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第2章 奴隷を買いました。
第6話
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(まずはこの獣人を護衛にしよう)
資料を見つめて一度頷き見上げれば、見ていた資料の獣人──狼人の彼と視線が交わった。
そこにいたのは、全体的に覆われたアッシュグレーの毛並みで、パールホワイトの顔、ラピスラズリの瞳の人型狼だった。
先程までは彼は下を向いていたから、初めてまともに顔を見た気がする。
(おぉっ、かっこいいな)
素直にそう思ったが、それは小さな子供の男児がロボットを見てかっこいいと言う時のものと似ている。
じっと見ていると、流石に気まずくなってきたのか、彼はそわそわし始めた。なんか、申し訳ないことをした。そして私は視線で何かを追うようにして彼から目を逸らした。
あともう一人の護衛は、同じ種族同士だとバランス的に偏りそうだし、仲間意識を持ってよからぬことを考えだしたりしたら恐い。
私は、蝶ネクタイの男に向き直る。
「護衛の狼人をひとり決めたよ。全体的に種族は被らないようにしたい。護衛で良さそうな者は他にいないか?」
「では、この辺りはいかがでしょうか?」
男はまた資料を捲り、指し示した。
「ふむ……」
(また獣人系か)
他にいないのかと、資料ばかりに向けていた顔を上げて部屋を見渡す。
「あれは……」
(鬼?)
そこには、壁にもたれ胡座をかいて、顔を下に向ける男がそこにいた。近くまで行ってよく目を凝らしてみれば、額から一本角を生やした鬼のような男だった。奥の暗いところにいるから、彼の髪色や顔がどんなかはわからない。
「あちらは鬼人です。扱い云々というよりは、元より好まれにくい種族ですので……ですが、一応護衛向きになっています」
鬼人のページを捲られる。次のページを確認するが、違う種族の資料だった。この商館で鬼人は、どうやらひとりだけのようだ。
────────────────────────────────
奴隷番号 3番
種族 鬼人
年齢 61歳
性別 男
奴隷種別 借金奴隷
奴隷要因 母親に売られる。
使用用途 護衛
魔力 32,000
スキル 超怪力、身体強化、危機察知、生活
魔法、火魔法、闇魔法、アルコール
耐性、物理攻撃耐性、麻痺耐性
問題行動履歴 脱走癖(過去2回)
奴隷歴 48年
購入履歴
────────────────────────────────
「ほぅ」
彼も購入履歴がない。
(親に売られて来たのか)
脱走歴は二回。聞けば、最近はないみたいだ。まぁ、二回くらいなら許容範囲内か。鬼、強そうだし。
「うん、決めた。知識の豊富な者は、どの辺りがいい?」
「エルフはいかがでしょう? 長生きな種族ですので、知識も豊富かと」
(購入履歴のないエルフはっ、と……えぇ⁉︎)
エルフは人気があるのか、ほとんど購入履歴が書かれている。履歴のないエルフをようやく見つけたと、資料を捲る手を止めて思わず固まる。
────────────────────────────────
奴隷番号 17番
種族 エルフ
年齢 101歳
性別 男
奴隷種別 借金奴隷、性奴隷
奴隷要因 両親に売られる。
使用用途 護衛(高位魔術士)、教師、家事、
性処理
魔力 11,300
スキル 料理、超回復、超聴覚、超味覚、超
記憶、占星術、光魔法、土魔法、防
御魔法、生活魔法、魔法攻撃耐性、
精神異常耐性、毒耐性
問題行動履歴 自傷癖(過去12回)
奴隷歴 52年
購入履歴
────────────────────────────────
問題行動履歴に目が留まる。
"自傷"だった。
(あぁ……そういう、なるほど。まぁ、高位の魔法も使えるようだし、彼にしよう)
俯いた彼の手首には、痛々しい切り傷が無数にあった。
(可哀想に……)
長いシャルトルーズイエローの髪が垂れた隙間から、エバーグリーンの瞳が見えた。顔は整っていて、とても綺麗だった。流石はエルフといったところか。
(彼も身内に売られたのか……)
借金奴隷と性奴隷と書いてある。何の借金があったんだろう。借金があって、借金奴隷になったが、性処理用にも使えそうだから性奴隷と書いたのか? 自傷の原因、なんとなく性奴隷のような気がする。
「エルフ以外で、他に知識の豊富な種族は?」
「いない、わけではないのですが……」
隣の男は、言いづらそうに明らかに口ごもる。迷っている。そんな様子だ。
「なんだ、何か問題でもあるのか?」
「龍人なのですが、生まれながらに魔力保有量も多く、力も強い種族ですので、隷属の首輪で縛られていても、主を害する可能性がございます」
資料を見つめて一度頷き見上げれば、見ていた資料の獣人──狼人の彼と視線が交わった。
そこにいたのは、全体的に覆われたアッシュグレーの毛並みで、パールホワイトの顔、ラピスラズリの瞳の人型狼だった。
先程までは彼は下を向いていたから、初めてまともに顔を見た気がする。
(おぉっ、かっこいいな)
素直にそう思ったが、それは小さな子供の男児がロボットを見てかっこいいと言う時のものと似ている。
じっと見ていると、流石に気まずくなってきたのか、彼はそわそわし始めた。なんか、申し訳ないことをした。そして私は視線で何かを追うようにして彼から目を逸らした。
あともう一人の護衛は、同じ種族同士だとバランス的に偏りそうだし、仲間意識を持ってよからぬことを考えだしたりしたら恐い。
私は、蝶ネクタイの男に向き直る。
「護衛の狼人をひとり決めたよ。全体的に種族は被らないようにしたい。護衛で良さそうな者は他にいないか?」
「では、この辺りはいかがでしょうか?」
男はまた資料を捲り、指し示した。
「ふむ……」
(また獣人系か)
他にいないのかと、資料ばかりに向けていた顔を上げて部屋を見渡す。
「あれは……」
(鬼?)
そこには、壁にもたれ胡座をかいて、顔を下に向ける男がそこにいた。近くまで行ってよく目を凝らしてみれば、額から一本角を生やした鬼のような男だった。奥の暗いところにいるから、彼の髪色や顔がどんなかはわからない。
「あちらは鬼人です。扱い云々というよりは、元より好まれにくい種族ですので……ですが、一応護衛向きになっています」
鬼人のページを捲られる。次のページを確認するが、違う種族の資料だった。この商館で鬼人は、どうやらひとりだけのようだ。
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奴隷番号 3番
種族 鬼人
年齢 61歳
性別 男
奴隷種別 借金奴隷
奴隷要因 母親に売られる。
使用用途 護衛
魔力 32,000
スキル 超怪力、身体強化、危機察知、生活
魔法、火魔法、闇魔法、アルコール
耐性、物理攻撃耐性、麻痺耐性
問題行動履歴 脱走癖(過去2回)
奴隷歴 48年
購入履歴
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「ほぅ」
彼も購入履歴がない。
(親に売られて来たのか)
脱走歴は二回。聞けば、最近はないみたいだ。まぁ、二回くらいなら許容範囲内か。鬼、強そうだし。
「うん、決めた。知識の豊富な者は、どの辺りがいい?」
「エルフはいかがでしょう? 長生きな種族ですので、知識も豊富かと」
(購入履歴のないエルフはっ、と……えぇ⁉︎)
エルフは人気があるのか、ほとんど購入履歴が書かれている。履歴のないエルフをようやく見つけたと、資料を捲る手を止めて思わず固まる。
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奴隷番号 17番
種族 エルフ
年齢 101歳
性別 男
奴隷種別 借金奴隷、性奴隷
奴隷要因 両親に売られる。
使用用途 護衛(高位魔術士)、教師、家事、
性処理
魔力 11,300
スキル 料理、超回復、超聴覚、超味覚、超
記憶、占星術、光魔法、土魔法、防
御魔法、生活魔法、魔法攻撃耐性、
精神異常耐性、毒耐性
問題行動履歴 自傷癖(過去12回)
奴隷歴 52年
購入履歴
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問題行動履歴に目が留まる。
"自傷"だった。
(あぁ……そういう、なるほど。まぁ、高位の魔法も使えるようだし、彼にしよう)
俯いた彼の手首には、痛々しい切り傷が無数にあった。
(可哀想に……)
長いシャルトルーズイエローの髪が垂れた隙間から、エバーグリーンの瞳が見えた。顔は整っていて、とても綺麗だった。流石はエルフといったところか。
(彼も身内に売られたのか……)
借金奴隷と性奴隷と書いてある。何の借金があったんだろう。借金があって、借金奴隷になったが、性処理用にも使えそうだから性奴隷と書いたのか? 自傷の原因、なんとなく性奴隷のような気がする。
「エルフ以外で、他に知識の豊富な種族は?」
「いない、わけではないのですが……」
隣の男は、言いづらそうに明らかに口ごもる。迷っている。そんな様子だ。
「なんだ、何か問題でもあるのか?」
「龍人なのですが、生まれながらに魔力保有量も多く、力も強い種族ですので、隷属の首輪で縛られていても、主を害する可能性がございます」
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