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第1章 異世界に◯◯しました。
第1話
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新緑の生い茂る木の葉の隙間から、雲一つない蒼穹が覗き見える。そこを度々、鳥類よりも遥かに巨大なものが数羽、いや数頭通過していった。一目見て、誰しもがそれが何なのかわかるだろう。ドラゴンの類いであると──。
「まいったなぁ~」
左手を腰に当て、もう片方の手で後頭部をぐしゃぐしゃと掻いて仁王立ちし、通過するドラゴンを見上げているのは、少女──柊木隼人 十五歳である。
「まいったなぁ~」と口では言うものの、そう言った隼人の表情といえば、ほんの少し眉を下げるだけで、"一大事"や"生命の危機"といった程のまいったという感じではない。精々"教科書を忘れてまいった"くらいなものである。
隼人の現在の状況をたったの一言で説明するならば、
『突然、異世界へ転移してしまいました』
であろう。
最近の子といえば、若者をターゲットとした小説──通称ラノベを読み漁る傾向にあるようで、ジャンルでは異世界転移もしくは異世界転生ものが非常に人気だ。
異世界転移とは、何らかの要因で今いる現実世界から突然、異なる世界へ来てしまうこと。異世界転生とは、現実世界で事故や他殺等により死亡し、異なる世界へ来てしまうことをいう。
異世界の元となっている舞台は、中世ヨーロッパや北欧神話が多くを占めている。そして、それに加え、RPGすなわち、キャラクターを操作し、仲間づくりや探索、冒険をしたり、スライム等の魔物を剣や魔法で倒すゲームのような世界観になっている。
簡単に言ってしまえば、中世ヨーロッパや北欧神話のようなところで、まるでゲームのように剣と魔法を使って冒険できる世界だ。
であるから、もし本当に異世界転移もしくは転生したならば、無敵に匹敵する能力を使用し、異世界生活を満喫するのが常であるという思考に至るのが一般的である。それは、隼人も例外ではない。
しかし、突如として異世界に来てしまったならば、はじめは誰しもが不安を覚えてもおかしくはない。魔法は使えるのだろうか、チートがあるのか、神の加護は、衣食住は、といった不安がだ。
そんな期待と不安を抱きながら、異世界に来た者たちは唱えるのだ。
"自分の現在の状態を表すデータを表示する"と。大抵の者は、魔力やチートなどが備わっている。しかし、いざ隼人が心の内で念じてステータスを確認してみれば、空中に薄緑のパネルが出現し、そこに白い文字が浮き出た。
────────────────────────────────
名前 柊木隼人
年齢 15歳
性別 女
種族 人間(異世界人)
魔力 使用不可
スキル 使用不可
所持金 ♾(登録収納:麻袋)
装備 簡易軍服(黒)、ローブ(黒)、革
手袋(黒:指先がない手袋)、麻袋、サ
バイバルナイフ、ブーツ(黒)
開示 OFF
────────────────────────────────
「これじゃあ"異世界チート生活"じゃなくて"異世界ニート生活"になってしまうよ。ヒトから働く楽しみとってどうするんだ、神さん……」
チートと呼べるのかはわからないが、似たものはあった。それは一般的なものではなく、"無限に使うことのできるお金"だった。
しかし、金だけで身を守り続けるのは厳しいのが現状である。そして、隼人の目の前にはステータスとは別に、カウントダウンが赤字で表示されていた。
────────────────────────────────
書字自動言語翻訳解除まで
あと残り0日 23:42:54
※種族異世界人により神の慈悲で音声自動言
語翻訳は免除
────────────────────────────────
「……」
隼人はカウントダウン表示を凝視し、何度も何度も繰り返し視線を這わす。
(慈悲……そこはついでに書字も免除するところじゃないのか?)
「嘘だろ。優しいんだか厳しいんだか……」
この世界の神は、異世界人に案外厳しいのかもしれない、と思う隼人であった。
「まいったなぁ~」
左手を腰に当て、もう片方の手で後頭部をぐしゃぐしゃと掻いて仁王立ちし、通過するドラゴンを見上げているのは、少女──柊木隼人 十五歳である。
「まいったなぁ~」と口では言うものの、そう言った隼人の表情といえば、ほんの少し眉を下げるだけで、"一大事"や"生命の危機"といった程のまいったという感じではない。精々"教科書を忘れてまいった"くらいなものである。
隼人の現在の状況をたったの一言で説明するならば、
『突然、異世界へ転移してしまいました』
であろう。
最近の子といえば、若者をターゲットとした小説──通称ラノベを読み漁る傾向にあるようで、ジャンルでは異世界転移もしくは異世界転生ものが非常に人気だ。
異世界転移とは、何らかの要因で今いる現実世界から突然、異なる世界へ来てしまうこと。異世界転生とは、現実世界で事故や他殺等により死亡し、異なる世界へ来てしまうことをいう。
異世界の元となっている舞台は、中世ヨーロッパや北欧神話が多くを占めている。そして、それに加え、RPGすなわち、キャラクターを操作し、仲間づくりや探索、冒険をしたり、スライム等の魔物を剣や魔法で倒すゲームのような世界観になっている。
簡単に言ってしまえば、中世ヨーロッパや北欧神話のようなところで、まるでゲームのように剣と魔法を使って冒険できる世界だ。
であるから、もし本当に異世界転移もしくは転生したならば、無敵に匹敵する能力を使用し、異世界生活を満喫するのが常であるという思考に至るのが一般的である。それは、隼人も例外ではない。
しかし、突如として異世界に来てしまったならば、はじめは誰しもが不安を覚えてもおかしくはない。魔法は使えるのだろうか、チートがあるのか、神の加護は、衣食住は、といった不安がだ。
そんな期待と不安を抱きながら、異世界に来た者たちは唱えるのだ。
"自分の現在の状態を表すデータを表示する"と。大抵の者は、魔力やチートなどが備わっている。しかし、いざ隼人が心の内で念じてステータスを確認してみれば、空中に薄緑のパネルが出現し、そこに白い文字が浮き出た。
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名前 柊木隼人
年齢 15歳
性別 女
種族 人間(異世界人)
魔力 使用不可
スキル 使用不可
所持金 ♾(登録収納:麻袋)
装備 簡易軍服(黒)、ローブ(黒)、革
手袋(黒:指先がない手袋)、麻袋、サ
バイバルナイフ、ブーツ(黒)
開示 OFF
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「これじゃあ"異世界チート生活"じゃなくて"異世界ニート生活"になってしまうよ。ヒトから働く楽しみとってどうするんだ、神さん……」
チートと呼べるのかはわからないが、似たものはあった。それは一般的なものではなく、"無限に使うことのできるお金"だった。
しかし、金だけで身を守り続けるのは厳しいのが現状である。そして、隼人の目の前にはステータスとは別に、カウントダウンが赤字で表示されていた。
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書字自動言語翻訳解除まで
あと残り0日 23:42:54
※種族異世界人により神の慈悲で音声自動言
語翻訳は免除
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「……」
隼人はカウントダウン表示を凝視し、何度も何度も繰り返し視線を這わす。
(慈悲……そこはついでに書字も免除するところじゃないのか?)
「嘘だろ。優しいんだか厳しいんだか……」
この世界の神は、異世界人に案外厳しいのかもしれない、と思う隼人であった。
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