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【陛下視点】子供を見守る親の気持ちとは、こんな気持ちなのだろうか?
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モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグモグモグモグモグ‥‥‥
人間が前回よりもでかい腹の音をならしたので、また、飯をご馳走してやっている。
しかし‥‥‥よく食べるものだな。
魔族は空気中の魔素をエネルギー源として体内に取り込み、それを食事代わりとしているため、食事は趣味程度に食べるだけである。
よって人間のように空腹を覚えたり、食事をエネルギー源とはしない。
とはいえ、目の前にあるこの光景は異常と言えよう。
目の前には、積み上げられた大量の皿。
人間とは思えぬほどの食欲である。
いや、そもそも人間かどうかも疑わしいような気がしないでもない。
もしや、ドラゴンが人間に化けている?
‥‥‥‥なわけないか。
そもそも、この人間からは、魔力そのものが感じられないのだから。
今回の騒動もそれが原因でもある。
この魔大陸以外の全ての大陸の人間にも魔族にも魔核と呼ばれるものが体内に存在する。
魔核は魔力を放出する役割がある。
魔力は、ある程度鍛錬を積んでいる者であれば、制御が可能である。
しかし、余のように魔力を大量に有している者であれば、相手が制御し魔力を完全に魔核に隠していたとしてもたやすく見破れる。
だからこそ、どんな敵が来ようとも魔力をすぐに感知し、対向できていた。
しかし、今回のケースは違う。
そもそも、この人間には魔核が存在していなければ、魔力も存在していない極めて例外で無力なのである。
「あの、陛下、食べにくいんだが‥‥‥」
人間は顔をやや顰めながら言った。
「気にせず食うがいい」
「陛下と呼ばれる、位の高い人が目の前にいたら、緊張して食事が喉を通らないだろうよ‥‥‥‥」
そう言いながらも一定のペースを保ちながら食事を続けているのだから、笑えてくる。
「食事は喉を通っているように見えるが?」
悪戯っぽくそう返せば、人間は眉間にしわを寄せた。
「例えですよ、例え。とにかく、このペースでは腹は満たされんのよ」
「腹を満たせるほどの食材はおまえが食い尽くせんくらいある。急がず好きなだけ食え」
人間がハッ! とした表情をした。
「豚のようになるまで私を太らせ、最終的に私が食材になるということはないよな?」
にらんでいるつもりなのだろうが、にらみを上手くきかせられないのは、経験値が足りないのだろうか?
‥‥‥ククククク。
実に面白い。
ここまでコロコロと表情が変わるのは面白いものだな。
想像力も豊かだ。
まぁ、子供なのだからそういうものなのだろう。
もっといろんな顔が見てみたくなるな。
「‥‥‥だとしたら、どうする?」
口の端を不気味な程までつり上げてにやりと笑みを浮かべるその顔は、誰が見ても実に不気味であろうと思う。
余の不気味な顔を見て危険を察知したようだ。
感情が全て顔に出るのだからわかりやすい。
人間は、食堂の奥窓まで全力で走った。
顔の前で腕をクロスしその窓に体当たりする。
ガッシャーーーーーーーーーン!
硝子を突き破って人間の姿が視界から消えた。
その後を追って、リーナが素早く人間の襟を掴み引き上げた。
「ぐえッ!」
「大丈夫ですか? お嬢様」
「陛下、人間であるお嬢様に魔力覇気を浴びせて試そうなどとしてはいけませんよ。しかも食事中に‥‥‥‥」
覇気は出さぬように制御していたはずなのに、うっかり出てしまったみたいだ。
まぁ、魔族や勇者相手に放出する魔王覇気と雑魚共相手に放出する魔力覇気を間違えなかっただけでもましか。
「すまん、リーナ。相手を試すには、気が緩んでいるときこそが見極めやすいというものだ」
「‥‥‥‥左様でございますか」
「だが、これで安心できただろう? この人間が敵ではないということがな」
これで、リーナの人間に対する警戒を解くことが出来たわけだ。
人間の面白い反応も見れたことだし、リーナの誤解も解け、一石二鳥というわけだ。
人間に目を移すと、こちらをギロリとにらんでいた。
おぉ、ちょっとは睨みに磨きがかかったようだ。
子供の成長は早いものだな。
ジーーーー。
子供の視線が痛い。
いや、攻撃されたわけではないが痛い。
‥‥‥‥少々、子供相手にやり過ぎたか。
今日は聞き取りできなさそうだ。
だが、この感じはなんなのだろうか?
胸騒ぎのようなざわざわしたような違和感。
ただ一つ確かなことは、この人間は魔核と魔力がない。
そういう意味では無力である。
しかし、先ほど余が魔力覇気を浴びせてしまったときのあの素早い判断と行動力。
普通なら、腰を抜かすか気絶のどちらかなのにあの人間は走った。
あれは、それなりに鍛錬を積んでいる者でないと出来ないことだ。
この食堂は、8階。
飛び降りるのに、それなりの勇気がいることだろう。
無鉄砲は覚悟ではない。
覚悟とは、すぐに出来るものではない。
前もってしておくものである。
あの人間からは、恐怖心は一切読み取れない。
魔核も魔力も感じられないのは、余以上の力を有しているということなのだろうか?
それとも、魔核や魔力以外の何かを持っているのだろうか?
少しは警戒しておくべきかもしれないな。
今までの人間の起こした騒動をふと思い出す。
‥‥‥‥‥前言撤回。
敵ではないな。
余の考えすぎだ。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグモグモグモグモグ‥‥‥
人間が前回よりもでかい腹の音をならしたので、また、飯をご馳走してやっている。
しかし‥‥‥よく食べるものだな。
魔族は空気中の魔素をエネルギー源として体内に取り込み、それを食事代わりとしているため、食事は趣味程度に食べるだけである。
よって人間のように空腹を覚えたり、食事をエネルギー源とはしない。
とはいえ、目の前にあるこの光景は異常と言えよう。
目の前には、積み上げられた大量の皿。
人間とは思えぬほどの食欲である。
いや、そもそも人間かどうかも疑わしいような気がしないでもない。
もしや、ドラゴンが人間に化けている?
‥‥‥‥なわけないか。
そもそも、この人間からは、魔力そのものが感じられないのだから。
今回の騒動もそれが原因でもある。
この魔大陸以外の全ての大陸の人間にも魔族にも魔核と呼ばれるものが体内に存在する。
魔核は魔力を放出する役割がある。
魔力は、ある程度鍛錬を積んでいる者であれば、制御が可能である。
しかし、余のように魔力を大量に有している者であれば、相手が制御し魔力を完全に魔核に隠していたとしてもたやすく見破れる。
だからこそ、どんな敵が来ようとも魔力をすぐに感知し、対向できていた。
しかし、今回のケースは違う。
そもそも、この人間には魔核が存在していなければ、魔力も存在していない極めて例外で無力なのである。
「あの、陛下、食べにくいんだが‥‥‥」
人間は顔をやや顰めながら言った。
「気にせず食うがいい」
「陛下と呼ばれる、位の高い人が目の前にいたら、緊張して食事が喉を通らないだろうよ‥‥‥‥」
そう言いながらも一定のペースを保ちながら食事を続けているのだから、笑えてくる。
「食事は喉を通っているように見えるが?」
悪戯っぽくそう返せば、人間は眉間にしわを寄せた。
「例えですよ、例え。とにかく、このペースでは腹は満たされんのよ」
「腹を満たせるほどの食材はおまえが食い尽くせんくらいある。急がず好きなだけ食え」
人間がハッ! とした表情をした。
「豚のようになるまで私を太らせ、最終的に私が食材になるということはないよな?」
にらんでいるつもりなのだろうが、にらみを上手くきかせられないのは、経験値が足りないのだろうか?
‥‥‥ククククク。
実に面白い。
ここまでコロコロと表情が変わるのは面白いものだな。
想像力も豊かだ。
まぁ、子供なのだからそういうものなのだろう。
もっといろんな顔が見てみたくなるな。
「‥‥‥だとしたら、どうする?」
口の端を不気味な程までつり上げてにやりと笑みを浮かべるその顔は、誰が見ても実に不気味であろうと思う。
余の不気味な顔を見て危険を察知したようだ。
感情が全て顔に出るのだからわかりやすい。
人間は、食堂の奥窓まで全力で走った。
顔の前で腕をクロスしその窓に体当たりする。
ガッシャーーーーーーーーーン!
硝子を突き破って人間の姿が視界から消えた。
その後を追って、リーナが素早く人間の襟を掴み引き上げた。
「ぐえッ!」
「大丈夫ですか? お嬢様」
「陛下、人間であるお嬢様に魔力覇気を浴びせて試そうなどとしてはいけませんよ。しかも食事中に‥‥‥‥」
覇気は出さぬように制御していたはずなのに、うっかり出てしまったみたいだ。
まぁ、魔族や勇者相手に放出する魔王覇気と雑魚共相手に放出する魔力覇気を間違えなかっただけでもましか。
「すまん、リーナ。相手を試すには、気が緩んでいるときこそが見極めやすいというものだ」
「‥‥‥‥左様でございますか」
「だが、これで安心できただろう? この人間が敵ではないということがな」
これで、リーナの人間に対する警戒を解くことが出来たわけだ。
人間の面白い反応も見れたことだし、リーナの誤解も解け、一石二鳥というわけだ。
人間に目を移すと、こちらをギロリとにらんでいた。
おぉ、ちょっとは睨みに磨きがかかったようだ。
子供の成長は早いものだな。
ジーーーー。
子供の視線が痛い。
いや、攻撃されたわけではないが痛い。
‥‥‥‥少々、子供相手にやり過ぎたか。
今日は聞き取りできなさそうだ。
だが、この感じはなんなのだろうか?
胸騒ぎのようなざわざわしたような違和感。
ただ一つ確かなことは、この人間は魔核と魔力がない。
そういう意味では無力である。
しかし、先ほど余が魔力覇気を浴びせてしまったときのあの素早い判断と行動力。
普通なら、腰を抜かすか気絶のどちらかなのにあの人間は走った。
あれは、それなりに鍛錬を積んでいる者でないと出来ないことだ。
この食堂は、8階。
飛び降りるのに、それなりの勇気がいることだろう。
無鉄砲は覚悟ではない。
覚悟とは、すぐに出来るものではない。
前もってしておくものである。
あの人間からは、恐怖心は一切読み取れない。
魔核も魔力も感じられないのは、余以上の力を有しているということなのだろうか?
それとも、魔核や魔力以外の何かを持っているのだろうか?
少しは警戒しておくべきかもしれないな。
今までの人間の起こした騒動をふと思い出す。
‥‥‥‥‥前言撤回。
敵ではないな。
余の考えすぎだ。
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