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11 リリアージュの誘惑
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アエルが帰宅したのは深夜だった。
帰宅して、すぐにシャワーを使っている音がした。
リリアージュはアエルの部屋に勝手に入った。
部屋に入ったのは久しぶりだった。
初等部の頃は無邪気に入っていたが、ある時からアエルがいい顔をしなくなったので入るのをやめた。
月明りの中、部屋を見渡すと、今日公爵家でレオルドの部屋を見たせいか一段とみすぼらしく感じる。
壁紙もぼろぼろで、ベッドと机と椅子…。
他には物もなく、自分の部屋よりずっと質素だった。
何で、自分はこんな事にも気が付かず、呑気に子爵令嬢という立場でふんぞり返っていたのだろうか…。
申し訳なさと情けない気持ちで胸が一杯になり、おのずと涙が出てきた。
それを静かに拭ってベッドの中にそっと入る。
アエルの匂いのするベッドの中でやっと安心し、気持ちが落ち着いて来るのを感じた。
いつもリリアージュを守ってくれた匂いだったからだ。
しばらくするとドアが開き、アエルが入って来た。
リリアージュがいるとは気が付いていないアエルは、ため息をついてベッドに腰掛けた。
「今日一日、大変だったの?」
「──リリアージュ?!」
驚いているアエルに、リリアージュはそっと抱きつき、口付けをした。
最初はびっくりしていたアエルだったが、諦めたのか、リリアージュの口付けに応え始める。
唇を離したアエルは、長い髪のつもりでリリアージュの頭を撫でようとして、短い事にはっとする。
そして、その事を忘れたいとでもいうように、またリリアージュに少し乱暴に口付けをする。
いつまでも深いキスをしてこないアエルに、リリアージュは誘うように自分から舌を入れた…。
するとすぐに、リリアージュの唇からアエルは自分の唇を離した。
「……勝手に、この部屋に入るな。それに…今日はしない。まだ傷も癒えてないだろうから…」
「怖いからでしょ?」
リリアージュは、アエルから目を離さないで、すかさず言った。
「15歳の少女に手を出したら犯罪なんですってね。今日、知った」
「……犯罪…かもな。でも怖いからしないのではなく…」
「じゃ、いいじゃない……」
リリアージュはアエルに口付けをし、押し倒した。
そして真剣な紫色の瞳で、アエルの瞳を見つめて言った。
「……お願い。してほしい」
「…何で…誘惑するんだ?……まいったな。こんなの…」
そう言って、上に乗っていたリリアージュを起き上がりながらゆっくりとベッドへ押し倒し、自分が上になる。
リリアージュの首にキスをしながら、アエルは言った。
「本当は、もう少しあなたが大きくなってから、こういう関係になりたかった…」
リリアージュは頷いて言った。
「…襲って、ごめんね」
帰宅して、すぐにシャワーを使っている音がした。
リリアージュはアエルの部屋に勝手に入った。
部屋に入ったのは久しぶりだった。
初等部の頃は無邪気に入っていたが、ある時からアエルがいい顔をしなくなったので入るのをやめた。
月明りの中、部屋を見渡すと、今日公爵家でレオルドの部屋を見たせいか一段とみすぼらしく感じる。
壁紙もぼろぼろで、ベッドと机と椅子…。
他には物もなく、自分の部屋よりずっと質素だった。
何で、自分はこんな事にも気が付かず、呑気に子爵令嬢という立場でふんぞり返っていたのだろうか…。
申し訳なさと情けない気持ちで胸が一杯になり、おのずと涙が出てきた。
それを静かに拭ってベッドの中にそっと入る。
アエルの匂いのするベッドの中でやっと安心し、気持ちが落ち着いて来るのを感じた。
いつもリリアージュを守ってくれた匂いだったからだ。
しばらくするとドアが開き、アエルが入って来た。
リリアージュがいるとは気が付いていないアエルは、ため息をついてベッドに腰掛けた。
「今日一日、大変だったの?」
「──リリアージュ?!」
驚いているアエルに、リリアージュはそっと抱きつき、口付けをした。
最初はびっくりしていたアエルだったが、諦めたのか、リリアージュの口付けに応え始める。
唇を離したアエルは、長い髪のつもりでリリアージュの頭を撫でようとして、短い事にはっとする。
そして、その事を忘れたいとでもいうように、またリリアージュに少し乱暴に口付けをする。
いつまでも深いキスをしてこないアエルに、リリアージュは誘うように自分から舌を入れた…。
するとすぐに、リリアージュの唇からアエルは自分の唇を離した。
「……勝手に、この部屋に入るな。それに…今日はしない。まだ傷も癒えてないだろうから…」
「怖いからでしょ?」
リリアージュは、アエルから目を離さないで、すかさず言った。
「15歳の少女に手を出したら犯罪なんですってね。今日、知った」
「……犯罪…かもな。でも怖いからしないのではなく…」
「じゃ、いいじゃない……」
リリアージュはアエルに口付けをし、押し倒した。
そして真剣な紫色の瞳で、アエルの瞳を見つめて言った。
「……お願い。してほしい」
「…何で…誘惑するんだ?……まいったな。こんなの…」
そう言って、上に乗っていたリリアージュを起き上がりながらゆっくりとベッドへ押し倒し、自分が上になる。
リリアージュの首にキスをしながら、アエルは言った。
「本当は、もう少しあなたが大きくなってから、こういう関係になりたかった…」
リリアージュは頷いて言った。
「…襲って、ごめんね」
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