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秋久ルート
第16話
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「すみません、私は部屋にいるので…」
いつの間に起きていたのか、足元に甘栗がすり寄ってきている。
ゆっくり抱きかかえて一礼して、その場を離れた。
秋久さんが何か言おうとしていたけれど、多分花菜と話をするから口を開いたんだろう。
「ここで一緒に休んでいましょう」
甘栗の柔らかい毛を撫でると、手にもふもふした感触が広がる。
気持ちよさそうに目を閉じているのを見ながら、たまたま近くにあった本を手にとった。
可愛らしい絵が描かれている表紙とは対照的に、中身は本格的な推理小説なのだ。
秋久さんが持ってきてくれたもので、読んでいると時間を忘れる。
「…これでいいんでしょうか」
「何読んでるんだ?」
「あ、秋久さん…。ごめんなさい、全然気づいてなくて」
「そりゃまあ、寝てるところを起こしたら悪いと思ってノックもせずに入ったからな。気づかなかったのは当然だと思う」
いつもどうやって部屋に入っているんだろうと思いつつ、台所を片づけていないことに気づいた。
「ごめんなさい、すぐに片づけを…」
「それはいい。俺がやっておくし、甘栗がぐっすり寝てるしな。ただ、さっきは気を悪くさせて悪かった」
どうして謝られているのか分からなくて首を傾げる。
私はただ、邪魔になりたくなくて部屋に入っただけで、秋久さんは何も悪いことなんてしていない。
「気を悪くなんて、してないです。ただ、お仕事の話なら私が聞いたらいけない話があるんだろうなって思っただけで…」
「そうか。それならいいんだが、何か気になることがあればすぐ言ってくれ」
「ありがとうございます」
秋久さんの表情がなんだかほっとしているように見えて、それもまた不思議に思った。
それからしばらく起きていたけれど、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
目を開けたときにはベッドで横になっていて、近くで甘栗が丸くなって寝息をたてていた。
「おはようございます」
挨拶をしてみたけれど、珍しくそこに秋久さんの姿はない。
こっそり朝食の準備を進めていると、ばたばたと足音が近づいてきた。
「悪い、寝坊した」
「私もさっき起きたばかりなんです。一応簡単なものですが、できました」
「昨日のスープといい、お嬢ちゃんには助けてもらってばかりだな」
「い、いつも頼らせてもらってばかりなので…」
「俺は頼ってもらえるとありがたいけどな」
そんな話を聞きながら、お皿に少しずつ盛りつけていく。
「できました」
「ありがとう。いただきます」
食べているところを無言で見ていると、秋久さんは少し楽しそうに笑った。
「やっぱりお嬢ちゃん、料理上手だな」
「ありがとうございます」
毎日は無理でも、秋久さんより早く起きられた日くらいは朝食作りをしてもいいだろうか。
いつの間に起きていたのか、足元に甘栗がすり寄ってきている。
ゆっくり抱きかかえて一礼して、その場を離れた。
秋久さんが何か言おうとしていたけれど、多分花菜と話をするから口を開いたんだろう。
「ここで一緒に休んでいましょう」
甘栗の柔らかい毛を撫でると、手にもふもふした感触が広がる。
気持ちよさそうに目を閉じているのを見ながら、たまたま近くにあった本を手にとった。
可愛らしい絵が描かれている表紙とは対照的に、中身は本格的な推理小説なのだ。
秋久さんが持ってきてくれたもので、読んでいると時間を忘れる。
「…これでいいんでしょうか」
「何読んでるんだ?」
「あ、秋久さん…。ごめんなさい、全然気づいてなくて」
「そりゃまあ、寝てるところを起こしたら悪いと思ってノックもせずに入ったからな。気づかなかったのは当然だと思う」
いつもどうやって部屋に入っているんだろうと思いつつ、台所を片づけていないことに気づいた。
「ごめんなさい、すぐに片づけを…」
「それはいい。俺がやっておくし、甘栗がぐっすり寝てるしな。ただ、さっきは気を悪くさせて悪かった」
どうして謝られているのか分からなくて首を傾げる。
私はただ、邪魔になりたくなくて部屋に入っただけで、秋久さんは何も悪いことなんてしていない。
「気を悪くなんて、してないです。ただ、お仕事の話なら私が聞いたらいけない話があるんだろうなって思っただけで…」
「そうか。それならいいんだが、何か気になることがあればすぐ言ってくれ」
「ありがとうございます」
秋久さんの表情がなんだかほっとしているように見えて、それもまた不思議に思った。
それからしばらく起きていたけれど、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
目を開けたときにはベッドで横になっていて、近くで甘栗が丸くなって寝息をたてていた。
「おはようございます」
挨拶をしてみたけれど、珍しくそこに秋久さんの姿はない。
こっそり朝食の準備を進めていると、ばたばたと足音が近づいてきた。
「悪い、寝坊した」
「私もさっき起きたばかりなんです。一応簡単なものですが、できました」
「昨日のスープといい、お嬢ちゃんには助けてもらってばかりだな」
「い、いつも頼らせてもらってばかりなので…」
「俺は頼ってもらえるとありがたいけどな」
そんな話を聞きながら、お皿に少しずつ盛りつけていく。
「できました」
「ありがとう。いただきます」
食べているところを無言で見ていると、秋久さんは少し楽しそうに笑った。
「やっぱりお嬢ちゃん、料理上手だな」
「ありがとうございます」
毎日は無理でも、秋久さんより早く起きられた日くらいは朝食作りをしてもいいだろうか。
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