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第2章 奴隷を買いました。

第17話

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 急ぎ足によって心拍数が上昇し、乱れた呼吸を整え、気合いを入れるようにフードを深く被り直すと『カミュア』へ入った。

「お待ちしておりました」

 恭しく腰を折った蝶ネクタイの男に、私はVIP専用の部屋へ連れて行くように指示し、また奴隷資料を受け取って開くと、奴隷番号を確認する。そして、蝶ネクタイの男に告げた。

「購入する奴隷を決めた。55番、3番、17番、24番、97番……以上だ。97番に伝えてくれ、準備は整った、とな」

「は、ははい!」

 その後、奴隷の確認と契約、代金支払いのため、応接室へ案内され、私はふかふかのソファに背を預けた。目の前に置かれた紅茶の香りが室内に充満し、唾液を分泌させ思わず喉がごくりと鳴るが、一切手はつけない。警戒を緩めるつもりはない。

 ガチャリと応接室のドアが鳴り、ソファに預けていた背中を離して身体を起こす。

 鎖や首輪で拘束された奴隷たちが蝶ネクタイの男と共に応接室へ入ってきた。

「お客様から見て右から3番、17番、24番、55番、97番でございます。どうぞ、ご確認下さい」

「あぁ、問題ない」

「それでは、主従契約についてご説明させて頂きます。
 主従契約とは、奴隷が主人に逆らえないようにするための契約です。この契約を結ぶことで、奴隷は主人を殺すこともまた自殺することもできません。奴隷の命を守るためのものでもあるのです。
 また、奴隷が主人の命令に従わなかった場合、主従契約によって施される命従紋めいじゅうもんに痛みを伴うようになっています。痛みを伴うようになっているのは、自分の主人が誰であるかを自覚してもらうために必要であるからです。命従紋めいじゅうもんによって伴う痛みは命を奪うことはありませんのでご安心下さいませ。
 ここまでで何かご質問等は御座いますでしょうか?」

「いや、大丈夫だ」

「それでは、主従契約書のこちらにサインして下さい」

 契約書に目を通してペンを手に取る。

────────────────────────────────
        主従契約書


1.奴隷は主人に逆らってはならない
2.主人の殺害及び奴隷の自殺は許されない
3.この契約は奴隷と主人を守るためのものである


____この血の所有者は__________を主人とし、奴隷となることをここに誓う。



────────────────────────────────


 言われた通りの場所にサインをした。


────────────────────────────────
        主従契約書


1.奴隷は主人に逆らってはならない
2.主人の殺害及び奴隷の自殺は許されない
3.この契約は奴隷と主人を守るためのものである


____この血の所有者は、レオリオ・ヒーラギを主人とし、奴隷となることをここに誓う。



────────────────────────────────


 そして、『この血の所有者』の前に3番の奴隷の血が一滴垂らされた。
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