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秋久ルート
第43話
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止めた方がいい気がするけれど、言葉が出てこない。
夏彦さんも秋久さんも目が怖くて、冗談で言い合っているわけじゃないことくらい私にも分かる。
「アッキーを倒せたら、本当に行っていいの?」
「ああ。好きにすればいい」
それから決着がつくまでほんの一瞬だった。
夏彦さんの体はいつの間にか床についていて、秋久さんは着ている服を整えている。
「なんで…」
「おまえの攻撃はあいつとよく似てる。だから、癖の違いはあれどなんとなく弱点が分かったんだ」
「本当に敵わないな…あいつらを同じ目に遭わせてやりたかったのに」
「殺しても夏樹が戻ってくるわけじゃない。…少し頭を冷やせ」
その瞬間、ふりかえった夏彦さんと目が合う。
怒られてしまうと思っていたのに、彼はただ私に笑いかけた。
「月見ちゃん。騒がしくしてごめんね」
「い、いえ…」
「今日はもう帰るね」
その笑顔はいつもよりぎこちないもので、見ているだけで心配になる。
それでも、私にできることは何もない。
「悪いな月見」
「私は平気です。だけど、夏彦さんも秋久さんも痛そうです」
「…そうだな。流石に痛い」
やっぱり心が痛いんだと思うと、私の心もずきずき痛むような気がする。
「夏彦さんは、誰かを…」
そこまでしか言葉が出てこない。
進んで誰かを殺したいと思っているようには見えないけれど、それしかないと思っているように見えた。
「あいつには復讐したい相手がいる。大事なやつを殺した犯人を突き止めて、本人が思っている以上に暴走しかけだ。
俺にはそれを止める責任がある。捜査を中断するわけにはいかないからな。それに、あいつの手を汚したくない」
「秋久さんはすごいですね。私だったらきっとそこまで深く考えられないと思います」
「俺からしてみれば月見だって充分すごいと思うけどな」
いつもどおり頭を撫でられて安心する。
秋久さんが思いつめていないか心配だったから、今の様子を見て少しほっとした。
「あの…私にも、お手伝いできることはありませんか?」
「それならまた夜食を作ってほしい。そろそろ花菜が報告に来るはずだしな」
「お仕事の方は駄目ということですか?」
「気持ちだけ受け取っておく」
「…分かりました」
やっぱり私じゃ誰かの役にはたてないみたいだ。
せいいっぱい笑ったつもりだけれど、彼には心配されてしまった。
「これは俺のエゴだが、おまえを巻きこみたくない。こっち側に足をつっこむってことは、少なからず危険を伴うことになる。
俺はただ、周りの奴らに笑っていてほしいんだ。勿論月見も含めてな」
夏彦さんも秋久さんも目が怖くて、冗談で言い合っているわけじゃないことくらい私にも分かる。
「アッキーを倒せたら、本当に行っていいの?」
「ああ。好きにすればいい」
それから決着がつくまでほんの一瞬だった。
夏彦さんの体はいつの間にか床についていて、秋久さんは着ている服を整えている。
「なんで…」
「おまえの攻撃はあいつとよく似てる。だから、癖の違いはあれどなんとなく弱点が分かったんだ」
「本当に敵わないな…あいつらを同じ目に遭わせてやりたかったのに」
「殺しても夏樹が戻ってくるわけじゃない。…少し頭を冷やせ」
その瞬間、ふりかえった夏彦さんと目が合う。
怒られてしまうと思っていたのに、彼はただ私に笑いかけた。
「月見ちゃん。騒がしくしてごめんね」
「い、いえ…」
「今日はもう帰るね」
その笑顔はいつもよりぎこちないもので、見ているだけで心配になる。
それでも、私にできることは何もない。
「悪いな月見」
「私は平気です。だけど、夏彦さんも秋久さんも痛そうです」
「…そうだな。流石に痛い」
やっぱり心が痛いんだと思うと、私の心もずきずき痛むような気がする。
「夏彦さんは、誰かを…」
そこまでしか言葉が出てこない。
進んで誰かを殺したいと思っているようには見えないけれど、それしかないと思っているように見えた。
「あいつには復讐したい相手がいる。大事なやつを殺した犯人を突き止めて、本人が思っている以上に暴走しかけだ。
俺にはそれを止める責任がある。捜査を中断するわけにはいかないからな。それに、あいつの手を汚したくない」
「秋久さんはすごいですね。私だったらきっとそこまで深く考えられないと思います」
「俺からしてみれば月見だって充分すごいと思うけどな」
いつもどおり頭を撫でられて安心する。
秋久さんが思いつめていないか心配だったから、今の様子を見て少しほっとした。
「あの…私にも、お手伝いできることはありませんか?」
「それならまた夜食を作ってほしい。そろそろ花菜が報告に来るはずだしな」
「お仕事の方は駄目ということですか?」
「気持ちだけ受け取っておく」
「…分かりました」
やっぱり私じゃ誰かの役にはたてないみたいだ。
せいいっぱい笑ったつもりだけれど、彼には心配されてしまった。
「これは俺のエゴだが、おまえを巻きこみたくない。こっち側に足をつっこむってことは、少なからず危険を伴うことになる。
俺はただ、周りの奴らに笑っていてほしいんだ。勿論月見も含めてな」
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