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物語の欠片
バニラとラムネとストロベリー(バニスト)※百合表現あり
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少女は緊張した様子でインターホンを鳴らす。
「奏、いる?」
「清香…」
「階段から落ちたって聞いたけど、怪我の具合はどう?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「…キッチン借りていい?」
「どうぞ」
清香が手際よく夕飯を作る様子を見ながら、奏はやわやわ微笑んで彼女に話しかける。
「今年も祭りの時期だね。どうしようか」
「奏はどうしたい?」
「僕は、清香がいてくれるならどこでもいいよ」
毎年当たり前のように行っているものの、前回行ったとき清香は男たちに絡まれた。
それをどれだけ不快に思っていたか、奏はよく知っている。
だから、それ以外の答えを持ち合わせていなかった。
「分かった。それなら、今年はここで花火大会をしよう」
「ここで?」
「たしか、ベランダで花火してもいいんだよね?」
「一応そう聞いてるけど…」
「なら決まり。明後日、また来るね」
清香はにっこり笑ってそのまま帰路につく。
そんな彼女を、奏は不安げに見送った。
そして、約束の日。
「お邪魔します」
この日は合鍵を使って清香が入ってきた。
だが、そこに奏の姿はない。
「奏…?」
名前を呼んでも出てこない。
もしかすると、何かトラブルに巻きこまれているのかもしれない…不安になっていると、後ろから肩をたたかれる。
恐る恐るふりかえると、奏が手をふりながら立っていた。
「ごめん。びっくりした?」
「何か事件があったのかと思った…。足の具合はどう?」
「もうだいぶよくなったよ。流石に走るのは止められてるけどね。
それよりその袋、花火が入っているにしては大きい気がするんだけど…」
奏が尋ねると、清香は楽しそうに笑った。
「実は、まだ人が集まっていないうちにラムネを買ってきたんだ」
「去年買えなかったやつ…もしかして、僕のために?」
「たまたまお店を見つけたから、買ってこられただけだよ」
清香はそう話しながらベランダに出る。
その場所の光景を目にした彼女は驚いた。
「もしかして、これを用意してくれていたの?」
「折角なら、まつりの花火も見られるといいなって思ったんだけど…。余計なことしちゃったかな?」
「そんなことない。だけど、これ組み立てるの大変だったでしょ?」
そこには立派なベンチが置かれていて、他にも折りたたみ式のテーブルがあった。
そのうえ、料理まで並んでいる。
「これ、全部ひとりで用意してくれたの?」
「せめて僕にできることをやろうと思って…。清香が好きなホットケーキもあるよ」
「すごい…。私もお弁当持ってきたけど、余計なこと、だったかも」
その言葉に、奏は慌てて首を横にふる。
「清香の作る料理はなんでも美味しいから、ないと困る」
「…ありかとう。そんなふうに言ってくれるの、奏だけだよ」
どちらからともなく距離が近づいた瞬間、どん、と大きな音が鳴る。
「丁度時間になったみたいだね」
「うん」
「清香が買ってきてくれた花火、打ち上げ花火を見てからにしようか」
「…うん」
それぞれが作った色とりどりの料理と、夜空に大輪の花が咲くのを見るにはうってつけの場所。
最後の花が咲くと同時に、やんわり口づける。
そんなふたりの手はずっと繋がれたままだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は炭酸が苦手で飲めないのですが、時々ラムネを買って30分程かけて飲むことがあります…。
なんとなく夏っぽいイメージが強いので、今回は花火も絡めてそういう話にしてみました。
「奏、いる?」
「清香…」
「階段から落ちたって聞いたけど、怪我の具合はどう?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「…キッチン借りていい?」
「どうぞ」
清香が手際よく夕飯を作る様子を見ながら、奏はやわやわ微笑んで彼女に話しかける。
「今年も祭りの時期だね。どうしようか」
「奏はどうしたい?」
「僕は、清香がいてくれるならどこでもいいよ」
毎年当たり前のように行っているものの、前回行ったとき清香は男たちに絡まれた。
それをどれだけ不快に思っていたか、奏はよく知っている。
だから、それ以外の答えを持ち合わせていなかった。
「分かった。それなら、今年はここで花火大会をしよう」
「ここで?」
「たしか、ベランダで花火してもいいんだよね?」
「一応そう聞いてるけど…」
「なら決まり。明後日、また来るね」
清香はにっこり笑ってそのまま帰路につく。
そんな彼女を、奏は不安げに見送った。
そして、約束の日。
「お邪魔します」
この日は合鍵を使って清香が入ってきた。
だが、そこに奏の姿はない。
「奏…?」
名前を呼んでも出てこない。
もしかすると、何かトラブルに巻きこまれているのかもしれない…不安になっていると、後ろから肩をたたかれる。
恐る恐るふりかえると、奏が手をふりながら立っていた。
「ごめん。びっくりした?」
「何か事件があったのかと思った…。足の具合はどう?」
「もうだいぶよくなったよ。流石に走るのは止められてるけどね。
それよりその袋、花火が入っているにしては大きい気がするんだけど…」
奏が尋ねると、清香は楽しそうに笑った。
「実は、まだ人が集まっていないうちにラムネを買ってきたんだ」
「去年買えなかったやつ…もしかして、僕のために?」
「たまたまお店を見つけたから、買ってこられただけだよ」
清香はそう話しながらベランダに出る。
その場所の光景を目にした彼女は驚いた。
「もしかして、これを用意してくれていたの?」
「折角なら、まつりの花火も見られるといいなって思ったんだけど…。余計なことしちゃったかな?」
「そんなことない。だけど、これ組み立てるの大変だったでしょ?」
そこには立派なベンチが置かれていて、他にも折りたたみ式のテーブルがあった。
そのうえ、料理まで並んでいる。
「これ、全部ひとりで用意してくれたの?」
「せめて僕にできることをやろうと思って…。清香が好きなホットケーキもあるよ」
「すごい…。私もお弁当持ってきたけど、余計なこと、だったかも」
その言葉に、奏は慌てて首を横にふる。
「清香の作る料理はなんでも美味しいから、ないと困る」
「…ありかとう。そんなふうに言ってくれるの、奏だけだよ」
どちらからともなく距離が近づいた瞬間、どん、と大きな音が鳴る。
「丁度時間になったみたいだね」
「うん」
「清香が買ってきてくれた花火、打ち上げ花火を見てからにしようか」
「…うん」
それぞれが作った色とりどりの料理と、夜空に大輪の花が咲くのを見るにはうってつけの場所。
最後の花が咲くと同時に、やんわり口づける。
そんなふたりの手はずっと繋がれたままだった。
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私は炭酸が苦手で飲めないのですが、時々ラムネを買って30分程かけて飲むことがあります…。
なんとなく夏っぽいイメージが強いので、今回は花火も絡めてそういう話にしてみました。
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