377 / 385
冬真ルート
第59話
しおりを挟む
「どういう意味?」
「こんなに鉄分が足りてないのは栄養が偏ってるからだろ?それに、もっとタンパク質を摂らないと倒れる」
冬真はきっと、彼なりに冬香さんのことを心配している。
難しい話は分からないけれど、この前血液を検査していると話していたことが関係しているのだろう。
「そんなに偏ってるつもりなんてないんだけどな…」
「偏ってるって数値が出てる」
一歩も引くつもりはないと言うように、冬真は冬香さんに詰め寄った。
「…だから、しばらく夕食だけは世話してあげる」
「え!?冬真のご飯食べられるの?」
「ひとり分増えるくらいなら僕にだってできる」
「ありがとう。毎日楽しみにしてる」
ふたりの距離が少しずつ縮まっているように見えるのがすごく嬉しい。
「お姫様も料理するの?」
「え、あ、はい。一応できます。冬真には全然敵いませんが、多分人並みには」
「あんなに丁寧に作る人なんて滅多にいないと思う。そういうのの方が心がこもってる気がする」
「えっと…あ、ありがとうございます」
まさか褒められると思っていなかったので、なんだかどきどきしてしまう。
そんな私を見ていた冬香さんが優しく笑った。
「ふたりは本当に仲良しだよね。見ているこっちが元気をもらってるよ」
「今夜はこれ食べて。電子レンジがあるなら温められるでしょ?」
「ありがとう」
「それじゃあ、僕たちは行くところがあるから」
冬真の後をついていこうとすると、冬香さんに手首を掴まれた。
「あの…?」
「気をつけてあげて。脇腹あたりの傷が痛むみたいだから」
「分かりました」
冬香さんの言葉を聞いて、すぐ冬真に駆け寄る。
よく見ると、たしかに脇腹あたりを押さえていた。
「…アイス」
「え?」
「アイス、食べに行こう」
「いいんですか?だって傷が…」
「あの屋台に立ち寄るくらいなら問題ない。帰ってからゆっくり味わえばいいし…君が嫌じゃなければ」
「行ってみたいです。ずっと憧れていたので…」
あの場所に誰かがいるときだけちらっと見られたテレビに、こういった場所がうつっていたことがある。
一生縁がない場所だと思っていたのに、今こうして自分がいるのが不思議だ。
「これが定番なんだ。食べてみる?」
「お願いします」
できあがったものをできるだけ急いで持ち帰って、ひんやりしているうちに食べてみる。
「甘い…美味しいです」
「まさかそこまで喜んでもらえるとは思わなかった」
ふたりで食べているから美味しく感じるのかもしれない。
「…ちょっと待ってて」
「はい」
冬真が玄関の扉に近づくと、誰かが息を切らしながら入ってきた。
「どういう状況なの?…なんて、答えられる状況じゃなさそうだね。取り敢えずここに座ってて、雪乃」
「ありがとう」
雪乃の腕からは血が出ている。
アイスが入ったカップを置いて、急いで救急箱を用意した。
「こんなに鉄分が足りてないのは栄養が偏ってるからだろ?それに、もっとタンパク質を摂らないと倒れる」
冬真はきっと、彼なりに冬香さんのことを心配している。
難しい話は分からないけれど、この前血液を検査していると話していたことが関係しているのだろう。
「そんなに偏ってるつもりなんてないんだけどな…」
「偏ってるって数値が出てる」
一歩も引くつもりはないと言うように、冬真は冬香さんに詰め寄った。
「…だから、しばらく夕食だけは世話してあげる」
「え!?冬真のご飯食べられるの?」
「ひとり分増えるくらいなら僕にだってできる」
「ありがとう。毎日楽しみにしてる」
ふたりの距離が少しずつ縮まっているように見えるのがすごく嬉しい。
「お姫様も料理するの?」
「え、あ、はい。一応できます。冬真には全然敵いませんが、多分人並みには」
「あんなに丁寧に作る人なんて滅多にいないと思う。そういうのの方が心がこもってる気がする」
「えっと…あ、ありがとうございます」
まさか褒められると思っていなかったので、なんだかどきどきしてしまう。
そんな私を見ていた冬香さんが優しく笑った。
「ふたりは本当に仲良しだよね。見ているこっちが元気をもらってるよ」
「今夜はこれ食べて。電子レンジがあるなら温められるでしょ?」
「ありがとう」
「それじゃあ、僕たちは行くところがあるから」
冬真の後をついていこうとすると、冬香さんに手首を掴まれた。
「あの…?」
「気をつけてあげて。脇腹あたりの傷が痛むみたいだから」
「分かりました」
冬香さんの言葉を聞いて、すぐ冬真に駆け寄る。
よく見ると、たしかに脇腹あたりを押さえていた。
「…アイス」
「え?」
「アイス、食べに行こう」
「いいんですか?だって傷が…」
「あの屋台に立ち寄るくらいなら問題ない。帰ってからゆっくり味わえばいいし…君が嫌じゃなければ」
「行ってみたいです。ずっと憧れていたので…」
あの場所に誰かがいるときだけちらっと見られたテレビに、こういった場所がうつっていたことがある。
一生縁がない場所だと思っていたのに、今こうして自分がいるのが不思議だ。
「これが定番なんだ。食べてみる?」
「お願いします」
できあがったものをできるだけ急いで持ち帰って、ひんやりしているうちに食べてみる。
「甘い…美味しいです」
「まさかそこまで喜んでもらえるとは思わなかった」
ふたりで食べているから美味しく感じるのかもしれない。
「…ちょっと待ってて」
「はい」
冬真が玄関の扉に近づくと、誰かが息を切らしながら入ってきた。
「どういう状況なの?…なんて、答えられる状況じゃなさそうだね。取り敢えずここに座ってて、雪乃」
「ありがとう」
雪乃の腕からは血が出ている。
アイスが入ったカップを置いて、急いで救急箱を用意した。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
全部、支払っていただきますわ
あくの
恋愛
第三王子エルネストに婚約破棄を宣言された伯爵令嬢リタ。王家から衆人環視の中での婚約破棄宣言や一方的な断罪に対して相応の慰謝料が払われた。
一息ついたリタは第三王子と共に自分を断罪した男爵令嬢ロミーにも慰謝料を請求する…
※設定ゆるふわです。雰囲気です。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
10/1追記
※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。
また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
11/9追記
何一つ完結しておらず中途半端だとのご指摘を頂きましたので、連載表記に戻させていただきます。
紛らわしいことをしてしまい申し訳ありませんでした。
今後も自分のペースではありますが更新を続けていきますので、どうぞ宜しくお願い致します。
きんもくせい
至らない妃になれとのご相談でしたよね
cyaru
恋愛
ホートベル侯爵家のファリティは初夜、夫となったばかりの第2王子レアンドロから「相談」をされた。
結婚はしてしまったがレアンドロは異母妹のルシェルを愛しているので、3年後に離縁し再婚したいという。
ただ離縁するだけではだめでファリティに何もしない愚鈍な妃となり、誰からも「妃には相応しくない」と思って欲しいとのこと。
ルシェルとの関係を既に知っていたファリティは渡りに船とばかりにレアンドロの提示した条件を受けた。
何もかもこちらの言い分ばかり聞いてもらうのも悪いというので、ファリティは2つの条件を出した。
①3年後に何があっても離縁すること、②互いの言動や資産全てにおいて不干渉であること。
レアンドロはその条件を飲み、ただの口約束では揉める原因だと結婚の翌日、次に保管庫が開くのは2人が揃っていないと開けて貰えず、期日も3年後に設定された確実な保管法で正教会にその旨をしたためた書類を2人で保管した。
正教会で「では、ごきげんよう」と別れた2人。
ファリティはその日から宮に帰ってこない。
かたやレアンドロは「模様替え」の最中なのでちょっと居候させてと言うルシェル達を受け入れたけれど…。
タイトルの♡はファリティ視点、♠はレアンドロ視点、★は第三者視点です
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★1話あたりの文字数、少な目…だと思います。
★10月19日投稿開始、完結は10月22日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
神の審判でやり直しさせられています
gacchi
恋愛
エスコートもなく、そばにいてくれないばかりか他の女性と一緒にいる婚約者。一人で帰ろうとしたところで、乱暴目的の令息たちに追い詰められ、エミリアは神の審判から奈落の底に落ちていった。気が付いたら、12歳の婚約の挨拶の日に戻されていた。婚約者を一切かえりみなかった氷の騎士のレイニードの様子が何かおかしい?私のやり直し人生はどうなっちゃうの?番外編は不定期更新
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜
白雲八鈴
恋愛
『結婚をしよう』
彼は突然そんなことを言い出した。何を言っているのだろう?
彼は身分がある人。私は親に売られてきたので身分なんてない。 愛人っていうこと?
いや、その前に大きな問題がある。
彼は14歳。まだ、成人の年齢に達してはいない。 そして、私は4歳。年齢差以前に私、幼女だから!!
今、思えば私の運命はこのときに決められてしまったのかもしれない。
聖痕が発現すれば聖騎士となり、国のために戦わなくてはならない。私には絶対に人にはバレてはいけない聖痕をもっている。絶対にだ。
しかし運命は必然的に彼との再会を引き起こす。更に闇を抱えた彼。異形との戦い。聖女という人物の出現。世界は貪欲に何かを求めていた。
『うっ。……10年後に再会した彼の愛が重すぎて逃げられない』
*表現に不快感を持たれました読者様はそのまま閉じることをお勧めします。タグの乙女ゲームに関してですが、世界観という意味です。
一話の中に別視点が入りますが、一応本編内容になります。
*誤字脱字は見直していますが、いつもどおりです。すみません。
*他のサイトでも投稿しております。
婚約者に好きな人がいると言われました
みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染み、バラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められてしまう。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる