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13 断腸のリリアージュ

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「…リリアージュ?何を言って…」

寝ぼけた頭をちゃんとさせようとしているのか、頭に手をやりながらアエルは起き上がった。

「──抱かれて分かった。私、あなたを愛していない。ただの憧れを愛と勘違いしていた。だから、もうこの関係を終わりにしたい…」

アエルは言われている事が、理解できないようだった。

「──それは、本当の…気持ち…なのか?」
「…ごめんね、アエル。11歳の時、駄々をこねて道を変えさせてしまった…。でも私、目が覚めたの。これは恋じゃない。ただの思い違い」

その言葉に、ショックを受けた瞳でアエルはリリアージュを見つめた。

「手に入れてやっと気が付いた…。私は手に入りにくいおもちゃを欲しがっていた子どもと同じだった。手に入れてしまえばもう……。あなたは私が幼いのを一番よく知っているでしょう?」
「……」

アエルの瞳の奥が、一瞬鈍い痛みを受けたかの様に揺れた。

窓の外で馬のいななく声が聞こえた。

リリアージュは窓の外を見て言った。

「レオルドが迎えに来た…。私、行くわね。あと、お給料と、私の学費の件、母から聞いた。知らなかったとはいえ申し訳ない…。で、考えたんだけど、レオルドに頼んでみてお金を借りられたら…あなたに少しでもお返ししたいのだけど」

アエルは額にかかっていた黒髪を、くしゃりとかきあげて目を閉じて笑った。

「…あなたは、そのお金を私が喜んで受け取る…と思っているのか?」
「…思ってはいないけれど、お金ってあって邪魔なものではないでしょう?そのお金ですぐに医学部に入り直す…とか…色々使え…」
「──分かった。あなたにとって私は必要なくなった…それは理解した。ただ、本当にお金はいらない。気持ちだけ受け取る。あなたの迷惑になるような事はしない。安心しろ……」

また窓の外で馬がいなないた。

「…外で待たせているのだろう?早く行かないと…」

リリアージュは頷くと、顔にかかっている短くなった髪を邪険にはらって言った。

「髪を売ったお金を、そのまま渡せばよかった…。そしたら、少しでも返せた…。私は…いつもずれている…」

そう言って、美しい顔でにっこりとほほ笑んだ。

そして、部屋を出た。

「愛してる」と心の中で言いながら…。

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