物置小屋

黒蝶

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1人向け・慰め系

寂しい夜には-泣けないver.-(泣けない、泣かない。シリーズです)

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...もしもし?ごめん、誰からか見ずに出たからちょっとだけビックリした。
僕はまだ寝てなかったからいいけど...君は眠くないの?
それならいいけど、あんまり夜ふかしはお肌によくないよ...っていうのは建前。
本当は、こうやって君と話せるのはすごく嬉しい。
でも、眠くなったらすぐ言うこと。約束だよ。
今日は何をして過ごした?え、僕?僕は本を読んでた。
それから溜まりがちな洗濯物を干して、部屋の掃除をして...夕飯は弟が食べに来ていたから、いつもよりはりきって作ったよ。
それ以外は、ほとんど変わったことはしてないな...。
君が面白そうって言ってた本、読み終わったから明日貸すね。
ところで、君は何をして過ごしたの?
そっか、家のことを頑張ったんだね。
でも、それだけじゃないでしょ?...何か悲しいことがあったって顔をしてる。
ビデオ通話って便利だね。
表情が見えなかったら、君のなんでもないっていう言葉を信じて何も気づかなかったかもしれない。
でも、今はこうしてどんな様子か確認できるから...何があったのか、話してくれないかな?
それ、お気に入りだって言ってたノートだよね?
どうしてそんな落書きだらけに...というより、いつやられたのかな。
鞄は基本的に肌身離さず持ってるでしょ?
それなのに心ない言葉と行為で傷つけられることになるなんて...酷い。
今必死に笑ってるけど、泣きたいのを隠してるでしょ?
それとも、前みたいに泣けなくなっちゃった...?
いくら汚れは落とせても、君の傷はなくならない。
大丈夫、表紙の落書きは除光液を使えば落とせるよ。
中は無事だった?...うん、それならきっと大丈夫。
それで、明日の学校が不安になって眠れなくなっちゃったんだね。
...そんなこと思わないよ!他の人にとってその程度でも、君にとってはとても大事なものでしょ?
君が大事にしていたのを知ってる僕にとっても、そのノートは大切だよ。
お願い、泣くのを我慢しないで。沢山泣いていいんだよ。
寧ろ、沢山泣いて僕のことをもっと困らせてほしい。
寝ちゃってもいいから、このまま電話繋いでいようか。
君が寝たら、僕が切っておくから。
もし明日、学校に行くのが怖くなったら...そのときはまた僕に連絡して。
早く行かなくちゃいけなくなるんだけど、それでよければ学校の近くまで車で乗せていく。
...実習期間がますます長く感じられるよ。
ただの恋人に戻れたら、普通に送り迎えができるのに。
大丈夫、もっと泣いていいんだよ。
君はずっと1人で戦ってきた。でももう、絶対に1人で戦わせたりなんかしないから。
学校にいる間は仮の先生として支えるし、他の時間は恋人としてできることをする。
だからもう、1人で苦しまないで。

...泣きつかれて寝ちゃったか。
嬉しそうに笑ってるし、きっと幸せな夢を見ているんだろうな...。
おやすみ。どうか明日、君が穏やかに過ごせますように。


あの様子だと、今日は学校に来られるかどうか微妙だな...あ、いた。
おはよう。保健室はこれから開けるから、ちょっとだけ待っててね。
先生モードになる前に、少しだけ話しておく。
今日も保健室まで来た君は本当に偉い。
よく頑張りました。
...さて、そろそろ行かないと。
勉強は今日も僕が教えるから、何か分からないところがあったらすぐ言ってね。
ん?どうしたの?
い、今好きって言うのは反則だよ...。
...僕も好きだけどね。
いけない、そろそろちゃんと先生モードにならないと。
それじゃあ、いってきます。
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『泣けない、泣かない。』シリーズです。
落書きを落としたことがあったな...という実体験を元にしました。
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