物置小屋

黒蝶

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1人向け・慰め系

この先はもう、寂しくない。(読む人によって印象が違うと思います)

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こんばんは。
僕が誰かって?...僕には名前がないんだ。
天使?違うよ、そんな綺麗なものなんかじゃない。
悪魔?人を惑わせたりしないよ。
...ただ、君のことを聞きにきたんだ。
初めて見たときから本当に綺麗で...君の方が天使みたいだ。
君には、僕が天使に見えるの?不思議な子だね。
...君が望むなら、その体調不良も全部持っていってあげる。僕にはその力があるからね。
ただ、その前に君と話がしたいんだ。
僕には、人間というものが分からない。
どうしてその選択をしたのか、とか...行動原理が分からないんだ。
君は、人間を憎まなかった。憎む権利だって、充分あったはずなのに。
蔑む奴もいた、ご飯をくれない奴もいた、見て見ぬふりする奴もいた。
...それでも憎まなかったのは、どうして?
人に優しくありたかったから、か...優しくしたからといって、君に優しさが返ってくるわけでもなかったのに?
優しさは返してほしくてする行動のことは言わない、ね...やっぱり君は不思議な子だ。
...やっぱり、独りは寂しかった?
君が病気になってから周りの見る目がもっと酷くなったのを、僕はよく知ってる。
友人だと思っていた相手には裏切られ、血縁者からは理解もされず...居場所がなかったんだよね?
どうして詳しいのかは秘密。君の話を最後まで聞いてから教えてあげる。
自分なんか全然頑張れてなかったって思ってる?
...周りに認められなくても、君は折れなかった。
僕は、それがとんでもなくすごいことだと思う。
人間がどう思うかなんて知らない。
だけど、僕はそれだけ必死で生きた人間を頭ごなしに否定したりなんかしない。
僕はちゃんと見てたよ。
嫌なことをされても、沢山傷ついても、周りの人たちを不安にさせないようにっていつも笑顔を作ってたのも...独りでずっと泣いてたのも。
辛かったよね。苦しかったよね。
...それも全部、僕が持っていってあげる。
だって僕は...死神だから。
話しているうちに思い出した?君は橋から飛び降りて、意識不明の重体。
これから僕が話すのは、君に与えられた選択肢についてだ。
ひとつは、生き返る。もうひとつは...僕と一緒にくる。
ただ、前者を選択した場合は今ここで話したことは綺麗さっぱり忘れる。
後者を選択した場合は生き返ることができない。
まあ、僕との時間なんて覚えてなくても生きていけるし...え、連れていってって本気で言ってる?
大部分の人間がやっぱり死にたくないって言うのに...後悔しない?
僕といた時間が、今まで過ごした時間のなかで一番楽しかったって...僕は、人のことはそんなに分からないんだよ?
本当に大丈夫...?
...分かった、君がそうしたいなら。
どうして泣いてるの?...嬉しい?何が?
独りじゃないから...僕にはよく分からないけど、君が笑った顔は久しぶりに見たような気がする。
それじゃあ、一緒に...一緒にいこう。
僕を選んでくれた以上、君に寂しい思いはさせないから。
...君の感情が、少しだけうつったみたい。
だけど、嫌じゃない。変な感じはするけどね。
...他の人間がどう思おうと、僕は君の選択を尊重する。
君が感じたこと、これから沢山教えてね。
優しい君のことを、誰にも傷つけさせたりしないから。...絶対に。
迷子にならないように、手でも繋ごうか。...これが、ぬくもりっていうものなんだね。
さあ、しっかり掴まって。
ふたり一緒なら、何があってもきっと大丈夫。
この選択を後悔する暇もないくらい、君がやりたいことにつきあうから。
...人間からお礼を言われるのも初めてだ。
こういうのを、愛しいっていうのかもしれない。
...なんでもない。それじゃあ今度こそ行こう。
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優しい何かが迎えにきてくれないだろうか...なんて考えてしまうことがあるのです。
私の理想の最期...なのかもしれません。
居場所を創ってくれるその存在が...独りにしないと言ってくれたその存在が、きっと彼女を幸せにしてくれるでしょう。
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