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8 王宮からの脱出
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「シャルリンテ様!」
ぼーっとスーリとの過去を回想していたシャルリンテは、スーリの声でハッと現実に戻される。
スーリはシャルリンテの頬を軽くペチリと叩いた。
シャルリンテはびっくりして、スーリの顔を見た。
「たっ…叩いたわね?!むち打ちの刑をくらわしてやる!覚悟なさい!!」
「…何度も覚悟しましたが、あなたは実際にむち打ちの刑を下した事はないし、今はそれどころじゃない。早く逃げますよ?!」
「何でよ?…朝まで凌辱するんでしょ?私の刑は、明日施行されるのが決まっているんだし、魔力は一ミリも残ってないからどうせ逃げ切れない…」
そう言うシャルリンテを無視しながら、スーリは慣れた手つきで上着を羽織らせ、帽子を被せた。
「…おそらく、数時間もしないうちに、あなたは牢屋に入れられ、荒くれ者達にもっと犯された後、火あぶりにされます…。属国のお飾りの新王の意見など、無いに等しいのだから…」
「…だとしても、何でスーリが私と一緒に逃げるの?あなた、残れば?シーセントの残党兵と、この国の軍部が起こした革命ですもの。今や、あなたがこのカリストの新王なのでしょう?あなたに危険はないじゃない」
スーリは、イライラしながらシャルリンテに言った。
「その話は…ここを出た後にでもしましょう。本当に時間がないんです。強い魔力を逃げた先で使うと、場所を特定されてしまうから…これがこの国で使える、最後の瞬間移動です…。全ての力を込めて、一番遠くまで飛ばしますから、私から離れないで…。離れてしまえば、今日が、今生で会える最後の日となってしまう…」
「それって、あなたにとっては最良の日じゃない?私と一緒に逃げようだなんて、死神を連れて歩くような…」
スーリは、この期に及んでも、まだ憎まれ口を叩いているシャルリンテを、有無を言わさず固く抱きしめ、自分のマントに包んだ。
そしてスーリが目を閉じた瞬間、二人は一瞬にして消えた。
消えるのと同時に、新しく宰相になった男が、大勢の衛兵と共に部屋になだれ込んで来た。
誰もいないシャルリンテの部屋を見て、宰相は吐き捨てるように言った。
「…ふざけた真似を!シーセントのクソ王子がっ…!!」
ぼーっとスーリとの過去を回想していたシャルリンテは、スーリの声でハッと現実に戻される。
スーリはシャルリンテの頬を軽くペチリと叩いた。
シャルリンテはびっくりして、スーリの顔を見た。
「たっ…叩いたわね?!むち打ちの刑をくらわしてやる!覚悟なさい!!」
「…何度も覚悟しましたが、あなたは実際にむち打ちの刑を下した事はないし、今はそれどころじゃない。早く逃げますよ?!」
「何でよ?…朝まで凌辱するんでしょ?私の刑は、明日施行されるのが決まっているんだし、魔力は一ミリも残ってないからどうせ逃げ切れない…」
そう言うシャルリンテを無視しながら、スーリは慣れた手つきで上着を羽織らせ、帽子を被せた。
「…おそらく、数時間もしないうちに、あなたは牢屋に入れられ、荒くれ者達にもっと犯された後、火あぶりにされます…。属国のお飾りの新王の意見など、無いに等しいのだから…」
「…だとしても、何でスーリが私と一緒に逃げるの?あなた、残れば?シーセントの残党兵と、この国の軍部が起こした革命ですもの。今や、あなたがこのカリストの新王なのでしょう?あなたに危険はないじゃない」
スーリは、イライラしながらシャルリンテに言った。
「その話は…ここを出た後にでもしましょう。本当に時間がないんです。強い魔力を逃げた先で使うと、場所を特定されてしまうから…これがこの国で使える、最後の瞬間移動です…。全ての力を込めて、一番遠くまで飛ばしますから、私から離れないで…。離れてしまえば、今日が、今生で会える最後の日となってしまう…」
「それって、あなたにとっては最良の日じゃない?私と一緒に逃げようだなんて、死神を連れて歩くような…」
スーリは、この期に及んでも、まだ憎まれ口を叩いているシャルリンテを、有無を言わさず固く抱きしめ、自分のマントに包んだ。
そしてスーリが目を閉じた瞬間、二人は一瞬にして消えた。
消えるのと同時に、新しく宰相になった男が、大勢の衛兵と共に部屋になだれ込んで来た。
誰もいないシャルリンテの部屋を見て、宰相は吐き捨てるように言った。
「…ふざけた真似を!シーセントのクソ王子がっ…!!」
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