物置小屋

１人向け・慰め系

マリオネットからの卒業(元・執事の彼)

ありがとうございました。もしお困り事があれば、また相談にいらしてください。
...久しぶりのネット相談からはじめる弁護士生活にも、少しずつなれてきたな。
それにしても、今日は帰りが遅くなっちゃった...。
ひとりでいると悪夢を見るって言ってたけど、大丈夫かな。


まだ灯りがついているということは、もしかして起きて待っている？
...急がないと。

ただいま戻りました。...お嬢様、今何時かお分かりですか？
ごめん、少しからかうつもりだっただけなんだけど...やっぱり、お嬢様って呼ばれるとあの家のことを思い出すの？
それならできるだけ控えるようにする。
もしかしたら癖が抜けずに無意識で言ってしまうこともあるかもしれないけど、そのときは許してね。
ところで、今夜もご飯を作って待っててくれたの？
嘘を吐いてもすぐ分かるよ。...持っている本は逆さまだし、カフェエプロンの畳み方が俺と違う。
眠れなかったからっていうのもあるんだろうけど、俺が帰ってくるのを待っていてくれたのも半分くらいは起きていた理由でしょ？
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに...可愛い。
でも...ご飯、ちゃんと食べないと駄目だよ。
君は俺が仕事で帰れないとき、あんまり食べてないでしょ？
今夜のご飯も食べてないんじゃない？やっぱりか。
料理を人の為に作れるのはすごいことだけど、それで君が倒れてしまっては意味がない。
これからは、誰かの為だけじゃなくて自分の為にも作って。
癖？...あの人たちの前では許されなかったせいか。
ふたりで逃げてまだ3ヶ月くらいしか経っていないし、癖づいたものがなかなか抜けてくれないのは分かる。
俺も、あの家での執事生活の癖が抜けてないから。
君のことをお嬢様って呼んでしまうところとか、食器の配置とか...奥様から書類を預かったときに使っていた暗号を話しそうになったりもする。
...君が受けてきた嫌がらせの内容も、それによってできた傷の場所も全部覚えてる。
だけど、もう使用人みたいお辞儀をしたり、何も悪いことをしていないのに謝る必要なんてないんだ。
...ご飯を食べないのは、他の人が食べ終わってからじゃないと食べてはいけなかったから。
欲しいものがあってもなかなか話してくれないのは、安心して素直な気持ちを言える場所がなかったから。
...俺とこっそり会っているときでさえ、お互い気を抜いてなかった。
だけど、ここにあの人たちは絶対に来ないし、君はもうあの人たちの操り人形なんかじゃない。
どこへでも行けるし、自由に振る舞っていいんだよ。
ごめん、本当はもっと上手く言えればよかったんだけど...嬉しい？
俺は当たり前のことしか言ってないのに...。
大丈夫だよ。ここでは好きなだけ泣いていいんだ。
顔を見られたくないなら、泣き止むまでこうやってずっと抱きしめているから...。

落ち着いた？それならよかった。
ご飯の前に先に包帯を換えようか。...どうして俯いているの？
このくらいで迷惑だなんて思わないよ。それに、久しぶりに素直な君が見られて寧ろ嬉しかった。
そこで座って待ってて。包帯を換え終わったら、一緒にご飯を食べよう。
それからゆっくり過ごして、夜は隣で寝る。
そうすれば悪夢を追い払えるかもしれないし、俺がそうしたいから。
...嫌？それなら決まり。処置はこれで終わったから、作ってくれたおかずを温め直すね。
こうしていると、やっぱり普通の恋人同士でいられるのが幸せだなって思う。
...これから先も、ふたりでこうして過ごしていこう。
楽しい思い出も沢山作ろうね。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
もう何にも縛られない、そんな状況があったなら...ということで綴ってみました。
幸せそうなところが羨ましい、なんて思ってしまいます。