物置小屋

１人向け・看病系

伝わるとき(失声症の恋人)

ただいま。...あれ、なんだか元気ないね。
もしかして具合が悪いとか...え、その手どうしたの!?
あ...ごめん。一気に話しすぎたね。
ゆっくりでいいから、何があったのか教えてくれる？
『ぼんやりしていたら手に熱湯をかけた』って...怪我をしたのはどれくらい前？
ちゃんと冷やしたなら痕は残らないだろうけど、俺に処置させて。
そんなに上手じゃないけど、自分の手に包帯を巻いたりガーゼをあてるのって難しいでしょ？...こっちに座って。
他は怪我してない？それならいいけど...書くとき痛くない？
『ちょっと痛いけど、話ができないのは嫌』...君らしいね。
手、ちょっと触るよ...はい、終わり。
そんなに吃驚した顔しなくても、こういうことに慣れてるだけだから。
夕飯、わざわざ作ってくれたの？火傷した手で作るの、大変だったでしょ？...ありがとう。
すごい手間をかけて作ってくれたのは、見ればちゃんと分かる。
いつも任せっきりで本当にごめん。
...どうしたの？『まだつけあわせが完成してない』？...それなら俺が作るよ。
そんなに慌てなくても大丈夫だから、そのまま座ってて。
駄目だよ、これ以上君に負担をかけたくない。
それに、俺だって休日以外もこうやって料理とかしたいし...。
何か食べたいものはある？
そんなに慌てなくても、ゆっくりでいいから。
ペンを落とさないように気をつけてね。
...『水餃子のスープを作りかけてる』？ああ、もしかしてこの鍋？
本当だ、気づかなかった...。
それじゃあこれを完成させるね。

できたよ...あれ、寝てる？
疲れてたのかな。ペンを固く握りしめたまま寝るって、本当に可愛い。
どうしよう、もうちょっとしてから起こそうかな。

...あ、起きた？そんなに頭を下げなくても大丈夫だよ。
スープもできたし、ご飯食べよう。
そんなに沢山『ごめん』なんて言わなくていいから...。
当たってた？よし、最近また読唇の腕があがった気がする。
君の言葉が沢山分かるのはすごく嬉しい。
気持ちが分かったときは、もっと嬉しい。
ちょっと待ってて。少しだけ温めなおして...これでよし。
いただきます。...うん、やっぱり君が作ったものは美味しいね。
そんなに照れなくても、本当のことしか言ってないのに...可愛い。
そういえば、実は明日仕事が休みなんだ。
だから、もしよかったら一緒にお菓子を作らない？
パンケーキなら失敗しづらいだろうし、割りと簡単にできると思うんだけど...。
『生クリームがない』？そうだと思って帰りに買ってきたよ。
君の笑顔が見られてよかった。
もう明日が楽しみになっちゃった。...冷めないうちに食べちゃおう。
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このカップルで綴るのは久しぶりなような気がします。