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冬真ルート
第22話
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なんとか冬真さんに当たらないようにできたけれど、勢いが少し強かったかもしれない。
顔をあげると相手はやっぱり知らない人で、蔦でできた鎌を見たその人はこちらを向いてにやりと笑う。
「なんだそれ、そんなもので俺たちを、」
「こ、来ないでください」
相手を傷つけたいわけじゃない。
ただ、冬真さんを傷つけてほしくないだけ。
秋久さんの声も聞こえないし、もし困っているなら早くなんとかしたい。
指先が痛んだかと思うと、また蕀さんたちが少しずつ出てくる。
相手に絡みついていく蕀さんたちが気になったけれど、決して視線を外さないようにした。
「ば、化け物…」
そう言った相手は震えていて、その人に無言で鎌を向ける。
…向ける、はずだったけれど、それより早く誰かが相手に攻撃した。
「…取り敢えず傷口洗った方がいい」
「あ、の、」
「それから、それ仕舞って」
ぼろぼろと解けていく蔦を見つめながら、心が砕けそうになるのを感じる。
もうここにはいられないかもしれない。
怖いと思われた?それとも、気味が悪いと思われただろうか。
「ふたりとも、大丈夫…じゃなさそうだな。救急箱を持ってくる。それから作戦会議をしよう」
「分かった」
息が苦しい。頭がふらふらする。
私の世界が終わってしまう気がして、ただ血が滴る手のひらを見つめることしかできなかった。
「…できた」
「あ、ありがとうございます」
それから長い沈黙が続いて、また息苦しくなる。
やっぱり、もうここにはいられない。
「ごめんなさい。部屋に戻ります」
冬真さんは何も言わずに私の方を見ている。
持っていたノートの切れ端にメモを残して、こっそり別の出入り口から外に出た。
まとめた荷物は助けてもらったときより少し増えていて、これが夢じゃなかったんだと胸が締めつけられる。
行く宛なんてないけれど、それでも歩き続けるしかない。
「…お嬢さん、元気がありませんね」
はじめは自分が話しかけられたと思っていなくて、そのまま真っ直ぐ通り過ぎようとした。
「ごめん、少しキザだったかな?」
「私、ですか?」
「言ったでしょ、僕の普段の仕事は手品師だって」
その声は聞き覚えがあるもので、視線を上に向ける。
立っていたのは、兄妹の忘れ物を届けた夜に助けてくれた人だった。
「こ、こんばんは…」
「本当に元気がないね。蕀姫、もしかして何かあった?」
「…いえ、何も」
「話したい相手がいるなら、ちゃんと話した方がいい。…すれ違ってからでは、何もかも手遅れになることもあるから」
手品師さんの言葉は真剣で、ついその場で聞き入ってしまう。
「…悲しいんですか?」
「どうしてそう思ったの?」
「後悔、しているように聞こえたので」
「君の観察力は素晴らしいね。そうだね、昔のことを思い出して少し辛くなったかもしれない」
手品師さんはそう話した後、にっこり笑ってポケットからトランプを取り出した。
それから彼はまた言葉を続ける。
「だけど、君は僕とは違う。まだ後悔しない道を選べるんだ。…だから、今から見せる手品の仕組みが分からなかったらトラブルになった相手と話をして。
もし仕組みが分かったら、僕は君を攫うことにするよ。衣食住は提供できるしね」
顔をあげると相手はやっぱり知らない人で、蔦でできた鎌を見たその人はこちらを向いてにやりと笑う。
「なんだそれ、そんなもので俺たちを、」
「こ、来ないでください」
相手を傷つけたいわけじゃない。
ただ、冬真さんを傷つけてほしくないだけ。
秋久さんの声も聞こえないし、もし困っているなら早くなんとかしたい。
指先が痛んだかと思うと、また蕀さんたちが少しずつ出てくる。
相手に絡みついていく蕀さんたちが気になったけれど、決して視線を外さないようにした。
「ば、化け物…」
そう言った相手は震えていて、その人に無言で鎌を向ける。
…向ける、はずだったけれど、それより早く誰かが相手に攻撃した。
「…取り敢えず傷口洗った方がいい」
「あ、の、」
「それから、それ仕舞って」
ぼろぼろと解けていく蔦を見つめながら、心が砕けそうになるのを感じる。
もうここにはいられないかもしれない。
怖いと思われた?それとも、気味が悪いと思われただろうか。
「ふたりとも、大丈夫…じゃなさそうだな。救急箱を持ってくる。それから作戦会議をしよう」
「分かった」
息が苦しい。頭がふらふらする。
私の世界が終わってしまう気がして、ただ血が滴る手のひらを見つめることしかできなかった。
「…できた」
「あ、ありがとうございます」
それから長い沈黙が続いて、また息苦しくなる。
やっぱり、もうここにはいられない。
「ごめんなさい。部屋に戻ります」
冬真さんは何も言わずに私の方を見ている。
持っていたノートの切れ端にメモを残して、こっそり別の出入り口から外に出た。
まとめた荷物は助けてもらったときより少し増えていて、これが夢じゃなかったんだと胸が締めつけられる。
行く宛なんてないけれど、それでも歩き続けるしかない。
「…お嬢さん、元気がありませんね」
はじめは自分が話しかけられたと思っていなくて、そのまま真っ直ぐ通り過ぎようとした。
「ごめん、少しキザだったかな?」
「私、ですか?」
「言ったでしょ、僕の普段の仕事は手品師だって」
その声は聞き覚えがあるもので、視線を上に向ける。
立っていたのは、兄妹の忘れ物を届けた夜に助けてくれた人だった。
「こ、こんばんは…」
「本当に元気がないね。蕀姫、もしかして何かあった?」
「…いえ、何も」
「話したい相手がいるなら、ちゃんと話した方がいい。…すれ違ってからでは、何もかも手遅れになることもあるから」
手品師さんの言葉は真剣で、ついその場で聞き入ってしまう。
「…悲しいんですか?」
「どうしてそう思ったの?」
「後悔、しているように聞こえたので」
「君の観察力は素晴らしいね。そうだね、昔のことを思い出して少し辛くなったかもしれない」
手品師さんはそう話した後、にっこり笑ってポケットからトランプを取り出した。
それから彼はまた言葉を続ける。
「だけど、君は僕とは違う。まだ後悔しない道を選べるんだ。…だから、今から見せる手品の仕組みが分からなかったらトラブルになった相手と話をして。
もし仕組みが分かったら、僕は君を攫うことにするよ。衣食住は提供できるしね」
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