上 下
20 / 41

20、脱ぐ過程がエッチなんです

しおりを挟む

「テツ殿」

 真夏の海辺に立って、福男は目に涙をいっぱいにためて言った。

「今日は……誠にありがとうございます」

「そんなに改まって感謝されても困る。ただ海に誘っただけだ。俺だけじゃ心細いから」

「いえ、姫殿とマリー殿。二人の水着を拝む日が来ようとは」

 福男は涙をぬぐった。

「なんたる慶福けいふく。我が人生一片の悔いなしです」

「幸せなのは分かったが、頼むから帰る前に死んでくれるなよ」

 ボロボロと涙を流す福男の横で、春姫たちが着替えを終えるのを待つ。

 電車で一時間ほど行ったところにある百合ヶ崎ゆりがさき海岸は、夏本番ともあって、恐ろしいくらいの人出だった。先に着替え終わった俺と福男はパラソルを立てて、二人が来るのを待っていた。

「お待たせー!」

 日陰で体育座りをしていると、猪苗代の声が聞こえた。

 振り向くと、水着姿に着替えた猪苗代と春姫がいた……とは言っても上からパーカーを羽織はおっているので、露出度はやや抑えめだ。

「ごめんね、待った?」

 申し訳なさそうに春姫が言った。グレーのパーカーで、長い髪は丸めて結ってある。赤いリボンのついたビキニからは、生脚がすらりと伸びている。

「着替え室、すっごい混んでて」

「いや、俺たちもちょうど来たところだから」

「それにしても、すっごい人だなぁ」

 改めて驚いたように猪苗代が言った。

 猪苗代は髪をおさげに結っている。黒いビキニとは正反対に、彼女の素肌は真っ白だった。

「良い場所にシート引けたね。海の家から近くて、助かったわ」

「それは福男がやってくれた」

「来栖、ありがとう」

「ふふ、抜かりなく」

 福男が誇らしげに言った。よいしょと、シートに座ろうとしたマリーがしまったと言う顔をして言った。

「あ、ロッカーに日焼け止め忘れた」

「私も一緒に行くよ」

「悪いね、春っち。二人ともまたちょっと待ってて」

 てくてくと去っていく二人を見送りながら、福男は言葉もなくぼうっとしていた。言葉少なになってしまった福男の肩を、ポンポンと叩く。

「どうした。パーカー羽織ってたから、残念だったか?」

「いえ、むしろ完璧というのですよ。テツ殿」

 キラリとメガネを輝かせて、福男は言った。

「パーカーを着ているということは、それを脱ぐところも見られるということです。つまり一度で二度美味しいということですな」

「やっぱり連れて来なければ良かった」

 変態を動員してしまったことを反省する。
 クラスの陽キャ連中よりかは、紳士的だが、こいつは別の意味で危ない。二人のシルエットを脳内キャプチャして、3Dモデルに変換。美少女フィギュアとして量産するくらいの変態力はある。

 でも、俺は福男以外に友達がいない。

「大丈夫です。拙者がいる限り、二人には指一本ふれさせませんよ」

 福男がずいっと大きな身体を動かす。

 福男の図体はそんじょそこらの高校生には負けないくらい大きい。そして、脱いでみて分かったが、意外と鍛えている。

 こいつがいるせいか知らないが、春姫たちに声をかけてくるナンパ男がいないのは、とても良いことだった。

「お待たせー! ついでにコーラ買ってきたよー!」

 春姫と猪苗代が缶のコーラを持って、駆け寄ってくる。

「はい、テッちゃんの分」

「お、おぉ。ありがと」

 春姫が俺にコーラを渡す。前かがみになった春姫の胸の膨らみが見える。

 いくらパーカーを着ているとは言え、普段より肌の露出は大きい。普段は分からない胸の膨らみも、この格好ならその大きさが分かる。

 暗がりの中でしか感じたことがないそれは、俺の想像よりもずっと大きかった。

「どうしたの?」

「な、何でもない」

 慌ててコーラを口の中に入れる。内側から燃え上がるような熱は、太陽の暑さよりずっと酷だった。

 春姫から目をそらし、水平線に目をやる。果たして俺が、今日春姫を前にして平静でいられるかどうか。自信はなかった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~

下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。  一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。  かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。  芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。  乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。  その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

処理中です...