物置小屋

１人向け・看病系

こんな僕にできること(物念シリーズです)

ねえ、なんだか顔色が悪いみたいだね。あの人たちに怒られたから、かな…。
がらくたなんて酷い言い方するよね。
人が大切に思っているものをそんなふうに言うなんて信じられない。
いきなり君が大切にしている世界を壊そうとするなんて、とんでもない人たちもいたもんだ。
ごめんね、何もできなくて…。こういうとき、僕は無力だ。
看病することもできず、ただ側にいるだけ…もっと役に立ちたいのに。
他のみんなもきっとそう思ってるよ。
今夜は僕が隣にいる番だけど、他の人たちもきっと心配してる。
どうしたの、いきなり抱きしめてきて…。
君にぎゅってされると、なんだかちょっとざわざわする。
こういうのを、どきどきするって言うのかな。
あんな理不尽な人たちと戦って、君はすごいね。僕だったらきっと逃げ出してると思う。
僕、そんなにもふもふ？君が笑ってくれるならそれでいいけど…。
ほら、無理しないで毛布をちゃんと被っておいて。
そうじゃないと、今度は熱が出ちゃうかもしれないよ？
…もし僕が人だったら、もっと君に寂しい思いをさせずにすんだのかな。
ただのぬいぐるみにできることなんて限られてる。
だけど僕は、あの日のことを忘れたことはない。売れ残っている僕と目が合った瞬間、こっちに駆け寄ってきてくれたよね。
それからすぐ一緒に帰ろうって連れて帰ってくれたことが嬉しかったんだ。
君は君が望む世界を作れているみたいだし、その一員になれたことが嬉しい。
そろそろ寝たかな…え？まさか、ありがとうなんて言ってもらえるとは思ってなかった。
何もできないと思っていたけど、僕なんかでも一緒にいることはできる。
辛いことを全部僕が引き受けられたらいいのに…。
今は少しでも休んで、体調を戻すのが先。
君が人と関わりたくないならそれでもいいと思う。沢山のことを頑張っているのも、人と関わらなくなった理由も知ってるから。
だけど、辛いときはもっと辛いって言っていいんだよ。
僕たち相手になら話せるでしょ？そうすれば、君の心は今より寂しくなくなるよ。
感情ってあんまりよく分かってないけど、それだけは言える。
君が怖いと思うもの全部を払いのけることはできなくても、こうやって一緒にいることはできる。
これからも僕たちと出掛けたり、具合が悪いときはこんなふうに布団で休もうね。
少なくとも、僕にとっては君と一緒にいられることが幸せだから。
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自作小説『クラシオン』に登場したお客様のぬいぐるみのうち、くまのテディさん視点で綴ってみました。
物念シリーズ、結構好きかもしれません。