232 / 385
夏彦ルート
第100話
しおりを挟む
そこからしばらく進んだところに小さな石碑のようなものが建てられていて、それが何なのか直感的に分かってしまった。
「あのね、兄さん。この子は月見ちゃんっていうんだ彼女のおかげで全部終わったんだよ」
いつの間に用意したのか花束を置いて、その場に跪いている。
作法が分からない私は、同じようにその場に跪く。
目を閉じて、取り敢えず挨拶だけはできた…と思う。
「ごめん。できればもっと早く行っておく予定だったんだけど無理だったんだ」
「私も挨拶してみたかったので、今日ここに来られてよかったんです」
「…それから、ちゃんと月見ちゃんを護っていくんだって誓っておきたかったんだ。
…この場所は色々なことが始まった場所だから」
夏彦は立ちあがると、そこから少し離れた場所まで私を運んでくれた。
「じ、自分で歩けますから…」
「ううん、俺がこうしたいんだ。それに、今夜は月見ちゃんにも聞いてほしい話があるしね」
一体どんな話をするんだろうと首を傾げていると、夏彦は顔を真っ赤にして笑った。
「最初はただ力になりたいと思ってた。困っている人を放っておくことなんてできないから…そういう理由で月見ちゃんに家においでって誘ったんだ。
だけど、いつの間にかそれだけじゃなくなってた。俺の為に身を呈してくれたり、よく笑ってくれるようになって…一緒にいるのが楽しくなったんだ。
だから、これからはただの同居人じゃなくて未来を一緒に歩ける関係になりたい。…月見ちゃん、俺の恋人になって」
夏彦からそんなふうに言ってくれるとは思っていなかった。
私は人よりできることが少なくて、まだまだ一般常識も知らないことが多い。
そんな私でも好きでいてくれる…側にいてもいいのだろうか。
そんな不安が頭をよぎったけれど、覚悟を決めて顔をあげる。
「私には、まだまだ知らないことも多くて…多分、困らせることも多いと思います。
それでも私は、夏彦と一緒に過ごしていきたいんです。隣にいさせてください」
「…うん、ありがとう」
鞄からできあがったハンカチを取り出して夏彦に渡すと、向日葵が咲いたような笑顔を向けてくれた。
「一生大事にするね。ハンカチも、月見ちゃんの気持ちも」
そっと手を取られて、優しく口づけられた。
「…!」
「…いつか別の場所にするけど、今はここにしておく」
毎日こんなにどきどきしていたら、好きという感情の花はどんなふうに育ってしまうのだろう。
きっと今目の前に見えている花より綺麗に咲き誇る、それだけは分かる。
この日見た景色は今まで生きてきたなかで1番の想い出になるだろう。
花たちが祝うようにそよぐのを見つめながら、しばらくふたりでただ笑いあった。
「あのね、兄さん。この子は月見ちゃんっていうんだ彼女のおかげで全部終わったんだよ」
いつの間に用意したのか花束を置いて、その場に跪いている。
作法が分からない私は、同じようにその場に跪く。
目を閉じて、取り敢えず挨拶だけはできた…と思う。
「ごめん。できればもっと早く行っておく予定だったんだけど無理だったんだ」
「私も挨拶してみたかったので、今日ここに来られてよかったんです」
「…それから、ちゃんと月見ちゃんを護っていくんだって誓っておきたかったんだ。
…この場所は色々なことが始まった場所だから」
夏彦は立ちあがると、そこから少し離れた場所まで私を運んでくれた。
「じ、自分で歩けますから…」
「ううん、俺がこうしたいんだ。それに、今夜は月見ちゃんにも聞いてほしい話があるしね」
一体どんな話をするんだろうと首を傾げていると、夏彦は顔を真っ赤にして笑った。
「最初はただ力になりたいと思ってた。困っている人を放っておくことなんてできないから…そういう理由で月見ちゃんに家においでって誘ったんだ。
だけど、いつの間にかそれだけじゃなくなってた。俺の為に身を呈してくれたり、よく笑ってくれるようになって…一緒にいるのが楽しくなったんだ。
だから、これからはただの同居人じゃなくて未来を一緒に歩ける関係になりたい。…月見ちゃん、俺の恋人になって」
夏彦からそんなふうに言ってくれるとは思っていなかった。
私は人よりできることが少なくて、まだまだ一般常識も知らないことが多い。
そんな私でも好きでいてくれる…側にいてもいいのだろうか。
そんな不安が頭をよぎったけれど、覚悟を決めて顔をあげる。
「私には、まだまだ知らないことも多くて…多分、困らせることも多いと思います。
それでも私は、夏彦と一緒に過ごしていきたいんです。隣にいさせてください」
「…うん、ありがとう」
鞄からできあがったハンカチを取り出して夏彦に渡すと、向日葵が咲いたような笑顔を向けてくれた。
「一生大事にするね。ハンカチも、月見ちゃんの気持ちも」
そっと手を取られて、優しく口づけられた。
「…!」
「…いつか別の場所にするけど、今はここにしておく」
毎日こんなにどきどきしていたら、好きという感情の花はどんなふうに育ってしまうのだろう。
きっと今目の前に見えている花より綺麗に咲き誇る、それだけは分かる。
この日見た景色は今まで生きてきたなかで1番の想い出になるだろう。
花たちが祝うようにそよぐのを見つめながら、しばらくふたりでただ笑いあった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
半日だけの…。貴方が私を忘れても
アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。
今の貴方が私を愛していなくても、
騎士ではなくても、
足が動かなくて車椅子生活になっても、
騎士だった貴方の姿を、
優しい貴方を、
私を愛してくれた事を、
例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるゆる設定です。
❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。
❈ 車椅子生活です。
きみの愛なら疑わない
秋葉なな
恋愛
花嫁が消えたバージンロードで虚ろな顔したあなたに私はどう償えばいいのでしょう
花嫁の共犯者 × 結婚式で花嫁に逃げられた男
「僕を愛さない女に興味はないよ」
「私はあなたの前から消えたりしない」
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる