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7 一人の朝

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朝が来て、気が付くとリリアージュはベッドの上で一人で寝ていた。

リリアージュは、しんとしている部屋を見渡した。

昨日の揉め事の種となったサッシュベルトは机の上に手つかずのまま置いてある。
いないとわかっていて、リリアージュはアエルを呼んだ。

「…アエル?」

するとドアのノックする音が聞こえた。
リリアージュはアエルが来たのだと、はやる心をおさえながらシーツで体を包む。

部屋に入って来たのは執事だった。

「リリアージュ様、アエルが今朝、急に仕事があると言って早くに屋敷を出たので、朝送って行く者がおりません。恐らく、これからはお一人で通学となりますが大丈夫でしょうか?」

そう言われてリリアージュはすぐに理解した。

恋人になったわけでもなく、自分が無理やり抱いてもらっただけなのだから、朝いてくれないのも自分の送迎より仕事を選んだのも当然の事だと。

リリアージュは執事に向かって静かに頷いた。



家計が苦しかったフォンタナー家では、とっくの昔に馬車を手放しており、ごくたまに城に登城する時や、見栄を張る必要がある時だけ馬車を手配していた。

馬車がなくなってしまってからも、歩いて三十分ぐらいの場所にある王都学院校へはいつもアエルが付き添ってくれたので苦でもなかった。

街の中にあるとはいえ、これからは一人で通うのかと思うと少しの不安が心をよぎる。

意を決して歩き始めると、周りに風景がある事に今更ながら驚かされる。
自分は、ほとんどアエルだけを見て歩いていたのだと改めて気が付いた。

いつもは後ろに流していた重かった髪の毛が、今日は肩の上でさらさらと揺れて自分の顔にあたる。
その感覚が新鮮で、リリアージュは思わず軽くなった頭を振ってみた。

すると、一台の馬車がリリアージュの横を通り過ぎた。
かなり豪華で立派な馬車だった。

その中に乗っている、同じ学校の生徒とおぼしき男と目があった。

明るい茶色の髪をしたその男は、緑色の瞳でリリアージュを射抜いた。

そして土けむりをあげて走り去った。
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