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冬真ルート
第63話
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それから数日が経ったある日、冬真が画面とにらめっこしていた。
「どうかしたんですか?」
「雪乃からメールがきたんだけど、にわかに信じがたい内容で困ってたんだ」
見せてくれた画面には、アジトの場所を送るという内容が書かれていた。
「この場所にラムネ屋さんたちがいるかどうか、分からないってことですか?」
「みんなで目星をつけてた場所と全然違うんだ。…雪乃の腕を疑ってるわけじゃないけど、嫌な予感がする」
冬真がそう思うなら、きっと他にも引っかかっていることがあるんだろう。
「他の皆さんには話したんですか?」
「ううん。もう少し精査してから言おうと思ってる」
可愛らしいベルの音がして、今度はスマートフォンを見はじめる。
「…行けたら行ってるよ」
牛久大輔という名前を見て、大学に行けないことを悔しく思っているんだとすぐに理解した。
「冬真は、勉強が好きなんですか?」
「そういうわけじゃないよ。…調べものをするのに便利だから入っただけ」
そう話す冬真は少し戸惑っているように見える。
最初はそれだけだったのかもしれないけれど、今は違うんじゃないだろうか。
大切に思っていない相手のことを、あんなに大切そうに呼んだりしない。
「あの…冬真」
「どうしたの?」
「その場所へ行ってみるんですか?」
「一応そのつもりだけど、君を置いていったりしないから心配しないで」
私が一緒に行ってもいいんだと思うと、なんだか嬉しくなってきた。
「これから危険なことに巻きこむかもしれないのに、君は随分楽しそうだね」
「ごめんなさい。頼ってもらえたのが嬉しくて…」
「まあ、その気持ちは分からなくもないけど…本当に危ないから気をつけて」
「は、はい」
やっぱり緊張してしまうけれど、役に立てることがあるなら頑張りたい。
使い方を教えてもらった爆弾を鞄に入れていると、近くにいたスノウが飛んできた。
「そんなに心配しなくても、彼女を危険に晒すつもりはない」
不安そうにしているスノウを撫でて、冬真は私に向きなおる。
「本当に覚悟できてる?」
「頑張ります」
「分かった。それなら僕言うことはもう何もない。君のことを否定するつもりはないし、一緒に来てもらう」
「あの、スノウはどうするんですか?」
「ここでこの場所を護ってもらわないといけないから、留守番だよ」
「そうなんですね…。スノウ、いってきます」
できるだけ冷静なふりをしながら声をかけて、そのまま立ちあがる。
冬真の方を見ると、なんだか不安そうな顔をしていた。
「きっと大丈夫です。根拠はありませんが…」
「…そう思っておくことにする」
彼が今どんなことを考えているのか分からないけれど、いい方向に進めるといいとは思っている。
今はこれ以上何も追及せずに、ただついていこうと決めた。
「どうかしたんですか?」
「雪乃からメールがきたんだけど、にわかに信じがたい内容で困ってたんだ」
見せてくれた画面には、アジトの場所を送るという内容が書かれていた。
「この場所にラムネ屋さんたちがいるかどうか、分からないってことですか?」
「みんなで目星をつけてた場所と全然違うんだ。…雪乃の腕を疑ってるわけじゃないけど、嫌な予感がする」
冬真がそう思うなら、きっと他にも引っかかっていることがあるんだろう。
「他の皆さんには話したんですか?」
「ううん。もう少し精査してから言おうと思ってる」
可愛らしいベルの音がして、今度はスマートフォンを見はじめる。
「…行けたら行ってるよ」
牛久大輔という名前を見て、大学に行けないことを悔しく思っているんだとすぐに理解した。
「冬真は、勉強が好きなんですか?」
「そういうわけじゃないよ。…調べものをするのに便利だから入っただけ」
そう話す冬真は少し戸惑っているように見える。
最初はそれだけだったのかもしれないけれど、今は違うんじゃないだろうか。
大切に思っていない相手のことを、あんなに大切そうに呼んだりしない。
「あの…冬真」
「どうしたの?」
「その場所へ行ってみるんですか?」
「一応そのつもりだけど、君を置いていったりしないから心配しないで」
私が一緒に行ってもいいんだと思うと、なんだか嬉しくなってきた。
「これから危険なことに巻きこむかもしれないのに、君は随分楽しそうだね」
「ごめんなさい。頼ってもらえたのが嬉しくて…」
「まあ、その気持ちは分からなくもないけど…本当に危ないから気をつけて」
「は、はい」
やっぱり緊張してしまうけれど、役に立てることがあるなら頑張りたい。
使い方を教えてもらった爆弾を鞄に入れていると、近くにいたスノウが飛んできた。
「そんなに心配しなくても、彼女を危険に晒すつもりはない」
不安そうにしているスノウを撫でて、冬真は私に向きなおる。
「本当に覚悟できてる?」
「頑張ります」
「分かった。それなら僕言うことはもう何もない。君のことを否定するつもりはないし、一緒に来てもらう」
「あの、スノウはどうするんですか?」
「ここでこの場所を護ってもらわないといけないから、留守番だよ」
「そうなんですね…。スノウ、いってきます」
できるだけ冷静なふりをしながら声をかけて、そのまま立ちあがる。
冬真の方を見ると、なんだか不安そうな顔をしていた。
「きっと大丈夫です。根拠はありませんが…」
「…そう思っておくことにする」
彼が今どんなことを考えているのか分からないけれど、いい方向に進めるといいとは思っている。
今はこれ以上何も追及せずに、ただついていこうと決めた。
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