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41 貧乏な上、落ちぶれて
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リリアージュはポツリと言った。
「だから私と結婚すると貧乏から抜け出せないと思う……。せっかくボロ小屋から抜け出したのに…。アエル、私が言うのなんだけど、もっとお金のある女の人と結婚したほうがいい……」
「それがあなたの希望?……そしてあなたはレオルドと結婚するのか?……貧乏な男は嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……私のせいで落ちぶれていくあなたを見たくない」
「私は貧乏な上、落ちぶれているのか…。ご心配ありがとう…」
アエルはふっと笑った。
「……税金は学校を卒業してから家を出るまでの間、私が払っていたからどのぐらいなのかも知っている。それは払える。あなたの治療費も私がレオルドに返済する……」
アエルは、怪我をしていないリリアージュの右頬に優しく触れた。
「早く医者になれるように努力する…なった後もちゃんと働く……私では駄目か?」
灰色の瞳の奥の青色が、リリアージュを包み込む。
──こんな男に懇願され、駄目と言える女などいるのであろうか?
少なくとも、リリアージュには無理だった。
氷の美女と謳われた三年で培った無表情の裏で、身を引こうとしている一人の理性を大勢の本能達が縛り上げ、楽々と勝利を勝ち取っていた。
そんな無表情のリリアージュの返事を無言で待っていたアエルは、リリアージュの手首にブレスレットが掛かっている事に、ふと気が付く。
「あなたは…他の男のところにいたのに、そのブレスレットをつけていたのか?…面の皮の厚い……」
リリアージュは、公爵邸で何度も外そうと思ったのに、外す事ができなかったブレスレットをアエルに見られ、恥ずかしくなって手で隠す。
「これは…いつもの習慣で……」
「──リリアージュ、以前にも言ったが私はレオルドに嫉妬している。そもそもあなたは、嫉妬にかられた男に抱かれる覚悟はできているのか?」
「…できている」
「軽い…!……あなたは何も分かっていない」
アエルは自分の腰に巻いていたサッシュベルトを取ると、リリアージュをうつぶせにしてリリアージュの両手をベッドの柵に縛り付けた。
「だから私と結婚すると貧乏から抜け出せないと思う……。せっかくボロ小屋から抜け出したのに…。アエル、私が言うのなんだけど、もっとお金のある女の人と結婚したほうがいい……」
「それがあなたの希望?……そしてあなたはレオルドと結婚するのか?……貧乏な男は嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……私のせいで落ちぶれていくあなたを見たくない」
「私は貧乏な上、落ちぶれているのか…。ご心配ありがとう…」
アエルはふっと笑った。
「……税金は学校を卒業してから家を出るまでの間、私が払っていたからどのぐらいなのかも知っている。それは払える。あなたの治療費も私がレオルドに返済する……」
アエルは、怪我をしていないリリアージュの右頬に優しく触れた。
「早く医者になれるように努力する…なった後もちゃんと働く……私では駄目か?」
灰色の瞳の奥の青色が、リリアージュを包み込む。
──こんな男に懇願され、駄目と言える女などいるのであろうか?
少なくとも、リリアージュには無理だった。
氷の美女と謳われた三年で培った無表情の裏で、身を引こうとしている一人の理性を大勢の本能達が縛り上げ、楽々と勝利を勝ち取っていた。
そんな無表情のリリアージュの返事を無言で待っていたアエルは、リリアージュの手首にブレスレットが掛かっている事に、ふと気が付く。
「あなたは…他の男のところにいたのに、そのブレスレットをつけていたのか?…面の皮の厚い……」
リリアージュは、公爵邸で何度も外そうと思ったのに、外す事ができなかったブレスレットをアエルに見られ、恥ずかしくなって手で隠す。
「これは…いつもの習慣で……」
「──リリアージュ、以前にも言ったが私はレオルドに嫉妬している。そもそもあなたは、嫉妬にかられた男に抱かれる覚悟はできているのか?」
「…できている」
「軽い…!……あなたは何も分かっていない」
アエルは自分の腰に巻いていたサッシュベルトを取ると、リリアージュをうつぶせにしてリリアージュの両手をベッドの柵に縛り付けた。
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