上 下
23 / 103
第2章 奴隷を買いました。

第9話

しおりを挟む
「お客様、医学に長けた者は国に重宝され、もし奴隷堕ちした者がいればすぐに買い手がついてしまいます。ですが、未だに買い手のつかない者がひとりだけおります」

 これから私の主治医になる人だ。適当な返事をするわけにはいかない。

 一段と低い声と睨みを利かせて圧力をかける。

「ほぅ、いない、だと?」

「ほほほ本当です! 嘘はついておりません! そもそも奴隷商館に医師がいること自体珍しいのです!」

「ふん、そうか」

 この焦りようを見るに本当なんだろう。

(それなら、しょうがない。居るだけラッキーてことだもんな)

「それでですね、その奴隷、腕はいいようなのですが、少々問題があるといいますか……」

「こちらを見て下さい」と資料を指し示される。


────────────────────
────────────
奴隷番号   97番
種族     狐人
年齢     43歳
性別     男
奴隷種別   犯罪奴隷
奴隷要因   テロリストと共謀
使用用途   医師、調合師
魔力     6,400
スキル    超直感、超嗅覚、超聴覚、超味
       覚、超回避、超速度、危機察
       知、生活魔法、水魔法、毒耐
       性、物理攻撃耐性、麻痺耐性、
       動体視力、解体、イノセント、外見
       変化、能舞
問題行動履歴 従業員に毒を仕込む。
奴隷歴    22年
購入履歴
────────────────────────────────


「テロリスト……従業員に毒、か」

「はい……」

(うわぁ……)

 ひくっと顔が引き攣り、私は視線を明後日の方へ向けた。

 今まで見てきた資料が思っていたよりも悪くなかったから、すっかり油断してたよ……。最後の最後で強烈な奴がくるとは。上手くいかないものだな。

(それよりも気になるのは)

「ここの管理はしっかりしているように見えるが、何故毒を仕込まれた?」

「この奴隷のスキル、イノセントによるもので、このスキルは魅了と同じような効果を発揮するのです。奴隷堕ちする寸前に周囲の者にどうやらイノセントを発動していたようで、毎日少しずつバレぬように毒を運ばせていたのです」

(頭いいな。テロリストと共謀するくらいだし、それもそうか)

 ふぅ、と溜め息を吐く。

(龍人方式でいくか……)
※龍人方式:希望を聞き、少しでも不満を減らして信頼関係を築き、殺害されるリスクを下げる方法のこと

「まぁいい、取り敢えず見せてくれ」

「はい、こちらです」

 蝶ネクタイの男が階段を登る気配はない。どうやら、この奴隷も地下で管理されているようだ。

 そして、龍人の時のように頑丈なハンドル付きのドア前に連れてこられた。

「地下に管理されている理由は、先程の龍人の場合は魔力でしたが、この先の狐人は話術で人を惑わしますので、ご注意下さい」

「あぁ」と返事をすると同時に分厚いドアが開かれ中へ入る。

「こちらが医学に長けた狐人でございます」
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...