25 / 43
25 リリアージュ 近衛騎士になる
しおりを挟む
卒業後の進路は、王宮の近衛騎士になるとリリアージュは決めた。
アエルのように入学試験で全額免除の特待生の資格を取れる自信はなかったが、就職後返金すればいい、奨学生の枠には入っていたから医学部への進学も可能だった。
だが、王宮医になる為には、あと6年勉強しなければならず卒業後もすぐに王宮で働けるわけではなかった。
騎士ならば、卒業と同時に見習い騎士として王宮で働けたので、リリアージュはそちらの道を選んだ。
一刻も早くアエルに借金を返し、養いたかったからだ。
そもそも、王族や貴族の間では騎士の称号に憧れて、爵位の他に騎士の称号を手にする者も多かった。
また、王族や貴族は優遇された為に、危険が多い護衛部隊や戦闘部隊には配属されず王宮の中で働ける事がほとんどだった。
子爵令嬢であるリリアージュも例外ではなかった。
それに、騎士の仕事について説明を聞きに行った際、リリアージュの一際目立つ容姿に目を留めた近衛の採用担当者が、こう言ったのだ。
「近衛は外国の要人の目に付くので、剣の腕もさることながら見目の麗しさも大事だ。この2つの条件を満たしているあなたを優遇する。何なら働く部署も選べる…」
皇女達のいる離宮勤めも可能かと聞くと、大きな行事の時に王宮に顔を出してくれれば離宮勤めでもかまわないと言われた。
万が一、アエルに養われたくないと断られても、側で働けたら幸せだと思った。
しかもアイリス姫を守るついでにアエルの護衛もできるならば、もっと幸せだと。
※※※
リリアージュは近衛騎士として働き始め、1か月と半分が過ぎていた。
皇女達の暮らす離宮やその近辺の巡回などを仕事としていたが、第5皇女であるアイリス姫もアエルも目にする事はなかった。
これといった事件も起こらず、平穏といえば平穏なのだが、本来のアエルと会う…という目的は果たせないままだった。
そもそも、アエルに連絡しようにも手段がない事を登城してから知り、リリアージュは軽く絶望していた。
しかも今日は巡回の途中で侍女達が話しているのが耳に入り、その内容にもリリアージュは打ちのめされていた…。
「第5皇女様の、ご結婚が決まっておめでたい。まだ16歳だけれども王が認可を出して…」
至る所で、そんな話を聞いた。
アエルと最後に会ってから1年以上はたっているから、あの後アイリス姫とアエルの関係がどうなったのかは分からない。
アエルに惹かれ、何とか側に置こうとするところなどアイリス姫の思考は自分と似通っているから、結婚する為にどんな手を使ったのかも容易に想像できた。
アイリス姫は捨て身の技で、アエルとの結婚を取り付けたのだろう……。
ズキンと胸は痛んだが15歳の頃よりは大人になったはずの自分の理性を働かせて何回も自分に言い聞かせた。
結婚した二人を護衛する事もアエルに対して恩返しになるはず……。
嫉妬にまみれた目で二人を見ていたらアイリス姫も嫌だろうから、そこの対策は別途考えて…。
そもそも二人は別邸で暮らすのかもしれない。
そうだった場合、アエルのいない王宮で働く意味とは…。
でも、自分にはアエルに返すべき借金がまだ残っている。
とにかく、お金が貯まって学費をアエルに返し終わるまでは近衛騎士として力一杯働こう……。
そう帰結して、リリアージュはよろよろと自分の寮がある方へ歩いていた。
アエルのように入学試験で全額免除の特待生の資格を取れる自信はなかったが、就職後返金すればいい、奨学生の枠には入っていたから医学部への進学も可能だった。
だが、王宮医になる為には、あと6年勉強しなければならず卒業後もすぐに王宮で働けるわけではなかった。
騎士ならば、卒業と同時に見習い騎士として王宮で働けたので、リリアージュはそちらの道を選んだ。
一刻も早くアエルに借金を返し、養いたかったからだ。
そもそも、王族や貴族の間では騎士の称号に憧れて、爵位の他に騎士の称号を手にする者も多かった。
また、王族や貴族は優遇された為に、危険が多い護衛部隊や戦闘部隊には配属されず王宮の中で働ける事がほとんどだった。
子爵令嬢であるリリアージュも例外ではなかった。
それに、騎士の仕事について説明を聞きに行った際、リリアージュの一際目立つ容姿に目を留めた近衛の採用担当者が、こう言ったのだ。
「近衛は外国の要人の目に付くので、剣の腕もさることながら見目の麗しさも大事だ。この2つの条件を満たしているあなたを優遇する。何なら働く部署も選べる…」
皇女達のいる離宮勤めも可能かと聞くと、大きな行事の時に王宮に顔を出してくれれば離宮勤めでもかまわないと言われた。
万が一、アエルに養われたくないと断られても、側で働けたら幸せだと思った。
しかもアイリス姫を守るついでにアエルの護衛もできるならば、もっと幸せだと。
※※※
リリアージュは近衛騎士として働き始め、1か月と半分が過ぎていた。
皇女達の暮らす離宮やその近辺の巡回などを仕事としていたが、第5皇女であるアイリス姫もアエルも目にする事はなかった。
これといった事件も起こらず、平穏といえば平穏なのだが、本来のアエルと会う…という目的は果たせないままだった。
そもそも、アエルに連絡しようにも手段がない事を登城してから知り、リリアージュは軽く絶望していた。
しかも今日は巡回の途中で侍女達が話しているのが耳に入り、その内容にもリリアージュは打ちのめされていた…。
「第5皇女様の、ご結婚が決まっておめでたい。まだ16歳だけれども王が認可を出して…」
至る所で、そんな話を聞いた。
アエルと最後に会ってから1年以上はたっているから、あの後アイリス姫とアエルの関係がどうなったのかは分からない。
アエルに惹かれ、何とか側に置こうとするところなどアイリス姫の思考は自分と似通っているから、結婚する為にどんな手を使ったのかも容易に想像できた。
アイリス姫は捨て身の技で、アエルとの結婚を取り付けたのだろう……。
ズキンと胸は痛んだが15歳の頃よりは大人になったはずの自分の理性を働かせて何回も自分に言い聞かせた。
結婚した二人を護衛する事もアエルに対して恩返しになるはず……。
嫉妬にまみれた目で二人を見ていたらアイリス姫も嫌だろうから、そこの対策は別途考えて…。
そもそも二人は別邸で暮らすのかもしれない。
そうだった場合、アエルのいない王宮で働く意味とは…。
でも、自分にはアエルに返すべき借金がまだ残っている。
とにかく、お金が貯まって学費をアエルに返し終わるまでは近衛騎士として力一杯働こう……。
そう帰結して、リリアージュはよろよろと自分の寮がある方へ歩いていた。
10
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
女性執事は公爵に一夜の思い出を希う
石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。
けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。
それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。
本編4話、結婚式編10話です。
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
感情が色で見えてしまう伯爵令嬢は、好きな人に女として見られたい。
鯖
恋愛
伯爵令嬢のソフィアは、子供の頃から、自分へ向けられる感情が何故か色で見えてしまう。黄色やオレンジ色、朱色は親愛の色。青色は嫌悪の色。ソフィアが成長し、昔は見えなかった色が見える様になった。
それは、紫色。性的に興味のある時に見える色だ。豊満な身体つきのソフィアを見て、大抵の男性には紫色が見えてしまう。家族以外で親愛の色が見える男性は、兄の友人で、昔から本当の兄の様に慕っているアンドリューだった。
アンドリューのことが、好きだと気づいたソフィアは、アンドリューから女性として見られたいと願う様になる。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる