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脳内議論、開始!

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ここは殺人事件騒動の現場となった客間である。

お風呂の後、休むようにとメイドのリーナに連れられ、この部屋へ戻って来たのだった。

客間には人間の少女が一人、それ以外の者は誰もいない。

少女はベッド上で腕を組み、目を閉じていた。

そして、少女の脳内では様々な議論が飛び交っていたのだった。




******



円卓の周りに座る四人の人物。

それらは、彼女と全く同じ顔をしているが、姿や口調は違っている。

「これより、異世界のさまざまな危険に対する対策について議論する。何か案のある者はいないか」

メガネをかけたインテリ系の少女の第一声から始まった。

「対策ねぇ~。力の差がありすぎるのが問題なのよねぇ。結局、人間と魔族では力の差は天と地。どうしよもないんじゃないかしら?」

金髪のギャル系少女が言った。

「「たしかに」」

2人が口を揃えて頷く。

「いいや、そんなことはない!」




ガタン!




大きな音を立てて、一人の少女が立ち上がった。

「力だーーーー! この世は、力こそ全てだ! 魔族を上回るくらいの強靭な肉体をつければよかろう! フンっ!」

と、マッスルポーズをとって自慢のムキムキ筋肉を少女が皆に見せつけた。

「「「………」」」

あまりにも参考にならない意見に皆が無言になった。

空気が読めない奴とはこういう奴のことを言うのだろうと皆は思ったのだった。

「他に意見のある者はいないか?」

マッスル少女をスルーして仕切り直した。

『はいなのです!』と元気よく手を挙げたのは、幼稚園児の格好をした少女だった。

「どうぞ」

「はいです。異世界に転移してから、陛下にいつ殺されるのかわからない、そのうちこのお城から追い出されるかもしれない、そうなったら魔族に食べられるかもしれない、知識も何もないのにどうやってこのさき生きていけばいいのか、もとの世界に帰れるのだろうかという不安は募るばかりなのです。だから、もっと軽く考えてみるのはどうなのですか?」

「軽くとは具体的にはどういうことですか?」

「この異世界を楽しむのです! ここは危険な場所ですが、結局は恐れていては何もできないのです! 危険な場所でも楽しいことを見つければ、きっと不安も吹き飛んで、帰ることを忘れてしまうと思うのです!」

「あなた、帰ることは忘れちゃダメよ……でも、一理あるわね」

「たしかに、不安になってばかりいては行動に移せない。まずはこの生活を楽しみ、行動範囲を広げていくことで帰る方法を探す、ということに繋げていくとよいのではないかな?」

「それはいい考えなのです!」

「そうね! そうしましょう!」

「では、全員一致といことで、異論はないな?」

「「はい!」」

「では、これで議論を終了します。お疲れ様でした」

「「お疲れ様でした!」」

「あ、あの肉体造りは?」

これにて、脳内議論は終了した。



******



結論、

考えてもしょうがないから開き直る。


以上。

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