物置小屋

１人向け・慰め系

雪に溶ける(喋る雪だるまの秘密)

…今日はなんだか疲れた顔をしているね。僕を作ってくれた日みたいだ。
また辛いことがあったのかな？…ひとりが怖いの？
だったら僕も一緒に行こうか…なんて、それができたらやってた。
ずっと側にいられなくてごめんね。だけど、僕の体はもうすぐ崩れる。
寒いはずなのに、君がいてくれたからいつも温かかったんだ。
ぽかぽかして、動けない僕でもいいなら君に寄り添いたいって思った。
毎日会いにきてくれてありがとう。…君を悲しませるつもりじゃなかったんだ。
だけど、ぐちゃぐちゃに溶けても毎日僕のところに来てくれてありがとう。
君がいなくなって寂しいと思ってくれるなら、僕という存在にも意味があったのかもしれない。
ただの雪だるまに何が分かるんだって思われるかもしれないけど、僕のお願いを聞いてほしいんだ。
止まったっていい。頑張らなくていい。
だから、君がやりたいように生きてほしい。
君の生きる道は君だけのもので、誰かの為にあるものじゃない。
この世界は決して優しくないけど、それでも世界と関わるのを諦めないでほしいんだ。
僕は君と話ができて楽しかった。君の言葉には沢山の優しさや思いやりがつまってる。
…だからきっと、寂しくなくなる日がくるよ。少なくとも、僕はそう信じてる。
これでお別れだけど、苦しくなったときはこんな雪だるまがいたって時々思い出してほしい。
…我儘かな？約束、か…ありがとう。最後にいい思い出ができた。
なんだか眠くなってきちゃった。そろそろ帰らないと風邪を引くよ。
それじゃあ、おやすみ。

……ありがとう、雪だるまさん。上手く演技できたかな？
あの日、たまたま君を作っている彼女を見て、相当追い詰められてるなって思ったんだ。
だけど、直接話す勇気がないから君の力を借りた。
この木に隠れているのに気づかないくらい、君に夢中だったね。
…先のことは分からないけど、彼女に幸福が訪れますように。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
話していたのは、雪だるま…ではなく、雪だるまのふりをした少年でした。
この先ふたりが関わる機会があるのかないのか、それは本人たちのみぞ知る話です。