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第3章 奴隷と暮らすまで

第5話

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 しっかりと入念にケシの実の液体を塗り込み、実を服用する。鏡前で身だしなみを整え、胸に巻いたコルセットが透けないか寝巻きを確認する。

(大丈夫そうだな。まぁ男物だし、それもそうか)

 宿のスリッパを履いてバスルームを出ると、窓側に置かれた一人用のソファに腰掛けながらコーヒーを啜る龍人、ローテーブル前のソファに寝っ転がって足を組む狐人、食事をしていた席に座るエルフ、何故かドア近くに椅子を移動させてそこに座る狼人と鬼人がいた。

(狼人と鬼人は護衛か?)

 奴隷商館にいた時よりも随分と落ち着きが見られる。雰囲気がギスギスしておらず余裕が感じられた。まぁ、龍人と狐人は相変わらずだ。

 水分補給をして、少し休んでから彼らに声をかけた。

「話したいことがある」

 そう言って、皆に椅子に座るよう促す。

「金はあるが、いま持ち家がない。だから明日、不動産に行く。住む上での条件として、何かあるか? 欲しいものとか」

 ついさっき雑貨屋で買ってきたノートとつけペン、ボトルインクを麻袋から取り出し、書く姿勢をとる。

「主治医としては、治療器具とか医学書、薬品、それから治療するための清潔な部屋かな」

(意外とまともな発言)

「我は、身体がでかいのでな、なるべく大きなベッドと、最近の社会情勢が気になるので新聞が欲しい」

(うん、まぁそうだよな)

「自分は……護衛です。鍛錬のため、庭か部屋があると有難いです」

(相変わらず、真面目)

「オレは力が強い。力のコントロールができなくなる時があるから、頑丈で壊れない部屋が欲しい」

(え、鬼人ってそんなに、やばいの……?)

「私は、なるべく静かなところがいいです」

(やはり人間が多いところは怖いか……)


《ノート》
────────────────────────────────

狐人→治療器具、医学書、薬品、清潔な部屋

龍人→大きなベッド、新聞

狼人→鍛錬する場所(庭や部屋)

鬼人→頑丈で壊れない部屋

エルフ→静かな場所にある家

────────────────────────────────

「わかった。王都の外れにある広い土地の家にでもするか。そういえば、この辺で不動産はあったか?」

「さっきの服屋の近くにあったような気が……」

(おぉ……成長したなぁ)

 鬼人とため口で自然と喋ってる。

「ここは王都だからな、店なんていくらでもある。そんなに歩かずとも直ぐ見つかるだろう」

「そうか、聞きたいのはそれだけだ。では今日はゆっくり休むといい」

 私はテーブルに手をついて立ち上がると、ボトルインクの蓋を閉める。そして、テーブル上に広げた文房具を麻袋へしまった。奴隷用の小部屋へ続くドアを半開きにしたところで、ぴたりと動きを止め彼らの方を向く。

「そうそう、急ぎではないので、不動産に行くのは明日の何時になっても構わない。それと、俺が出てくるまで勝手に中には入らないで欲しい。今から少しやることがあるのでな、おやすみ」
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