」
「ふふ、抜かりなく」
福男が誇らしげに言った。よいしょと、シートに座ろうとしたマリーがしまったと言う顔をして言った。
「あ、ロッカーに日焼け止め忘れた」
「私も一緒に行くよ」
「悪いね、春っち。二人ともまたちょっと待ってて」
てくてくと去っていく二人を見送りながら、福男は言葉もなくぼうっとしていた。言葉少なになってしまった福男の肩を、ポンポンと叩く。
「どうした。パーカー羽織ってたから、残念だったか?」
「いえ、むしろ完璧というのですよ。テツ殿」
キラリとメガネを輝かせて、福男は言った。
「パーカーを着ているということは、それを脱ぐところも見られるということです。つまり一度で二度美味しいということですな」
「やっぱり連れて来なければ良かった」
変態を動員してしまったことを反省する。
クラスの陽キャ連中よりかは、紳士的だが、こいつは別の意味で危ない。二人のシルエットを脳内キャプチャして、3Dモデルに変換。美少女フィギュアとして量産するくらいの変態力はある。
でも、俺は福男以外に友達がいない。
「大丈夫です。拙者がいる限り、二人には指一本ふれさせませんよ」
福男がずいっと大きな身体を動かす。
福男の図体はそんじょそこらの高校生には負けないくらい大きい。そして、脱いでみて分かったが、意外と鍛えている。
こいつがいるせいか知らないが、春姫たちに声をかけてくるナンパ男がいないのは、とても良いことだった。
「お待たせー! ついでにコーラ買ってきたよー!」
春姫と猪苗代が缶のコーラを持って、駆け寄ってくる。
「はい、テッちゃんの分」
「お、おぉ。ありがと」
春姫が俺にコーラを渡す。前かがみになった春姫の胸の膨らみが見える。
いくらパーカーを着ているとは言え、普段より肌の露出は大きい。普段は分からない胸の膨らみも、この格好ならその大きさが分かる。
暗がりの中でしか感じたことがないそれは、俺の想像よりもずっと大きかった。
「どうしたの?」
「な、何でもない」
慌ててコーラを口の中に入れる。内側から燃え上がるような熱は、太陽の暑さよりずっと酷だった。
春姫から目をそらし、水平線に目をやる。果たして俺が、今日春姫を前にして平静でいられるかどうか。自信はなかった。
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