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お仕置きされるなら、魔王と私、どっちがいい?【ガルシア視点】
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俺のプレートアーマー(身体の鎧)がガタガタと小刻みに音を立てている。
それは、俺が目の前の光景に怯えているからだ。
赤黒く濁らせた瞳を向け魔王覇気をだだ漏れに流してくる陛下、軽蔑するような視線を向けてくるリーナ、そして二人の背後で『ざまあみろ』とでもいうように踏ん反り返っている真白に、俺は恐怖でその場で震えることしかできない。
く、くそぉ………こんなことになるってわかってたら助けたというのに……。
情けないが、思わず泣きべそをかきたくなる。
なんで俺がこんな目にぃ………。
「ガルシア、覚悟はいいな?」
「全ての罪をお嬢様に着せた罪、重いですよ? ガルシア」
戦闘能力でいえば、陛下は物理攻撃、魔法攻撃、素早さの全てにおいてその強さは計り知れない。
側近の俺でさえ、俺は陛下の本気を見たことがない。
本当に……恐ろしい。
メイドのリーナは元々の魔力量が少ないこともあり魔法攻撃よりも物理攻撃や素早さを得意とし、物理攻撃は俺ほどではないが素早さは俺といい勝負だ。
どちらにせよ、陛下が相手という時点で俺はこの場から逃げることもできなければ、対抗することもできない。
俺は、頭に身につけていたバシネット(頭の鎧)を外し、覚悟を決めて陛下を見据えた。
瞬間、陛下の瞳が真っ黒に染まり、俺はその瞳から発せられるとてつもない魔力覇気によって恐怖を植え付けられ、意識を飛ばした。
真っ暗な意識下でふと振り返る。
魔王覇気をダラダラ流す陛下に近づくことは誰だって難しい。
だから、何度同じ状況になっても真白を助けるという行動には至らなかっただろう。
あの陛下が放つ覇気に完全に呑まれれば、失神どころじゃない。
恐怖を植え付けられ、二度と戦場に立てなくなる。
まぁ、俺は側近ということもあって失神だけで済んだわけだが………。
………ってか、あいつスゲーな。
魔王覇気を放つ陛下と距離零だった真白の姿を思い出す。
魔王覇気に直で当てられながらも、意識をたもっていられるとは………。
覇気よりも陛下の怒った形相に怯えているようにも見えた。
魔核も魔力も持たないことが関係してるんだろうか?
そんなことを考えていると、段々と思考が鈍ってきて、黒い波に呑まれ、やがて思考が停止した。
*****
「次、このようなことがあれば定期的にお灸を据えなければなりませんね」
「余が話も聞かずに覇気で追い詰めてしまったのが原因でもある。だが、こいつはたまに卑怯なことをする。戦場においてもその卑怯な戦い方がよく見られる。余の側近としては、ひねくれた性格を少し真っ直ぐに矯正したいものだな」
「ではこれを機に毎日、お灸を据えてはいかがでしょう?」
「それもいいな」
そんな物騒な話し声が聞こえてくる。
目をつぶっていてもそれが誰なのかすぐにわかった。
陛下とリーナだ。
「では、今日から毎日、余の拳でも叩き込んでやろうかな?」
ヒイッ!
陛下、みずから毎日、俺にあの拳が⁉︎
………終わったな。
人生終わった。
俺は死を覚悟した。
「ちょっと待て」
口を開いたのは真白だった。
「どうした?」
「どうしました?」
「魔王の君が毎日なぐったら、ガルシアが死ぬ。だから、その代わりに………」
「私がお灸を据えてやる」
それは、俺が目の前の光景に怯えているからだ。
赤黒く濁らせた瞳を向け魔王覇気をだだ漏れに流してくる陛下、軽蔑するような視線を向けてくるリーナ、そして二人の背後で『ざまあみろ』とでもいうように踏ん反り返っている真白に、俺は恐怖でその場で震えることしかできない。
く、くそぉ………こんなことになるってわかってたら助けたというのに……。
情けないが、思わず泣きべそをかきたくなる。
なんで俺がこんな目にぃ………。
「ガルシア、覚悟はいいな?」
「全ての罪をお嬢様に着せた罪、重いですよ? ガルシア」
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側近の俺でさえ、俺は陛下の本気を見たことがない。
本当に……恐ろしい。
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どちらにせよ、陛下が相手という時点で俺はこの場から逃げることもできなければ、対抗することもできない。
俺は、頭に身につけていたバシネット(頭の鎧)を外し、覚悟を決めて陛下を見据えた。
瞬間、陛下の瞳が真っ黒に染まり、俺はその瞳から発せられるとてつもない魔力覇気によって恐怖を植え付けられ、意識を飛ばした。
真っ暗な意識下でふと振り返る。
魔王覇気をダラダラ流す陛下に近づくことは誰だって難しい。
だから、何度同じ状況になっても真白を助けるという行動には至らなかっただろう。
あの陛下が放つ覇気に完全に呑まれれば、失神どころじゃない。
恐怖を植え付けられ、二度と戦場に立てなくなる。
まぁ、俺は側近ということもあって失神だけで済んだわけだが………。
………ってか、あいつスゲーな。
魔王覇気を放つ陛下と距離零だった真白の姿を思い出す。
魔王覇気に直で当てられながらも、意識をたもっていられるとは………。
覇気よりも陛下の怒った形相に怯えているようにも見えた。
魔核も魔力も持たないことが関係してるんだろうか?
そんなことを考えていると、段々と思考が鈍ってきて、黒い波に呑まれ、やがて思考が停止した。
*****
「次、このようなことがあれば定期的にお灸を据えなければなりませんね」
「余が話も聞かずに覇気で追い詰めてしまったのが原因でもある。だが、こいつはたまに卑怯なことをする。戦場においてもその卑怯な戦い方がよく見られる。余の側近としては、ひねくれた性格を少し真っ直ぐに矯正したいものだな」
「ではこれを機に毎日、お灸を据えてはいかがでしょう?」
「それもいいな」
そんな物騒な話し声が聞こえてくる。
目をつぶっていてもそれが誰なのかすぐにわかった。
陛下とリーナだ。
「では、今日から毎日、余の拳でも叩き込んでやろうかな?」
ヒイッ!
陛下、みずから毎日、俺にあの拳が⁉︎
………終わったな。
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俺は死を覚悟した。
「ちょっと待て」
口を開いたのは真白だった。
「どうした?」
「どうしました?」
「魔王の君が毎日なぐったら、ガルシアが死ぬ。だから、その代わりに………」
「私がお灸を据えてやる」
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