上 下
2 / 3

ゴリラ族 ノリオ

しおりを挟む

獣人達が暮らす国ドウブツエーン
大小様々な獣人達が共存しながら暮らしている


タエを保護したノリオはゴリラ族である。
彼らは森の奥で暮らしており、
体は男性が身長170センチ前後、女性は140センチほどで、この世界のヒト族とあまり差異はないが、それは身長に限ってであり、体重に関してはほぼ2倍にあたり、体格には大きな差がある。
ゴリラ族は見た目も中身も脳筋だが、穏やかで争い事を嫌う種族だ


ノリオはゴリラ族の中でも体は大きく逞しい体つきであったが、女性にはモテなかった。
ゴリラ族は頭頂部の突起の盛り上がりが高く、顔が長く大きいほど魅力的だとされているのだが、ノリオは小顔で、頭に突起が無く丸みを帯びているからだ。
18歳までには家庭を持つのが一般的なゴリラ族の中で、ノリオは22歳の今も相手がおらず独り身であった。
子供好きでもあり、家庭を持ちたい気持ちはあるのだが、相手がいないのでは仕方がない。ノリオは一人寂しく暮らしていた。
その孤独な生活を送るノリオにとって、ある日将来を左右する出来事が発生する。



いつもと違う森の奥へと足を進めていると、ふと小さな声が聞こえる

……ウッホ…ウッホサマ…

同族か?

不思議に思い、声のするほうへ歩いてみれば小さな子供が倒れていた
その子供は体に毛がなく、ヒト族のようだ


ヒト族の子供……が一人?
親はどこだ?

森の奥深くにあるこの場所は獣が多く生息している。そんな場所に足を踏み入れるのは獣人の中でも、ごく僅かな者だけだ。
ヒト族の、それも子供が一人でいる場所では決してない。
ヒト族はとてもか弱い種族だ。

ゴリラ族とは違う細い体が震えているのを見て思わず近づくと、子供はギュッと固く目を瞑る

ーー恐がらせたか?

ノリオは子供が落ち着くまで身動きせずに、様子を伺う
子供の服はボロ切れで濡れており、足も裸足同然のような靴だった

しばらくすると、ゆっくりと閉じていた瞼が開き、黒い瞳が現れる。


話しかけると驚いた表情をして、小さな声で答える
 
そのヒト族の言うゴリウッホサマは分からなかったが、この子が迷子だという事は判明した。
とりあえず詳しい話は場所を移動してからしようと告げると、子供はそのまま意識を失ってしまった……


仕方ない、ノリオは子供を抱き抱えーー気づく。
子供が女の子だということに。

ヒト族が顔を見ただけでゴリラ族の性別を区別出来ぬように、ゴリラ族にとっても顔だけでヒト族の性別を見抜くのは難しい。
立っていれば身長なり、服装なりで気づくが、
小さな子供で倒れていれば尚更のこと判別はつかない。
だが獣人はヒト族には無い判別方法がある。
匂いだ。種族は違えど、異性の匂いは甘く香る。
しかも抱えて気づいたが、体が細い分小さく見えたが、身長は成人女性に近いものがある。
もしかして、子供ではない…?

そう気づいたと同時に細い体から伝わる体温と、甘い香りが鼻先をくすぐる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹は奪わない

緑谷めい
恋愛
 妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……  私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。 当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める…… と思っていたのに…!?? 狼獣人×ウサギ獣人。 ※安心のR15仕様。 ----- 主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!

大切だった友達に媚薬を盛ったら、怖いくらい溺愛されています。彼が勧めてくれたお茶からも同じ香りがしていたのは気のせいかな。

下菊みこと
恋愛
媚薬を盛ったらとんでもなく愛されたお話。 マルスリーヌは友人、エルキュールに媚薬を盛る。エルキュールと結婚して、多額の結納金を実家に納めてもらうためだ。けれど肝心のエルキュールは、媚薬を入れた紅茶の香りを嗅いだだけで飲んでないのに媚薬が効いてしまった。マルスリーヌは困惑するも開き直るしかなかった。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...