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食事をしよう

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店内はライトブラウンを基調にした明るい雰囲気で窓が大きく、開放的な空間で居心地がよい。
人気店なだけあって、店は混んでいた。




緊張して、食事がのどを通らない…


なんて事はなく、私は目の前にある美味しい料理を堪能している。


木目調のテーブル席には所狭しと料理が並べられていた。

カプレーゼ、ブルスケッタ、プロシュートの前菜に始まり、窯で焼かれたマルゲリータにボロネーゼ。全てが美味しい。



「富永さんは美味しそうに食べますね」


「えっ?」

わわ、つい夢中になって食べすぎてた!
デブが口いっぱいに食べる姿なんて見たくないよね。一瞬で体が強張り、恐る恐る柴田さんを見る。


「あぁ、違うんです。無理矢理誘ってしまったので心配だったのですが、お口に合ってるようで安心したんです。」


そう言ってワインを口に含み、微笑む姿に目がやられる。
くっ!ワイングラスを持つ姿が似合いすぎる。
イケメンは何をしてもイケメンだな。
いや、イケオジか。


ネイビーのスリーピース・スーツにブラウンのレジメンタルネクタイは落ち着いた色味でとても似合っている。


ちなみに私は黒とグレーのバイカラーワンピース。
腰から切り替えのプリーツは体のラインを縦に見せてくれるので着痩せ効果がある。との商品情報を見てポチッと購入した今一番のお気に入りだ。


待ち合わせ早々に

「とてもお似合いですね。」

フェロモンだだ漏れの凄まじい笑顔で褒められた。
社交辞令だと分かっていても赤くなってしまったのは仕方がない。







そういえば、家族以外の誰かと外で食事をする事が随分久しぶりだなと感じた。

学生時代の友人とは、合コンの人数合わせと引き立て役を断っているうちに誘われなくなり、疎遠になった。

外食は家族と。それが美紀には普通であったし、家族との食事は楽しいので不満などない。
だが、少しの緊張感と気遣いはするが家族以外との食事は美紀にとっては新鮮で、刺激になった。


今度、香織先輩を誘ってみようかな。


ーーー
ーーーーー




「あまりにも美味しくて夢中になってたべてしまいました。」


どれもとても美味しくて、やっとひと段落ついて満足する。


「私も夢中になって食べてたよ。友人に勧められた店なんだけど、お礼を言わないとね。」

 すっかり綺麗に食べ終えた皿を給仕にさげてもらい、二人は食後のドルチェとコーヒーを頼んだ。




「わぁ、これも美味しい。しっとりとして、このほろ苦さが堪らない。」

マスカルポーネチーズとエスプレッソを使って作られるティラミスは格別に美味しい。


「私のパンナコッタも美味しいよ。口当たりがとても良い。」

「柴田さんは甘いものが好きなんですか?」

「うん、私が甘いものが好きだと変かな?」

「そんな事ないです!私の周りの男性で甘いものが好きな人がいないから新鮮で。逆に一緒に美味しいと食べてもらえると嬉しいです!」

父と兄達は甘いものが苦手だからデザートを頼むのは、母と美紀だけだ。

「良かった。富永さんにそう言ってもらえると嬉しいな。イメージ的に合わないと言われるから、実はあまり人に知られないようにしてるんだ。」
 
照れたように笑う柴田に美紀もつられて笑う。

イケオジにデザート。
目でも美味しいではないか!




ドルチェまで終えて、改めて柴田を見る。

楽しかった。
異性と二人きりだというのに、会話に困らず、料理やお酒の注文などスムーズで。
いかに柴田がこういった事に慣れているか分かる。

この内弁慶なデブまでも手のひらで転がすなんて、さすがだなー。
私も変に意識せずに接する事が出来たし…
アレかな、親戚のおじさん的な?いや、お兄さん?
なんてどうでも良い事を考えていたら

「……というのはどうでしょう?」

「えっと、はい?」

「良かった。では、また連絡しますね。実は行きたいお店があったんですが、中々一緒に行ってくれる相手が居なくて。」

はい?
何故か次回も会う約束がされてしまった。

慌てて断わろうと……うん、出来なかった。

イケメンの有無を言わさないスマイル怖い。
反論出来ない。出来るわけがない。






こうして私はイケオジの食べ友をGETしたのである。
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