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15 キスの研究
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スーリは、クースリューの耳に顔を近づけて言った。
「ねぇ…クースリュー、もうお互いに婚約というものに縛られず、自由に生きてもいいのでは…」
耳元に、スーリの息が触れクースリューは明らかに動揺していた。
「…騙され…ないわ…。ジャナル様が甘く囁く時は裏がある…。そもそも婚姻石を入れてもらったら、お互いの頭の中で会話できるはずですのに、五年前入れられてから、私が問いかけても雑な返答しかいただけなかった。問いかけられた事もない…」
「…その代わり…沢山…キスしましたよね?あなたと…私で……」
そう言ってスーリは誘惑するように、クースリューの顎にそっと手を添える。
そして二人は再び、キスを始めた。
それを見ていたシャルリンテの胸には、鋭い痛みが走った…。
なぜ、二人を見て胸が苦しいのか分からなかった。
ただ、昨夜まで自分にされていたそのキスが、今は他の女のものだと思うと切なかった…。
唇を離したクースリューは、とろんとした顔で言った。
「…ずるいわ…。いつも…ジャナル様は、色々な事…キスでうやむやにして…どうしてそんなに、キスが上手なの…」
「あなたを大人しくさせるのは…キスしか方法がない事に気がついて…それから、色んな女とキスして研究しましたし…」
それを聞いたクースリューの体は、瞬時に発光する。
そして、自分の髪の毛をすばやくスーリの首に巻きつけた。
「あなた、今なんとおっしゃったの…?浮気…していたという事?」
首を髪で絞められながら、苦し気にスーリは言った。
「…口…滑らせてしまったな…なんで…私の周りには…気の強い…女ばかりっ…」
「だいたいね、女装までして三年間も…あんな王女に仕える必要など…なかったじゃない。わたくしを呼べば一瞬で…」
そう言っていて、クースリューはハッと何かに気づき、言葉を詰まらせた。
「…まさか魔力を封印したのは、わたくしをカリストに来させたくなかったから?……あの王女に、危害を加えるとでも思ったの…?それって…」
「違う…クースリュー」
スーリは言葉を遮り、クースリューにその先を言わせなかった。
「…私はシャルリンテ様の事を…愛していない。でも…あなたの事は尊敬しているし…大切に思って…いる…」
シャルリンテは、首を絞められているスーリを見て、ハラハラしていたが、愛していないと再び聞かされ、気分は落ち込んでいった。
クースリューは、ふっと魔力を緩めた。
「お上手だ事…。なら、命だけは、助けてさしあげる。…けど、気を失ってしまって?」
くすりと笑うと、自分の髪の毛を首からヒュッっと抜いた。
その拍子に、意識のないスーリは力なく膝から崩れ落ちる。
それを見て、シャルリンテは思わずスーリの元へ駆け寄った。
急いで助け起こそうとしたが、スーリの意識がなくなっている事にシャルリンテは焦り、動かしていいものかどうかと、逡巡する。
どうしたらいいか分からないシャルリンテは、半泣きになりながら、スーリの呼吸を確認した。
とりあえず、息をしている事が分かったシャルリンテはホッとため息をつく。
シャルリンテは、こんな事をしたクースリューに、ふつふつと怒りが湧くのを抑えられなかった。
キッと、クースリューを見上げると、涙の滲んだ瞳で睨みつける。
「…あなた、酷いわ!気を失うまで、首を絞めるだなんて…!」
クースリューは、鼻先でふんと笑った。
「──本当の事を知っても、あなたそんな事、言えて?」
「?」
「ジャナル様は、綺麗な顔の裏でなかなか酷い事をなさるのよ…?」
「…どういう事?」
「嘘なんですのよ…うっそ!サシュナに入国したとたん、あなた、待ち構えているサシュナ軍に売られましてよ?」
「ねぇ…クースリュー、もうお互いに婚約というものに縛られず、自由に生きてもいいのでは…」
耳元に、スーリの息が触れクースリューは明らかに動揺していた。
「…騙され…ないわ…。ジャナル様が甘く囁く時は裏がある…。そもそも婚姻石を入れてもらったら、お互いの頭の中で会話できるはずですのに、五年前入れられてから、私が問いかけても雑な返答しかいただけなかった。問いかけられた事もない…」
「…その代わり…沢山…キスしましたよね?あなたと…私で……」
そう言ってスーリは誘惑するように、クースリューの顎にそっと手を添える。
そして二人は再び、キスを始めた。
それを見ていたシャルリンテの胸には、鋭い痛みが走った…。
なぜ、二人を見て胸が苦しいのか分からなかった。
ただ、昨夜まで自分にされていたそのキスが、今は他の女のものだと思うと切なかった…。
唇を離したクースリューは、とろんとした顔で言った。
「…ずるいわ…。いつも…ジャナル様は、色々な事…キスでうやむやにして…どうしてそんなに、キスが上手なの…」
「あなたを大人しくさせるのは…キスしか方法がない事に気がついて…それから、色んな女とキスして研究しましたし…」
それを聞いたクースリューの体は、瞬時に発光する。
そして、自分の髪の毛をすばやくスーリの首に巻きつけた。
「あなた、今なんとおっしゃったの…?浮気…していたという事?」
首を髪で絞められながら、苦し気にスーリは言った。
「…口…滑らせてしまったな…なんで…私の周りには…気の強い…女ばかりっ…」
「だいたいね、女装までして三年間も…あんな王女に仕える必要など…なかったじゃない。わたくしを呼べば一瞬で…」
そう言っていて、クースリューはハッと何かに気づき、言葉を詰まらせた。
「…まさか魔力を封印したのは、わたくしをカリストに来させたくなかったから?……あの王女に、危害を加えるとでも思ったの…?それって…」
「違う…クースリュー」
スーリは言葉を遮り、クースリューにその先を言わせなかった。
「…私はシャルリンテ様の事を…愛していない。でも…あなたの事は尊敬しているし…大切に思って…いる…」
シャルリンテは、首を絞められているスーリを見て、ハラハラしていたが、愛していないと再び聞かされ、気分は落ち込んでいった。
クースリューは、ふっと魔力を緩めた。
「お上手だ事…。なら、命だけは、助けてさしあげる。…けど、気を失ってしまって?」
くすりと笑うと、自分の髪の毛を首からヒュッっと抜いた。
その拍子に、意識のないスーリは力なく膝から崩れ落ちる。
それを見て、シャルリンテは思わずスーリの元へ駆け寄った。
急いで助け起こそうとしたが、スーリの意識がなくなっている事にシャルリンテは焦り、動かしていいものかどうかと、逡巡する。
どうしたらいいか分からないシャルリンテは、半泣きになりながら、スーリの呼吸を確認した。
とりあえず、息をしている事が分かったシャルリンテはホッとため息をつく。
シャルリンテは、こんな事をしたクースリューに、ふつふつと怒りが湧くのを抑えられなかった。
キッと、クースリューを見上げると、涙の滲んだ瞳で睨みつける。
「…あなた、酷いわ!気を失うまで、首を絞めるだなんて…!」
クースリューは、鼻先でふんと笑った。
「──本当の事を知っても、あなたそんな事、言えて?」
「?」
「ジャナル様は、綺麗な顔の裏でなかなか酷い事をなさるのよ…?」
「…どういう事?」
「嘘なんですのよ…うっそ!サシュナに入国したとたん、あなた、待ち構えているサシュナ軍に売られましてよ?」
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